イチオシ事例
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お客様の「こんなのが欲しかった!」を形にする『自由設計』
今回のイチオシ事例は
不自由な身体を治す酒の泉の「孝子伝説」や
日本滝百選にも選ばれている養老の滝で有名な養老町で、
あらゆる特殊テントでお客様のニーズに応え続けて
創業90年以上になる『株式会社タカダ創美』さんです。
皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。
今回は、「開発力」×「技術力」をテーマに掲げ、
創業90年以上の経験から得られた開発力と最新技術を融合させることで
お客様の「こんなのが欲しかった!」を形にしている事例を紹介させて頂きます。
製品を通じて地域のお客様のサポートを行い、
お客様のニーズに応えるために自らが挑戦を続ける姿勢から、
商売の本質を学ぶことが出来ると思います。
株式会社タカダ創美について
大正12年 養老町高田にて原点となる『かぎや呉服店』を創業
昭和18年 社名を『高田ミシン・テント商会』に変更し、営業内容を変える
昭和49年 お客様の要望に応える形で営業品目に内装工事を加え、公共事業を開始
昭和57年 テント・内装工事部門を分社化し『株式会社タカダ創美』を設立
平成15年 東工場を建設し、大型幕加工にも対応できる体制を整える
当社は、今から約100年前にあたる大正12年に呉服店として創業しました。
その後、ミシンの販売とテントの生産販売を行う会社へと転身し、昭和57年にテント・内装部門を分社化する形で現在の『株式会社タカダ創美』へと変化してきました。
当社のものづくりは綿帆布から始まり、技術の進歩や時代の変化に合わせて変化を遂げてきました。
様々な性質を持つ生地が登場したことを受け、当社でもそれらの特性を生かし、お客様のニーズに応える製品開発を行う中で、屋根幕・テント倉庫・間仕切り・ブース・カバーといった製品を生み出してきました。
様々な業種、業界のお客様に最適な商品を提供することで、地域のお客様のサポートを行う特殊テントメーカーとして、設計、縫製、溶接、取付けといった全ての工程を自社にて一貫生産対応しています。
一貫生産で行えることから、既製品では対応することが出来ないサイズや特性を持つオリジナル製品を短納期・最適価格で提供することが出来ます。これが、お客様から大変喜ばれており、岐阜県内のお客様を中心に様々なお客様から注文を頂いております。
経営理念にも掲げている通り「お客様のご要望をしっかり聞き、理解し、経験と情報をもとに開発・提案していくことで、お客様から『ありがとう』『きれいになった』と言って頂ける環境づくりを目指しています」
台風被害の影響を乗り越えるために求められた効率化
2018年9月 大型の台風21号が岐阜県にも甚大な被害をもたらし、当社にはテントの修繕や張替え作業の依頼が殺到していました。
しかし、急な依頼増に対応できるような人員体制ではない当社は、被災とは関係が無い「ビニール間仕切り」のような製品製作案件の一部をお断りしながら何とか対応していました。
それでも復旧作業に充てられる人員は限られているため、復旧作業は遅々として進まず、当社としても自社の作業効率を改善することで対応力を上げる必要性が出てきました。
最初に行ったのは、一部の案件をすでにお断りするような状況となっていた「ビニール間仕切り」について、作業工程を網羅し、効率化を実現するための課題の洗い出し。
この洗い出し作業の中で、課題が見つかったのは「現場測定」と「裁断工程」の2工程。その課題のうち「現場測定」についてはすでに保有している設備を現場で活用するといった施策を導入することで解消することが出来ました。
しかし、「裁断工程」については、熟練のスタッフがカッターやハサミで手切りを行うという旧態依然とした工程であり、裁断の精度はスタッフの技量に依存せざるを得ない状況でした。作業者を増員しようにも、裁断経験のある人材はおらず、育成にも時間がかかります。
また、熟練スタッフであっても手作業では誤差が生じてしまうため、裁断した後に寸法間違いが発見されて裁断工程のやり直しが必要となる事態も複数回発生しており、手戻りによる生産リードタイムの増大や、材料コストの増大といった問題も発生していました。
この状況を変えるには“手切りによる裁断”から脱却するしかない。
こういった背景で、今回の挑戦に至りました。
目指したのは“手切りによる裁断”からの脱却
当社はこれまで既製品では実現できないお客様のニーズに100%応えるオーダーメイドのテントや間仕切りを提供することでお客様から信用を獲得して成長してきました。前述のとおり、台風被害の影響によって急激に増えていた修繕依頼に応えつつ、新規のお客様からの依頼にも応えるためには“手切りによる裁断”からの脱却が必要でした。これを実現し、お客様に喜んで頂ける製品づくりを行う体制づくりをするには以下の課題をクリアする必要がありました。
【手切り裁断脱却における課題】
