イチオシ事例
HOME › イチオシ事例
数年後も“この畳で良かった!”と思っていただける畳替えを 。(㈱三宅畳店)
今回のイチオシ事例は
昭和初期に現代表取締役の曾祖父である 三宅金重 が 畳師 として 創業 し 、
90余年 に亘って 畳一筋で地域住民の生活を支えてきた 『 株式会社 三宅畳店 』さんです。
皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。
今回は、 創業から 90 年以上 に亘って 畳店として 、 地域に根差した活動を続け、お客様のライフスタイルや将来の展望 に合わせた”最適の畳替え”を提案 するために、国産にこだわり、畳の良さを伝え続けている本物の畳職人の事例です。
株式会社三宅畳店の歴史
当社は、昭和初期の1928年に曾祖父の三宅金重が現在と同じ恵那市にて畳師として創業したところから始まりました。創業当時は、店舗を持たず直接お客様のご自宅を訪問し、軒先で作業をさせて頂いて畳を張り替えるスタイルが一般的であり、当社も店舗を持つことなく営業をしてきました。
しかし、時代の変遷とともに、店舗を持つ「畳店」が一般化していったため、これに合わせて当社も店舗を構えることとなります。
ただし、店舗を構えることとなっても、お客様のご自宅を訪問して作業することに変わりはないため、訪問時にお客様から「ご自宅の悩み事」の相談を受ける機会が多い状況に変化はありません。
そこで、こういった声に応える形で、障子や、襖、網戸、カーテン、クロスの張替えから部屋全体のリノベーションまで幅広く対応するサービスを展開していきました。
施工事例
現代表取締役の三宅悠介氏は、4代目。
幼少期から先代にあたる父親が働く姿を見て育ち、物心がついた頃には畳屋になりたいと考えるようになりました。
家の構造を理解する目的で工業高校の建設科を卒業したのち、畳職人としての修業を積むため、京都で6年間を過ごした後、2013年から父と共に仕事をスタート。
国家資格である畳製作技能士1級に加え、畳の品質を証明する品質管理責任者の資格を持っている東濃エリア最年少の畳職人として、岐阜県の業界では一躍有名になりました。
先代との2名体制の仕事では、内装関係を先代が、畳関係を悠介氏が担当する分業体制で仕事をこなしつつ、セールス全般についても悠介氏が担う形で事業を運営していました。しかし、この体制は長くは続かず、半年を過ぎた頃に、先代の身体に病気が見つかり、闘病生活に入ったことで一線を退いたのです。
その後、2018年に完全に事業を引き継ぎ、そこからは一人体制で全ての業務を担ってきました。
努力の甲斐もあって、2021年には法人成りも果たしました。
そして、今なお90余年という歴史の中で培われてきた信頼と、確かな技術を武器に「本物の畳の魅力」と「い草の良さ」を伝えていくために挑戦を継続しています。
企業紹介動画
リノベーションブームに即した畳の普及促進を目指して
2013年に悠介氏が事業に参画して以降、大きく4つのことに取り組みました。
1つ目は、洋風建築が一般化して、和室の無い家が増えてきた状況において、あえて畳のある部屋を望むお客様は価格ではなく品質にこだわる傾向があるというニーズをいち早くとらえ、当時扱っていた輸入材を使用した畳商品を一掃して、国産のい草を使用した畳オンリーに切り替えたこと。
2つ目は、売れ残りのリスクを避けるために売れ筋商品のみを店頭に並べていた状態を見直し、比較的安価なものから高額なものまで幅広いラインナップの商品を店頭在庫として抱え、お客様に実際に見て、触れてから決めてもらうようにしたこと。
3つ目は、畳の張替えと内装工事だけであった当時のサービスを見直し、訪問の度に寄せられるお家の困りごとに関する実際の声に応える形で、襖や障子、網戸、カーテン、クロス等の張替えをサービスとして提供するようになったこと。
4つ目は、周辺地域にチラシを配布するだけの営業スタイルを見直し、既存顧客との接点を増やすためのDM発送や自社ホームページの改修、SNSの運用、顔を出すことにこだわり主要道路沿いに設置した看板、業界では珍しいパンフレットの作成など、新規顧客獲得のために様々な施策に取り組んだこと。
こういった取り組みに加え、リノベーションブームの後押しによって、特に個人のお客様からの受注量が増加し、一人体制では対応しきれないほどの依頼を受ける状態となりました。
本物の畳を普及するためにも全てのお客様の依頼に応えたい。けれど、一生に何度もあるわけではない畳の張替えに手を抜くわけにはいけない。
こんな葛藤を抱える状況となり、生産工程の見直しによる生産性向上が喫緊の課題となりました。
畳の製造工程
高品質畳の生産性をあげる
