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すべてはお客様の笑顔のために(㈱小林製作所)

今回のイチオシ事例は

 

創業以来、樹脂製品の金型製作一筋で、
自動車はもちろん、雑貨や刃物、医療関連に至るまで
様々な業界に向けた製品を提供し成長を続けている
『株式会社小林製作所』さんです。

 

 

皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。

 

 

今回は、「すべてはお客様の笑顔のために」を経営理念に掲げ、
創業以来、変わることなく金型製作を通じてお客様と共に
成長してきた事例を紹介させて頂きます。

 

1つの業界にとらわれることなく、
樹脂で成型できるものは何でもトライする柔軟さで、
次々と新たな業界へ水平展開を進めていく姿勢から、
ピンチをチャンスに変える力を学ぶことが出来ると思います。

 

株式会社小林製作所について

 

1985年 関市にて原点となる自動車専門金型製作業を個人にて創業
1989年 有限会社小林製作所として法人化
2005年 金型手配の為、韓国との取引を開始する
2006年 中国からの金型手配を開始する
2013年 中国に上海事務所を開設し、現地の管理を強化する
2014年 代表取締役に小林一彦が就任
2017年 本社・成形工場を関市池尻897番地5へ移転
2021年 350t、850tの電動式射出成型機を導入し、大型化に対応

 

当社は、37年前に自動車部品専門の金型製作業として創業しました。
創業以来順調に成長することができ、4年目に『有限会社小林製作所』として法人化し、
より多くのお客様要望にお応えするため、韓国や中国から金型の手配を行う体制を構築しました。

 

しかし、自動車業界に特化していたため、自動車の売れ行きによって売上が左右され、
繁閑の波が大きい状態が続いていました。

 

このような状態からの脱却を図るため、当社の仕事を「自動車専門金型製作業」ではなく、
『樹脂成型用金型製作業』と再定義し、雑貨や遊戯台、水栓関連、刃物、医療など、
樹脂を使用しているあらゆる製品の金型を手掛けるようになりました。

 

環境負荷低減のために求められる軽量化への対応

 

当社が創業以来、金型製作に携わってきた自動車業界では、環境規制や燃費向上対応のために車両の軽量化技術の開発が進められています。

 

軽量化にあたっては、自動車重量の7割を占める鉄に替えて、新たな軽量素材の使用が検討されており、軽量ながら金属と同等レベルの強度を持つ強化樹脂を使用する製品の使用比率が高まっていく見通しがあります。

 

金属製の部品を強化樹脂で代替できるようになれば、車両の軽量化はもちろん、燃費の向上や重心高の抑制による安全性能の向上にもつながります。

 

このような背景から、自動車メーカー各社が次々と強化樹脂製品への切り替えに乗り出しています。しかし、強化樹脂は、ガラス繊維が混ざっており、従来の樹脂材と比較して強度が高く、金型内の流動性が悪いという性質を持った素材です。

 

強化樹脂を使用した製品を生産するためには、こういった性質に対応した金型の設計が必須であり、当社の取引先である成型業者の皆様も困っている状況でした。

 

当社は、成型業者の皆様に寄り添うことで成長を続けてきた会社です。その成型業者の皆様が困っている状況を金型製作業者として何とか変えたい。

 

こういった背景で、強化樹脂の金型製作ニーズに確実に対応するための体制づくりを実現すべく、今回の挑戦に至りました。

 

強化樹脂製品の成形に当社の強みを

 

 

当社はこれまで、お客様に納品させて頂く金型について、金型の設計・製作後に自社内で試作成形を実施することで、設計データには表れない不具合のチェックを行ってきました。これにより、金型納品後の成形時の問題を事前にクリアすることが出来るため、お客様からは大変喜んで頂いていました。強化樹脂製品の金型においてもこういった当社の強みを活かした体制を構築し、お客様に喜んで頂ける製品づくりを行うためには以下の課題をクリアする必要がありました。

 

【強化樹脂製品成形金型における課題】

◆最適な成形条件を提示するための知見の蓄積

◆成型時に発生する問題を事前に解消する試作成形の実施

◆納品後の引き取り修正削減による短納期化

 

