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「鮎を知り尽くす専門店の味を届けたい」(十六兆)

今回のイチオシ事例は

 

1969年に現代表の父である小堀隆が養魚場として創業し、
50年以上に亘って新鮮な魚を提供してきた
西濃地域で最も歴史のある養魚場・鮎料理店『十六兆』さんです。

 

皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。

 

 

今回は、西濃地域最古の養魚場として創業から50年以上に亘って新鮮な魚を提供し、本当に美味しい鮎を一人でも多くの人に味わってほしいという想いをもって、世界農業遺産に認定されている長良川産の鮎を使った最高の料理と体験を提供している事例です。

 

十六兆の歴史

 

当社は、1969年に創業者である小堀隆が現在と同じ大垣市にて養魚場として『小堀養魚』を創業したところから始まりました。創業当時から「鮎」「鱒」「アマゴ」「鰻」「鯉」など複数の魚を扱っていたことや、西濃地域にライバルがいなかったこと、大垣市の水がキレイだという認知があったことから、特に近隣の老舗飲食店やホテルから重宝されてきました。

 

 

一つ目の転機は、1993年。現代表の小堀勝幸が事業を承継したタイミングでした。

 

 

承継当時、老舗日本料理店の天近や大垣フォーラムホテル、高砂殿といった、西濃地域では知名度のある店で修業を積んだ勝幸氏が感じていたのは、「西濃には本当に美味しい鮎料理店がない」ということ。

 

 

家業として養魚場を営んでいるのであれば、自分自身が「本物の鮎料理」を提供する店を開こうと考え、養魚場のみであった事業に飲食事業を加えました。

 

(飲食店舗 内外観)

 

この際、屋号を店舗の住所でもある十六町の「十六」と、勝幸氏が就職を望み、内定していたけれど就職することを許してもらえなかった日本一の料亭「吉兆」から一文字を拝借して、『十六兆』へと変更しました。

 

 

二つ目の転機は、代表の息子、小堀陽平氏が後継者として事業に加わったことでした。

 

 

もともと、事業に加わることを反対された陽平氏は、持ち前の行動力を活かしてオリジナルのアパレル事業を展開し、数年間事業を行った後、洋服店に就職し、店長職を経験。さらに、家具雑貨の製造販売を行うメーカーを立ち上げて8年間に亘って事業を営みました。

 

 

2013年に、これらの経験を活かし、『自分が事業に加わったらどんな化学反応を起こせるか』というテーマで父である勝幸氏に事業提案を行い、晴れて十六兆の渉外担当者として迎え入れられることになります。

 

 

商品のコンセプト作りと販路開拓を陽平氏が担い、商品そのものの加工・調理を勝幸氏が担うという二人三脚で事業の拡大を目指し、小売り事業をスタートさせることとなります。

 

 

2014年には、十六兆として初めての小売商品となる『子持ち鮎しぐれ』の販売をスタートし、そこから次々に新商品をリリースしていきます。

 

 

“売ってみて、お客さんのリアルな反応を見てから継続するか考える“

 

 

まずはやってみるというスタイルで、リリースした商品の入れ替えを行いつつ、小売り事業も拡大していった結果、小売り事業の取引先は15社を超え、レギュラー商品は7アイテムとなっています。

 

商品の例

   

 

生産量拡大と品質維持を同時に実現

 

2014年に最初の商品となる『子持ち鮎しぐれ』の販売をスタートしてからは、全国各地で開催される様々なイベントに出展して、地道にPR活動を行い、1件1件取引先を開拓していきました。

 

 

地道な努力が実り、県内はもちろん東海3県や関東圏のギフトショップや百貨店で取り扱って頂けるようになり、小売り事業の取引先は15件を超えました。

 

 

さらに、追い風となったのは2015年に『清流長良川の鮎』が世界農業遺産に登録されることになったことでした。これを受けて、岐阜県からも強力なバックアップを受けられるようになり、海外展開に関するオファーも頻繁に受けるようになりました。

 

 

長良川産の鮎を使用した加工食品は全国的にも珍しく、競合がほとんどいないため、当社に注文が集中し、生産可能数を増やさなければ対応できない状況にまで至りました。

 

 

もともと、当社では鮎の育成から調理・加工に至るまで自社で完結させることで、本当に納得のいく商品をお客様に届けるということをモットーにしてきました。

 

 

とはいえ、手作業の多い生産工程を自社のみで回すのは物理的に厳しいこともあり、時には卸し工程を外注委託していましたが、外注先は汎用機を使用して大量におろすため、1匹ずつ手作業でおろす当社の品質には及ばず、商品の品質劣化による不良品が多発していました。

 

 

“このままではまずい“

 

 

こう感じた当社は、生産量の拡大と高品質の維持を同時に実現することに挑戦することを決めました。

 

生産能力向上と品質維持のために

 

当社はこれまで「鮎を知り尽くす専門店の味を届けたい」をモットーに、養魚場だからこそ提供できる本当に美味しい魚料理を店舗でも加工食品でも徹底してきました。単に長良川産鮎を使用した加工食品を届けるのではなく、食べた人が長良川の鮎本来の味を知り、食を通じて幸せを感じて頂けるように、味の品質はもちろん、見た目にも一切手を抜かず、こだわりを持った商品づくりをしてきたことで、たくさんのお客様に愛されながら成長してきました。この姿勢を貫き、より多くのお客様に商品を届けるためには、生産能力の向上と高い品質の維持を同時に実現できる生産体制の構築が必要でした。これを実現するための課題が以下の3点です。

