イチオシ事例
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『伝統×進化 建設業界にさらなる繁栄を』(所産業㈱)
今回のイチオシ事例は
昭和24年に創業して以来、揖斐川町を中心に活動を続け、
庭石店から造園業、そして現在の土木・建設業へと、
時代の変化に即した積極的な企業活動を展開してきた
地域を支える総合建設会社『所産業㈱』さんです。
皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。
今回は、地域を支える総合建設会社として、
新技術を積極的に取り入れることで、
従業員一人一人が持っている技術力を
最大限に発揮できる環境づくりに取り組んだ事例です。
所産業のこれまで
昭和24年 前身となる「所庭石店」創業
昭和39年 所産業へと組織を変革させていく所 登喜雄氏が入社
昭和46年 屋号を所産業へ変更し、土木・建築・とび・ほ装・造園業に事業を拡大
昭和58年 所産業株式会社へと組織変更
平成 6年 揖斐建設業協会へ加盟し、建設業を本格化
平成10年 代表取締役に所竜也が就任し、新社屋を建設
平成23年 ISO9001を取得、建設業労災防止協会優良賞受賞
平成26年 有害鳥獣柵の販売事業を開始
平成27年 代表取締役に春日 将志が就任
平成30年 ICT施工の開始
当社は、戦後すぐの昭和24年に、当時は同業他社も多かった庭石販売店として創業しました。
創業後しばらくは庭石店として成長を続け、周辺事業である石工事業や造園業も手掛けていきました。
ところが、徐々に西洋の文化が広がり、庭を持たない家づくりをすることが多くなっていく中で、当社の売上は減少の一途をたどり、事業の維持が難しい状況に追い込まれました。
そこで、創業から培ってきた技術を活かせる事業領域として土木・建設業を選択し、企業としての生き残りをかけて土木・建設業に注力していくこととなります。
昭和の終わりに株式会社に組織変更してからは、土木・建設業を本格化し、総合建設会社として工事を請け負うようになっていきます。
平成の終わり頃からは、入札要件としてISOの取得企業が加えられるなど、建設業界に“外的評価”が求められるようになってきたため、当社もこれに対応して社内の体制を整えてISO9001を取得。さらに労働災害防止協会からの表彰や岐阜県林政部長からの表彰を受けるなど、積極的に企業価値を高める活動を行ってきました。
さらに、現在の代表取締役である春日将志が社長に就任してからは、若手の社員がなかなか定着しない状態になっていた会社を『働きやすい会社』に変えていくと決意し、改革に取り組んでいきました。
今では当たり前となっている週休二日制も、当時の業界内では浸透していなかったため、「稼働日が少なくなることで工事に影響が出る」と、社内外から反発がありました。しかし、承認を待っていても進まないと断行し、結果的に社員の労働生産性が向上するという成果をあげました。
平成30年から取組みをスタートしたICT施工も働きやすい職場づくりの一環であり、将来共に働くことになる若い世代のために、新技術を積極的に取り入れた新しい形の施工技術集団となることを目指しています。
現在の社屋
危険作業の撲滅を目指して
建設業は国内産業の中で、重大事故の発生率が最も高く、令和元年の業種別死亡災害の33%にあたる260人を建設業が占めています。
また、建設現場で発生する重大事故の中でも上位を占めるのは『転落災害』『飛来・落下(浮石等)』『建設機械等によるはさまれ・巻き込まれ』であり、これら3つで約60%を占めています。
当社も含め、各建設会社では日常的にリスクアセスメント・危険予知活動・安全巡視等を実施していますが、これらの取り組みだけでは重大事故を回避することが困難であり、根本的な対策が必要になると考えています。
建設工事において危険があるとされる作業は、着工から完成に至るあらゆる工程に存在していますが、その中でも特に重大災害に直結する危険作業は建設機械を使用する作業と、建設機械を稼働しながら行う周辺作業の2つです。
これら2つの作業を行う現場において作業者の安全を確保し、安心して作業することが出来る状況を作っていかなければ、建設業界の未来はないと考えています。
当社は平成30年より、同業他社に先駆けてICTを活用した施工をスタートしており、3次元のCADデータを活用した設計データの作成・取り込みに加え、レーザーやドローンを活用した測量を実施できる体制を作ってきました。
これらの取り組みによって、工事全体のうち現地測量工程と出来形測定の工程の作業効率を向上させただけでなく、各工程における危険作業の撲滅にも成功してきました。
この成功事例を応用することで、最も危険な作業である現場での機械掘削工程における危険作業も撲滅することが出来るのではないかと考え、挑戦することを決めました。
安心・安全次世代施工技術の確立
ここまで書いてきた通り、当社はこれまで、庭石販売店からスタートした事業を時代の変化に合わせて変化させ、土木・建築などの工事を請け負う総合建築業を営む企業へと成長してきました。しかし、建設業界は死亡事故も多く、危険なイメージを持たれているため若い人材から良いイメージを持たれません。今後の人材確保が困難になることが予想されている中で、これまで以上に建設業界を繁栄させ、当社が生き残っていくために、安心・安全かつ生産性の高い次世代施工技術の確立に挑戦しました。これを実現するためには以下3点の課題を解消する必要がありました。
【課題】
■補助労務員無しで土の掘削・整地・整形作業を行う
■オペレータ熟練度に頼らない高品質の施工
■少人数施工の実現による生産性の向上