◆軟質ビニールの切断仕上がり寸法の確保
◆歩留まり率80%以上の確保
◆シートの汚れや基布の乱れによる不良の回避
手作業による裁断工程からの脱却を実現するためには、機械による裁断であっても手作業と同等かそれ以上の品質を実現する必要がありました。
特に軟質ビニールにおいて、手作業で広げたシートを作業者の感覚で切断していましたが、これでは予定寸法通りカットしてもズレが生じることがあるといった問題がありました。機械による裁断を導入した場合にはこの問題を同時に解消し、±3.0%以下での裁断を目指しました。
また、手作業での裁断時にはシートを広げた際に発見した汚れや基布の乱れ部分が製品に混入することを避けるため、熟練スタッフが経験でネスティング(無駄が発生しないよう裁断物を配置)していました。
手作業から脱却するためには、機械による裁断であっても不良部分を回避した自動ネスティングを実現することが必須であり、その上でシート全体に対する歩留まり率を80%以上にキープする必要がありました。
以上の課題を解消しつつ、機械による自動切断を実現するため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。
→AUTOMETRIX 自動裁断機←
幅広い素材を高速かつ高精度に切断することが出来る自動切断機であり、当社が使用する2m幅の生地原反の裁断にも対応。
取組みの成果
今回の取組みで、当社が扱う2m幅の裁断に対応した自動裁断機を導入したことで、熟練スタッフが手作業で実施していた裁断工程を自動化することに成功しました。
設備を導入したことによって、従来の手作業では実現することが難しかった複雑形状の膜体裁断の歩留まり率が80%以上に改善し、仕上がり寸法についても±3%以下の誤差に抑えることが出来ました。
また、副次的な効果として機械切断に切り替えたことで、生地の厚みに応じた丸刃の押し当て圧力や、引き刃の調整による切り残しデータを蓄積することが可能となり、これらのデータを活用することで裁断ミスが起きる確率を下げることができました。
今回の取組みによって、手作業による裁断工程からの脱却を実現するために必要であった各種課題が解消され、目的としていた作業の効率化を実現することが達成できました。
これにより、一部お断りせざるを得ない状況となっていた案件も受注できる生産体制を構築することが出来ました。
このタイミングで手作業による裁断という経験に頼った体制から脱却できたことで、手戻りによる時間や材料のロス発生による生産コスト増を抑えることに成功し、コロナ禍で各企業の投資意欲が落ち込んだことや資材の値上げといったマイナスの状況下でもなんとか踏ん張ることが出来ています。
とはいえ、全てが期待通りになっているというわけではなく、オペレーターの教育が必要であるという課題も残っています。専用ソフトウェアの操作やネスティングの設定、生地の裁断など複数の知識を同時に要するため技術習得に時間がかかり、操作できる人間に限りがあります。
幸いにも若い従業員獲得が出来ているため、少しずつではありますが複数の従業員で操作できる体制を整えるために現在も取組みを継続しています。
タカダ創美のこれから
今回の取り組みによって、熟練スタッフの経験や技術力といった属人的な要素を少しでも減らして受注量が増加している中でも、高い品質を維持したまま従業員への負担を増やすことなく短納期対応を維持できる生産体制を構築することが出来ました。
他社には真似することができないオーダーメイド・短納期・最適価格という当社の強みを、より強固にすることが出来たため、これまで以上にお客様に寄り添うことが出来る企業へと成長できたと実感しています。
当社の主力商品としてさらなる認知拡大を図るため、テントと間仕切りの違いが分かりづらいというお客様の声に応え、間仕切り商品だけに特化した『よつばビニール』という特設ページをご用意させて頂き、より多くのお客様に当社の商品を届けるべくPRを実施しています。
現在、あらゆる物事が計測可能になった現代のテクノロジーと当社の技術力を掛け合わせることで、『導入効果や機能が客観的に分かるテント』を商品化することで、これまで以上にお客様のニーズに寄り添った提案を実現できないか模索しています。
当社は創業以来、培ってきた開発力と最新の技術力を掛け合わせることで「こんなのが欲しかった!」と、お客様から言って頂ける商品の提供が出来るように、お客様の声を聞き、ニーズに寄り添うことで成長してきました。
これからもこの姿勢を忘れず、地域の生地メーカー様とも連携しながら地域に根差した企業として活動していきたいと考えています。
我々は、お客様のご要望を充分理解し、我々の経験と努力で、
きれいな製品(しごと)を創らせていただき、
結果「ありがとう」「きれいになった」と言われたい。
当社はこれからも、お客様の声に耳を傾け、ニーズに寄り添う提案・商品づくりを通じて持続可能な社会に貢献していきます。
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