 

【課題】

◆量産対応のための卸し工程の処理速度向上

◆鮎の身を余すことなく使用し、素材ロスを防ぐこと

◆製品品質維持のための内製化対応

 

これまでも、注文量が多くなった際には外注加工を依頼していた鮎の卸し工程について、高い品質の製品づくりを行うためには手作業での実施が必須ですが、手作業では三枚おろしに係る1匹当たりの時間が約1分であり、量産化のネックとなっていました。

 

また、外注委託した場合、特に汎用の裁断機を使用すると、鮎のサイズが1匹ごとに異なるため、身をそぎ落としすぎることによるロスが発生していました。販売価格の維持のためにはこの素材ロスを防止する必要がありました。

 

さらに、当社がモットーとしている「鮎を知り尽くす専門店の味を届けたい」という状態を実現するためには、〆たばかりの鮎をすぐに冷凍保存する必要がありますが、外注加工ではこれを実現することが出来ないため、高い品質と最高の味を維持するためには内製化が必須でした。

 

これらの課題を解消し、より多くのお客様に長良川産の鮎を使用した当社の製品を届けていくため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。

 

👉中型魚割裁機👈

 

汎用型の割裁機とは異なり、身の具合に合わせて切断刃の幅を調整できる仕様となっているため、身をそぎ落としすぎることなく高速で大量の魚を切断することが可能となる。

 

取組の成果

 

今回の取組みで、弊社向けにカスタマイズした中型魚割裁機を導入したことで、高い品質を維持したまま、おろし工程の時間を大幅に短縮することが出来ました。

 

 

具体的には、従来は鮎を1尾おろすために1分を要していましたが、設備を導入したことによって、この生産時間が1/5に短縮され、1分間に5尾の加工を実現しました。

 

 

また、外注加工を依頼していた際は、鮎100尾に対して30尾ほどの素材ロスが発生していましたが、設備を導入して内製化したことによって、素材ロスを0にすることが出来ました。

 

 

さらに、〆たばかりの鮎を、鮮度が落ちる前に卸し、すぐに冷凍保存することが出来るようになったため、高い品質のまま瓶詰めしてお客様に届けることが可能となりました。設備導入以降にお客様から頂いたアンケートでは5段階中最高評価の5を頂くことが出来ました。

 

 

今回の取組みによって、当社が抱えていた問題を解決するための各種課題が全て解消され、目的としていた生産量拡大と品質維持を同時に実現することが出来ました。

 

 

これにより、これまで以上にたくさんのお客様に鮎を知り尽くす専門店の味を届けることが出来る生産体制の構築が実現したと考えています。

 

十六兆のこれから

代表 小堀 勝幸氏(左) / 広報 小堀 陽平氏(右)

 

今回の取り組みによって、世界農業遺産に認定された長良川産の鮎を使用した商品を、国内外のお客様に届けることが出来る生産体制を構築することが出来ました。

 

 

生産性が向上したことで新たに時間が生まれたため、周辺地域の皆様に長良川産鮎の美味しさを知ってもらうための地域イベントを主催するなど、長良川産の鮎をより身近に感じてもらうための活動にも取り組むことが出来ています。

 

(イベントの様子)

 

 

この2年間は新型コロナウイルスの影響もあって、店舗に来ていただけるお客様が大幅に減少していました。

 

 

そんな中、小売り事業で販売している商品を手に取り、興味を持って頂いた新規のお客様が店舗にも来店して頂けるという機会が増えてきました。

 

 

コロナ禍に関東から来店して頂いたお客様に、『西濃と言えば十六兆だね。料理もおいしいけれど、空間そのものが素敵な場所だから』というありがたいお言葉を頂戴しました。

 

 

遠方のお客様から、観光地の一つとして認知されてきているということを実感すると同時に、これからも、本当に美味しい鮎を届けることで、地域に貢献していきたいと考えています。

 

 

また、2022年に入ってすぐに、直販サイトから「塩焼きほぐし」を購入頂いたお客様から、こんな嬉しいメッセージを頂きました。

 

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『私は障がい者です。私にとって、“ふりかけ”と言えば「鮭」しか選択肢がありませんでした。私の選択肢を増やして頂いて、ありがとうございました。』

 

 

もともと、小さなお子さんや高齢の方でも安心して食べられるようにと開発した商品でしたが、障がいを持つ方からも喜んで頂けたということに驚きと喜びを感じたことを覚えています。

 

 

“こちらこそ、購入頂きありがとうございます“とメッセージさせて頂いたところ、

『入院生活の中、食べられるものは“おかゆ”だけだったけれど、味の幅が広がったことが嬉しい』と、返信を頂きました。

 

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今回の件を通じて、商品を必要としてくれる人の生活に【彩り】を提供できていることに対する喜びを感じると同時に、介護福祉業界の皆様にも商品を届けたいと考えるようになりました。

 

 

まずは、長良川産の鮎の美味しさを知って頂くためにも年に数回は、商品の寄付活動にも取り組んでいきます。

 

 

『西濃と言えば十六兆だね。』

 

こんな声を増やしていけるように、今後は、商品づくり専用の工場を整備し、さらに生産能力を上げていくことに取り組みつつ、当社の商品を楽しみにしていて頂いている全ての皆様の期待に応えられるよう、商品づくりもPR活動も一切手を抜くことなく取り組んでいきます。

 

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