従来のバックホウを使用した重機作業は熟練のオペレータが建設機械を操作して土の掘削・整地・整形作業を行うものでした。重機を操作しているオペレータからは、地表面の状況を判断することが困難であり、作業時は補助労務員を配置して作業を行っていましたが、補助労務員による建設機械との挟まれ・巻き込まれ事故が問題となっていました。
また、この掘削・整地・整形作業は、オペレータおよび補助労務員の熟練度がそのまま仕上がり品質に反映されることになるため、経験の浅い人材が作業を行うことで仕上がりが悪くなってしまう問題が起きていました。この作業の品質が悪いと、上部に構築する構造物の品質確保が困難になるため、誰が作業しても高い品質を維持できる状態とすることが課題となっていました。
さらに、従来の施工方法では施工管理者1名、測量補助員1名、オペレータ1名、補助労務員2~3名が必要であり、建設機械1台に対して5名~6名で作業を行う状態となっていました。この状態では、労務費がかさみ生産性が著しく低下してしまうため、早期改善が課題となっていました。
これらの課題を解消し、作業現場の安全性を高め、安心して作業を行うことが出来る次世代施工技術の確立を実現するため、令和元年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。
▶Leica iCON iXE3 3D ガイダンスシステム◀
オペレータの操作を誘導する3D掘削ガイダンスシステム。 設計情報とリアルタイムの切土/盛土の情報が重機に設置したコントロールパネル画面に表示されるため、設計データを参照して迅速に掘削作業を行えます。 複雑な掘削作業も容易かつ正確に実施できるため、勾配チェックの必要性がなくなり、やり直し作業を減らして時間とコストを節約します。
▶Leica iXE 2 ガイダンスシステムパーツ◀
盛土/切土の状態をリアルタイムにグラフィックで表示することに加え、設計上の高さと勾配に対するバケットの実位置を表示するため、素早く正確な掘削作業が可能です
▶Leica TS16Pガイダンス測位システム◀
雨、霧、塵、太陽光、陽炎、その他光の反射など、計測の困難な環境に自動的・継続的に適応してベストな計測データを取得可能なセルフラーニング機能付きトータルステーション。
取組みの成果
今回の取組みで、重大事故の発生リスクが高い危険作業の撲滅と、生産性の向上を同時に実現するため、ICT施工に必要となる機器を導入したことで、高品質な施工を自社で全て請け負うことが出来る体制を確立することが出来ました。
具体的には、多くの危険作業を含んでいた掘削・整形作業について、従来は3人作業で半日程度必要だったものが、2人で作業し、2時間程度で完了することが出来るようになりました。
また、建設機械作業を行っている際、オペレータが手元で情報を把握することが出来る状態となったため、補助作業員を配置することなく作業できる状態となったため、今後、同作業における建設機械による巻き込まれ、挟まれ、掘削法面・堀穴崩落等による重大事故のリスクを大幅に軽減することが出来ました。
さらに、出来形の測定作業についても、3人作業で2~3時間を要していたものが、2人作業で1~2時間程度に短縮されました。
そして、品質面についても、施工範囲の全ての箇所において±10㎜以内という高品質を達成することが出来ていることを確認し、平場のバラつきもほとんど発生していなかったことから、作業完了後に人力での整形作業を実施する必要がない状態が実現できました。
今回の取組みによって、施工時間の短縮・習熟度によらない高品質の施工・危険作業の撲滅といった各種課題が全て解消され、目的としていた次世代施工技術の確立を実現することが出来ました。
これにより、当社で働く作業者の労働環境が大きく改善されたことはもちろん、高い生産性の実現によって、従業員に利益をしっかり還元できる状態を作ることが出来たため、これからの建設業界を担う若い世代に自慢出来る会社に近づくことが出来たと感じています。
所産業のこれから
代表取締役 春日 将志 氏
今回の取り組みによって、現場作業者の負担を軽減しつつ、作業効率・生産性を向上させたことはもちろんですが、全産業において最も重大事故が多い建設業における3大事故の発生を防止する対策を講じることが出来ました。
すでに岐阜県や揖斐川町から、導入した設備を使用した工事案件を受注することが出来ており、大きな事故もなく順調に事業を行うことが出来ています。
もともと、当社が平成30年からスタートしたICT施工は、日々の現場管理と書類作成に忙殺されていた現場監督の負担を軽減する目的でスタートしました。
平成29年に測量方法の刷新とCADの導入を行い、現場での測量作業の効率をあげつつ、事務所では事務スタッフがデータの作り込みを行う体制を構築したことで、現場監督の負担は大きく軽減され、受注できる案件数も大幅に増加しました。
その後、令和元年に本補助事業を行ったことで、事務所で作りこんだデータをそのまま現場の建設機械に送り込む体制を構築し、品質の向上と生産性の向上を実現しました。
現在は、各現場と事務所をクラウドで接続するシステムの構築に挑戦しており、これが実現すれば、現場の建設機械に入っている情報をリアルタイムで更新できる状況にアップグレードできます。
ICTの導入がなかなか進まない建設業界ですが、当社が先陣を切って事例を創っていくことで、認知が広がり、業界の常識をアップデートできると考えています。
若い世代に人気がないと言われる建設業界ですが、新しい取り組みにどんどん挑戦することで、若手が活躍できる場を創り、将来入ってくる若い世代のために魅力的な環境づくりを継続していきます。
安全第一、誠実な施工、明るい職場
当社はこれからも、当社にしかできない新しい技術でのサービスをお客様に提案し、若い力で時代のニーズに応えることが出来るよう、常に向上心を持ち新しい時代へ前進していきます。
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