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『伝統×技術でお客様の欲しいを叶える木型を』(㈱森田木型)

今回のイチオシ事例は

 

 

昭和元年の創業から地場産業の中核を担い、

時代の変化と共に業界と製品を変化させながらも、

ものづくりの原点ともいえる『木型』を提供することで、

お客様と共に成長してきた『㈱森田木型』さんです。

 

 

皆様、こんにちは。

支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。

 

 

今回は、ものづくりのスタートを担っているともいえる

木型を様々な業界に提供し、同業他社が廃業に追い込まれていく中でも

時代を先取りした事業展開で成長を続けてきた事例です。

 

 

森田木型のこれまで

 

昭和 元年 創業者である森田治郎が岐阜市にて森田機械木型製作所として創業

昭和30年 岐阜市加納に工場を移転。森田利夫が2代目に就任

昭和56年 株式会社森田木型製作所への組織変更。自動車用モデルおよび石膏型の製作開始

昭和63年 各務原金属団地1番地に本社を移転

平成元年  ケーラムを導入

平成12年 グラファイト加工機の導入。金型部門を「㈲森田精密」として分社化

平成13年 株式会社森田木型へ名称を変更し、代表取締役に佐藤隆紀が就任

平成26年 三次元非接触測定機 エイトス導入

令和4年5月 代表取締役に森田浩明が就任

 

 

当社は、岐阜県の地場産業として盛んであった繊維産業の工作機械を中心に、船舶・鉄道・建設業に向けた鋳造用木型の製造会社として創業しました。

 

 

創業からしばらくは順調に成長を続けていましたが、繊維産業が徐々に勢いを失っていったことに加え、ライバルが増加したことで価格競争に巻き込まれ、昭和の後期には大きく売上が落ちていました。

 

 

そんな状況を変えるきっかけとなったのは、当時の取引先であったトヨタ自動車の下請企業からの紹介でした。紹介をきっかけに、昭和56年に大きな舵を切り、それまで一切関わりの無かった自動車産業へ参入することになります。

 

 

バブル期を目前とする時期でもあり、自動車産業は大きく成長し、業界の成長と共に当社も事業を成長・拡大することが出来ました。

 

 

平成元年には、トヨタ自動車側からの要望もあり、他社に先駆けて「トヨタケーラム」を16番目に導入し、CAD/CAMを活用した製造のデジタル化に取り組み始め、従業員数を増やしていくきっかけとなりました。

 

 

その後、平成12年にはホンダ技研工業㈱との取引も開始し、取引先のアルミ鋳造メーカーの精密鋳造型の生産もスタート。金型部門の分社化を行うことで、生産性の向上に取り組み始めます。

 

 

自社のデジタル化にいち早く取り組んでいた経験から、今後はさらに、デジタル化が加速していくと時代を先読みし、平成26年には三次元非接触測定機を導入してリバースエンジニアリングサービスを開始しました。

 

 

(参考:リバースエンジニアリング)

(出典:ものづくりラボ「リバースエンジニアリングって何?」)

 

しばらくの間は見向きもされませんでしたが、鋳造メーカーの廃業が相次いだことで図面データの無い木型が増え始め、2020年頃から徐々にリバースエンジニアリングが注目されるようになり、サービス開始から6年も経過し、実績を積んでいた当社に新規の問い合わせが入るようになりました。

 

 

このように、創業当時は、時代の変化への対応が遅れたことで、大変な苦労がありましたが、そこで得られた経験を活かして市場の変化やお客様のニーズの変化をいち早く捉えて先を読んで対応することで、成長発展を続けてくることが出来ました。

 

 

そして、これらすべての成長・発展を支えてきたのは、創業から培ってきた伝統的な技術力と職人たちのたゆまぬ努力があったからです。

 

 

【参考:当社の技術力の高さを証明する社員の作品 (余暇を利用した製作品)】

 

環境変化×顧客ニーズの高度化に適応するために

 

当社を取り巻く環境は大きく変化しており、同業他社には後継者不在で廃業される会社や、木型製造から撤退して樹脂型製造へシフトされる会社が出てきています。この傾向は岐阜県内でも進行しており、毎年数社単位で減少している傾向があります。

