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中小企業のM&A(1) M&Aとは
支援専門員の矢橋 敬(やばし たかし)です。
これから月1回・全6回シリーズで、私が過去に金融機関(銀行・証券)、監査法人系コンサルティング会社、外資系投資ファンドなどに勤務して経験してきたM&Aや事業再生に関する業務経験に基づいて、「中小企業のM&A」について思うところを書いていきます。
このシリーズを通じて、M&Aが、中小企業においても事業の成長や経営資源の確保のための選択肢になる場合があることを知っていただければ幸いです。
第1回目の今回は、
M&Aとは何か、中小企業のM&Aの状況、中小企業政策におけるM&Aについて書きました。
M&Aとは
Merger and Acquisitionの略であり、直訳すると合併と買収となりますが、
広く、経営権の譲渡/譲受を目的とした企業の株式や事業の売買、ならびに業務提携を目的とした出資などを意味します。
M&Aは、
売手側にとっては、経営からの引退や投資回収のための手段である一方、買手側にとっては、事業を行うために一体的に組織/管理されている経営資源(顧客や取引先などの基盤、事業ノウハウ、人材、工場・店舗・機械装置などの設備、特許や商標やブランドなどの知的資産など)をそのまままるごと購入するための手段だといえます。
では、中小企業のM&Aはどのような状況にあるのでしょうか。
中小企業のM&A
の件数は近年、増加する一方です。
<出所:中小企業白書2020 Ⅰ-141>
この背景としてはまず、経営者の高齢化が原因としてあげられます。
近年の全国の社長の年齢分布の推移を見ると、70代以上の割合が年々一貫して増加しています。高齢になれば当然、経営から引退する時期が来ます。
<出所:中小企業白書2020 Ⅰ-132>
次に、同族承継が目立って減少していることが原因としてあげられます。
2017年から2019年の2年間で同族承継の割合は5%以上減少して35%程となっているという統計があります。意外に思われるかもしれませんが、もうすでにM&Aを含む同族外への承継の方が多数派になっているのです。
<出所:中小企業白書2020 Ⅰ-140>
さらに実は、休廃業・解散する企業が年間4万社程ある中で、直前期の業績データが判明している企業の60%程の当期純利益が黒字であったという統計があります。
<出所:中小企業白書2020 Ⅰ-134>
<出所:中小企業白書2020 Ⅰ-138>
黒字の企業を休廃業・解散するにまかせるのはもったいない。その前に譲ってほしい!
と成長志向の企業経営者が思うのは当然であり、ここにも中小企業のM&Aが増加する要因があると考えられます。
では、我が国の中小企業政策は中小企業のM&Aにどのような対応をしているのでしょうか。
中小企業政策におけるM&A
は親族内事業承継と同様に促進すべきこととされています。
経済産業省は、令和3年度当初予算の地域・中小企業・小規模事業者関係の概算要求等にて、
真っ先に「①事業承継・経営資源集約化・再生等の新陳代謝の促進」を掲げて、親族内か第三者かを問わず、事業承継を「総合的に支援する体制を整備し、プッシュ型の支援に転換。」するとしています。
<出所:経済産業省 ウェブサイト>
このような政策は今に始まったことではなく、以前から継続的に、優遇税制、補助金、金融政策などを通じて事業承継を促進する環境が整備されてきていますが、年を追うごとに第三者承継(つまりM&A)を促進する施策が充実してきています。
特に昨年から今年にかけて経済産業省/中小企業庁は、
2019年12月に「第三者承継支援総合パッケージ」を公表し、
後継者不在の中小企業の第三者承継を官民一体となって後押ししていくことを掲げる中で、
事業引継ぎ支援センターの持つ「事業引継ぎ支援データベース」の民間事業者への開放を決め、
<出所:経済産業省 2019年12月20日 ニュースリリース>
2020年3月に「中小M&Aガイドライン」を策定して、
中小企業のM&Aのあり方、特にM&A仲介業者の行動指針を具体的に示して、売買双方の事業者にとってのM&Aの透明感を高め、
<出所:経済産業省 2020年3月31日 ニュースリリース>
2020年10月に先述した「事業引継ぎ支援データベース」を開放する民間事業者3社を決め、
以前より飛躍的に買手が売手を探しやすくなることにより、買手と売手が知り合う(これを“マッチング”といいます)機会が増える仕組みを整えつつあります。
<出所:経済産業省 2020年10月1日 ニュースリリース>
このように、中小企業のM&Aを取りまく環境は、社会面、行政面、技術面で良くなってきているといえます。
次回は「M&A戦略 基本編」です。
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