当社はこれまで「確かな技術と丁寧な仕事」をモットーに、単なる畳屋ではなく、お家の困りごとを何でも相談できるお店として、お客様に寄り添いながら成長してきました。前述のとおり、当社が今後も成長・発展を続けていくためには、一切手を抜くことなく最高品質の畳をより多くのお客様に届けるための生産体制の構築が必要でした。これを実現するための課題が以下の3点です。
【課題】
◆畳表幅の採寸・裁断と畳縁縫着技術の向上
◆手作業による時間のロスの解消
◆ニーズが増えている薄型畳の製品開発
畳表を畳床に張り付けた後、畳表幅の採寸は手作業にて行っており、畳表幅の採寸に関しては1,820㎜の長辺に対して若干のズレが生じてしまうことがあります。ここでズレが生じると畳縁の縫着時に、美しく平行な仕上がりにならないため、手戻りが発生することとなります
また、畳表幅の裁断、畳表貼付け後の移動、平刺し縫いなど、畳の生産工程において時間がかかる工程が多く、各工程では機械につきっきりとなるため、同時並行で別の作業を行うことが難しく、時間的な無駄が発生しています
さらに、より多くのお客様に当社の畳を届けるためには、フローリングとの相性が良く、リノベーションブームの流れを踏襲しやすい15mm未満の薄畳商品を新たにラインナップに加えていくことが求められます。
これらの課題を解消し、より多くのお客様に当社の畳を広げていくため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。
🔷コンピューター式全自動平刺・返縫機 両用ロボットVictory←🔷
畳表張りの採寸、両側寸法幅の裁断が可能、左右両側の平刺し縫いと返し縫いを自動で行うことが出来る装置。
自動反転機構で左右の平刺し縫いを行う機構になっていることで、一方の平刺し縫いを行っているときに同時に手作業による縁の折り返し作業を進めることが可能となり、生産性向上を実現するために最適な機械となっている。
また、通常の畳だけでなく、薄畳(通常畳50㎜より薄い畳13㎜ほど)や畳縁のない縁無畳の作製が可能な刃物角度が0°から13°まで可能となっており、今後の展開として、新形状の畳の受注も積極的に受けることが可能となる。
取組の成果
今回の取組みで、コンピューター式全自動平刺・返縫機 両用ロボットを導入したことで、畳の品質を落とすことなく、生産時間を大幅に短縮することが出来ました。
具体的には、従来1つの畳を作るために50分以上の時間を要していましたが、この生産時間が約半分の27分に短縮されました。
また、導入した設備を使用して採寸・裁断を行った結果、畳表幅の裁断誤差は0mmであり、同じく設備を使用した畳縁幅の縫着幅についても誤差が0mmとなり、従来と同等レベルの品質を維持することが出来ていることも確認が取れています。
さらに、これまでは対応することが出来なかった15mm未満の薄型畳の生産にも対応することが可能となったため、商品の幅が広がり、より多くのお客様に畳を提案できます。
今回の取組みによって、当社が抱えていた問題を解決するための各種課題が全て解消され、目的としていた高品質畳の生産性向上を実現することが出来ました。
これにより、これまで以上にたくさんのお客様に本物の畳を体感して頂くことが出来る生産体制の構築が実現したと考えています。
三宅畳店のこれから
代表取締役 三宅 悠介 氏
今回の取り組みによって、リノベーションブームで高まっている畳の張替え需要に応えることが出来る生産体制を構築することが出来ました。
生産性が向上したことで新たに生まれた時間を活用して、店内でのイベント開催や地域イベントにも参加して、畳をより身近に感じてもらうための活動に取り組むことが出来ています。
これまで以上に販売促進活動に力を入れ、当社がこだわりを持って提供している国産い草100%の畳を拡げていくことで、当社にい草を提供してくれている熊本のい草農家さんの想いを伝えていきたいと考えています。
また今後は、店頭販売にも力を入れていくことを検討しており、新たに工場を建てて、現在の店舗兼作業場に商談スペースを設けることを計画しています。
これを進めていくためには、1人では限界があると感じているため、本物の畳の提供を通じて、生産者の想いを伝えていきたいという考えや、「数年後も“この畳で良かった!”と思っていただける畳替え」をしていきたいと本気で考えてくれる仲間を募り、組織化も進めていきます。
当社はこれからも、地域のお客様に寄り添いながら成長を続け、
『東濃の畳屋と言えば、三宅畳店』と言われるように、日々精進していきます。
+ – + – + – + – + – + – + – + – +
掲載内容についてのご質問などは、
G-Club事務局までお問合せ下さい。
お問合せはコチラ