 

 

木型は自動車だけでなく、工作機械や電子部品、通信機器など様々な業界で活用されており、モノづくりのスタートの重要な部分を担っているため、木型製造が無くなることはありません。そんな中で、同業他社の解散・廃業が相次いでいるため、必然的に他社で製造を依頼していた企業からの問い合わせが当社に入るようになりました。

 

 

しかし、新たに持ち込まれた相談の中には、コストや納期の面から、折り合いがつかず失注する案件も多く、当社がさらなる成長の機会を掴むためには、生産性向上を図り、コストや納期面の強化をすることで、顧客ニーズに応えることが出来る体制づくりが必要でした。

 

 

また近年は、自動車メーカーや工作機械メーカーが『さらなる高品質化』や『ITを活用した電子情報化』に加え『複雑な形状や機能美』を求める傾向にあります。特に3つ目の『複雑な形状や機能美』については、要望が多く、高機能で信頼性が高いといった従来の価値を越えて、使用者の感性に働きかける美しいデザイン形状や表面の仕上がり等、高い意匠性が求められる傾向にあります。

 

 

高度化する顧客ニーズに応えることが鋳造業界そのものの発展と当社の成長には必要不可欠であると考えており、当社では業界初となる3D図面対応とCAD/CAMを活用した加工の実施に加え、3次元非接触測定機を用いた品質保証を行うことで『さらなる高品質化』や『ITを活用した電子情報化』に対応してきました。

 

 

しかし、残された3つ目の課題である『複雑な形状や機能美』を実現するためには当社が保有する既存の設備や技術だけでは不足していたため、技術力強化が必要となりました。

 

加工精度向上×リードタイム短縮による量産体制の構築

 

当社はこれまで、時代を先取りした挑戦と長年培ってきた高い技術力を武器に、変化する外部環境とお客様のニーズに応えながら成長してきました。当社が今後も成長・発展を続けていくために、当社に新たに相談されるお客様の高度な要求に応え、コスト・納期面で優位となれる生産体制の構築が必要でした。これを実現するため、乗り越える必要があった課題が以下の4点です。

 

 

【課題】

■機械停止時間を最少にする正味作業率の向上

■納期短縮のための切削効率の改善

■手作業による修正工数の改善

■対応可能案件増加のための大型製品の加工対応

 

 

木型の製造において、従来は製品を加工内容ごとに分割して加工する分割加工方式を採用してきました。しかし、この加工方法では段取り回数が多くなり、機械が停止する時間が長くなるという問題がありました。これは、加工内容が異なるため加工内容に合わせた刃物の交換が必須であり、複数回に亘って機械を停止する必要があったことが原因でした。量産化を実現するためには、この問題を解消し正味作業率を向上させることが必要でした。

 

 

また、切削工程において、刃物への負荷がかかりすぎないようにするため、送り速度を最も負荷がかかる箇所の水準に合わせて遅めに設定していました。これを改善するため、刃具の送り速度を常時一定にするのではなく、切削する部位の形状に応じて自動で最適化し「加工時間そのもの」を短縮し、切削効率を改善する必要がありました。

 

 

さらに、仕上げの段階では、最終的な製品寸法がお客様からの要求公差に収まるまで、検査と修正を繰り返していました。分割加工方式であるため、それぞれの加工部分に若干の誤差が発生することは避けられず、この修正作業を職人の経験や勘に頼ってきたため、多くの工数が必要であり、人によって品質のバラつきが生じていました。この解消に向けて、機械加工の精度を向上し、手作業による修正作業そのものを無くすことが必要でした。

 

 

そして、これまでは大型製品の加工依頼があった場合、加工機のベッドサイズに合わせて製品を分割して加工を行い、後から組み合わせることで対応してきました。依頼数が少ないうちはこの方法でも問題はありませんでしたが、最近の傾向として製品そのものの大型化が進行しており、この変化に対応するためには大型製品を一括で加工できる設備の導入が必要でした。

 

 

これらの課題を解消し、変化する顧客ニーズに対応した木型づくりを行うため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。

 

▶モデル切削マシニングセンタ MCS712-1B型(キクカワエンタープライズ㈱)◀

 