当社は強化樹脂製品の成形が出来る設備を保有していないため、金型製作後の成形は外注先に任せるしかありませんでした。しかし、外注先に任せてしまうことで、材料の射出速度や圧力、適正温度といった成形条件を当社内に蓄積することが出来ません。

 

また、強化樹脂の成形が出来る外注先は近隣に存在しないため、案件の納期によっては金型製作後の試作成形を実施することなく納品せざるを得ないこともあります。この場合、成形時に発生する各種問題を事前に検証することが出来ておらず、初期不良による引き取り修正が発生してしまう可能性があるため、信用力の低下などが懸念されていました。

 

以上の課題を解消し、強化樹脂の金型製作ニーズに確実に対応するための体制づくりを実現するため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。

 

▶電動式射出成形機 EC230SXⅢ-8A◀

強化樹脂は、従来の樹脂と比べ硬いので射出成形時にスクリューやシリンダー部が磨耗してしまう。そのため、磨耗しにくい特殊な(耐摩耗・耐腐食)スクリュ-、シリンダーを装備した射出成形機を導入。

 

取組みの成果

 

今回の取組みで、強化樹脂を使用した成形に対応する射出成形機を導入したことで、製作した金型を使用した試作成形を実施することが可能となりました。

 

この取組みを進めていく中で、導入した設備を使用して、当社の成形技能士と金型工が強化樹脂製品の成形を繰り返し行い、充填状態や多数個取り製品のバランスを確認しました。

 

その結果、金型のランナー部分の大きさを改善(ランナー部分10mm→6mm)し、従来と同等レベルの品質で全ての製品に材料の充填が出来ました。1ショット当たりのランナーサイズが小さくなることで、材料単価の高い強化樹脂を効率よく使用することが出来るようになり、コスト削減につながりました。

 

また、これまで強化樹脂製品においてはショートやバリといった不良が発生してしまうことから多数個取りの成形が出来ない状態でしたが、今回の取組みを実施する中で成形条件のデータ取りが完了し、強化樹脂製品用の金型であっても多数個取りの設計が可能となりました。

 

以上により、強化樹脂の金型製作ニーズに確実に対応するために必要であった各種課題が全て解消され、目的としていた体制づくりを実現することができました。

 

今回の挑戦をしたことで、今後ますます増えていく強化樹脂製品の需要にも応えることができ、当社の取引先である成型業者側のコスト削減や量産対応に貢献することができます。

 

小林製作所のこれから

代表取締役 小林 一彦 氏

 

今回の取り組みによって、今後ますます増加していくことが想定されている強化樹脂を使用した自動車部品の生産において、取引先の成形事業者様側におけるコスト削減や納期短縮、精度の高い成形品を実現する金型の提供ができる体制を構築することが出来ました。

 

これにより、お客様に金型を届ける前に成形時の問題を解消しておく試作成形を実施するという当社の強みを強化樹脂製品でも生かすことが出来ます。今回の取組みを行ったことで、これまでと同等レベルでお客様に寄り添うことが出来る企業へと成長できたと実感しています。

 

最近では、自動車部品が大型化(一体化)してきたことに対応するため、新たに大型部品成型用の射出成形機も導入し、大型部品についても試作成形を行ってから納品できる体制の構築を行いました。

 

『小さなものから大きなものまでお客様の要望に応える』という想いを持って、当社が関わっている業界で新たな動きがあれば、取引先の皆様が困る前に先回りして当社が対応するという姿勢で挑戦を続けています。

 

また、世界的に注目されているSDGsへの貢献の一環として、生分解樹脂を使用した製品の開発・提案にも挑戦しています。

 

さらに、従業員がイキイキと働くことが出来る環境をめざして、『健康づくりや生活習慣病予防講話』の受講や、全社員に万歩計を配布して社内で競いあう取組みの実施、関市のウォーキング事業への参加、他団体主催のストレッチ講座への参加など、社員の健康とコミュニケーションの促進を大切にする活動を実施しており、2021年に『健康経営優良法人』に認定されました。

 

すべてはお客様の笑顔のために
常に顧客の要求に応じることのできる体制をつくり、
信頼にこたえるよう努力する。

 

当社はこれからも挑戦者としての姿勢を忘れず、お客様に寄り添い続けることはもちろん、地域の企業様との連携や、地域雇用への貢献など、地域に根差した企業として活動していきたいと考えています。

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