通常のNC加工機のX・Y・Zの3軸制御に加えて、ルーター軸の傾斜(A軸)と旋回(B軸)を加工時に同時制御する5軸制御のマシニングセンタ。加工部分に合わせて速度を自動で制御し、刃物を自動で交換する機能も備えているため、当社が抱える課題の解消に最適な設備といえます。

 

取組の成果

 

今回の取組みで、モデル切削マシニングセンタ MCS712-1B型を導入したことで、納期の短縮および加工精度の向上が図れたことはもちろんですが、当社が得意とする電子データをそのまま活かし、大型の製品であっても従来の分割加工ではなく、一体加工で生産する体制を構築することが出来ました。

 

 

具体的には、従来の生産方法では手作業による加工と機械加工の時間を合計して33時間24分かかっていた製品の加工時間が、23時間21分となり、約30%の時間短縮となりました。この時間短縮には、刃物の送り速度が最適化されたことに加え、刃物の交換も自動で行うため、機械を停止する時間が無くなったことが大きく寄与しています。

 

 

また、導入した設備を使用した加工を行うことで、複雑な形状の製品の全ての測定ポイントにおいて加工誤差を±0.1mm以内に抑えることが出来ました。これまでは、手作業で修正を行うことで顧客の要求水準である±0.3mmの公差に収めてきましたが、修正作業を行うことなく、より高い精度での加工が可能となりました。

 

 

さらに、ベッドサイズの大きい設備を導入したことにより、従来と比較して幅・奥行・高さの全てにおいて大型の製品加工に対応することが可能となりました。これにより、大型製品であっても分割加工を行う必要がなくなるため、加工時間、品質、コストの全てにおいて改善することが出来ました。

 

 

今回の取組みによって、当社が抱えていた問題を解決するための各種課題が全て解消され、目的としていたコスト・納期面で優位となれる生産体制を構築することが出来ました。

 

 

これにより、高度化する顧客の要求にも対応しながら、より多くのお客様からの依頼に応えることが可能となります。

 

森田木型のこれから

相談役 佐藤隆紀(左) / 代表取締役 森田浩明(右)

 

今回の取り組みによって、統廃業が相次いでいる木型業界の溢れた需要を吸収し、高度化する顧客の要求にしっかりと対応していくことが出来る生産体制を構築することが出来ました。

 

 

木型業界における統廃業の流れは、今後もしばらくの間は継続していくと予想されており、実際に補助事業を実施した当時と比較しても図面やデータの無い型の修繕や再生に関する依頼は増えてきています。

 

 

以前は、相談される案件の中身を精査し、お断りせざるを得なかったものも多かった状況でしたが、早期から電子化に対応し、リバースエンジニアリングに関する経験を重ねてきたことに加え、3次元非接触測定機を活用して持ち込まれる製品を測定し、これを自動加工技術と掛け合わせることで対応できる幅が広がりました。

 

 

新たな相談が来た時に、『やってみましょう』と答えるところからスタートできる体制が構築できたことは当社にとって非常に大きな強みとなりました。

 

 

当社は、2022年5月に平成13年から3代目として代表取締役を務めてきた佐藤隆紀が退任し、4代目代表取締役に森田浩明が就任し、新たな体制でのスタートを切ったばかりです。

 

 

しばらくは、これまでの流れを引き継いで、既存の案件に対応していくことに注力していきますが、同業他社が次々と廃業していく現在の状況を踏まえ、当社が率先して全国の案件を引き受けていくことで、業界を守り繋いでいかなければならないと感じています。

 

 

木型は日本のモノづくりにおいて、スタートを担う重要な製品であり、絶対に無くしてはいけない産業です。

 

型の無くなることはない

技能者に定年はない

型を作り上げていく喜びを感じよう

 

当社はこれまで、急伸する技術革新・個性化・価値観の多様化といった工業界の大きな波の中、お客様の新製品開発の過程で最初に必要となる『型』という分野で協力してまいりました。

 

これからも、高品質・高精度・短納期はもとより、常に時代の先を見据え、高い技術・伝統的な技術・技能を持って、関わる皆様とともに発展・成長を続けていきます。

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