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一生モノの刃物 ~目指したものは、百年先も変わらない切れ味と美しさ~三星刃物㈱

今回のイチオシ事例は

 

『新しいライフスタイルや、料理を通して人々の間に笑顔が浮かびますように』

という思いを掲げ、世界を驚かせる自社ブランドを立ち上げた

三星刃物株式会社」さんです。

 

 

皆様、こんにちは。

支援専門員の野村 昌史(のむら まさふみ)です。

 

今月は、多くのメーカーが抱える価格競争という課題を解消するため、
自社ブランドの立ち上げに挑戦し
多くのファンを獲得した事例を紹介させて頂きます。

 

ファンの獲得は、今後のビジネスの主流です。
参考にできる学びがあれば、是非取り入れてみて下さいね。

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<三星刃物株式会社のこれまで>

明治6年 刀鍛冶だった曾祖父の代に岐阜県関市の地にて創業。
140年以上にわたり、刃物の製造・販売に携わってきました。

 

創業から積極的に海外市場に目を向け、
昭和32年にはニューヨーク支店の開設、昭和46年にはシカゴ支店開設、その後も西ドイツや中国、フィリピンなど積極的に事業を拡大してきました。

 

次々に国内外に拠点を拡げ、順調に規模を拡大しているようにも見られる当社ですが、
長年に亘って他社製品を製造するOEM生産を生業としてきたということもあり、
競合他社との価格競争による苦しさを感じながらの事業展開でした。

 

これまで付き合ってきたメーカーとの関係性も考慮しながら、ブランド構築を進め、ついに平成27年に自社ブランド「和 NAGOMI」シリーズを新事業として立ち上げました。

 

「和 NAGOMI」というブランド名には、当社の包丁を使うことで、毎日の料理をもっと楽しくし、料理を通じて大切な人との間に“なごみ”が生まれるようにとの願いが込められています。自社ブランドという武器を持ったことで当社の技術力の高さが認知され、OEM生産の依頼も増加するという相乗効果も生まれました。

 

<自社ブランドへの挑戦>

長年に亘る競合との価格競争から脱却するという目的のもと、自社ブランド立ち上げに本格的に乗り出した当社は、ブランドの確立を目指して様々な挑戦をしていくことになります。

 

『めざしたのは、一生ものの包丁』

 

実は、自社ブランドの誕生には誕生秘話があります。

 

きっかけとなったのは、社長の奥様が主催する「パン教室」。
教室に通う生徒さんとの会話の中で、『家庭で手入れできる包丁』が求められているということに気づかされたのがはじまりでした。

この気づきを得てから、夫婦で試行錯誤を繰り返し、ようやく誕生したのは月に1~2度ほど新聞紙で数回研ぐだけで切れ味が戻る包丁。

 

140年以上積み重ねてきた当社の技術を惜しげなく注ぎ込んだ最高の切れ味に手入れのしやすさを兼ね備えた「和 NAGOMI」が誕生したのです。

 

こうして、ようやく完成した最高の商品ですが、
知っていただかなければブランドとしての地位を確立することはできません。

 

より多くの皆様に、最高の商品を届け、喜びを感じていただくために当社が取り組んだのは、「ECサイトの構築」「ふるさと納税返礼品」「クラウドファンディング」「シリーズ化」などなど多岐にわたります。

<課題をクリアし、新たなステージへ>

様々な取り組みが功を奏し、たくさんのお客様から注文を頂けるようになった「和  NAGOMI」シリーズでしたが、増え続ける新規受注に新たな課題が発生します。

 

この挑戦はこれまで受けていたOEM生産を継続しながらの自社ブランド確立への挑戦です。生産能力を上回る受注に、納品まで8か月もお客様をお待たせしてしまう事態となったのです。

 

【クリアすべき課題】

◆増え続ける新規受注に対する生産能力の向上

◆技術者ごとでわずかに異なる加工品質の均一化

◆熟練技術者の高齢化による人材不足への対応

◆若手人材の育成時間確保

 

これらの課題に対応するため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して導入したのが「包丁柄仕上げロボットシステム」。

製品ハンドル部を8段階に細分化し、このうち2~7段階をロボットシステムによる置き換えを図ったのです。

 

 

▶包丁柄仕上げロボットシステム◀

熟練の職人の行う手技を再現すべく、細かな動きの一つ一つを研究し、そのすべてをプログラミングしてティーチングを行った“世界に1つしかない”自動包丁柄仕上げロボット。

 

さらに、今回の事業では、設備を導入するだけでなく、会社の未来を考え、ロボットを活用した生産体制を積極的に取り入れていく目的で若手人材の知識を高める教育を行い、社内のデジタル人材育成に努めました。

 

<得られた成果>

課題を解消する設備を導入したことにより、加工工程の自動化・省力化が実現しました。品質面においては、ロボットが実施する工程での品質のバラつきがなくなり、工程終了後の熟練技能者による手直し工数が0になるなど、加工精度が格段に向上しました。 

 

さらに製作時間について、約4割の時間短縮が実現され、1時間当たりの生産本数が160%に増加しました。

 

結果的に、8か月待ちだった製品のお届けが、3~4ヶ月に短縮され、喜んで頂けるお客様が増えることとなりました。

 

他にも嬉しい効果として、恒常的に発生していた作業者の残業時間が40時間/月から5時間/月へと大幅に削減され、働きやすい職場づくりにも貢献しました。

 

また、熟練技能者が多くの時間を要していた若手技能者の育成の点でも、社内でデジタル人材の育成を行ったことで技能の平準化に繋がり、高齢化による人材不足にも対処することが出来ました。若手技能者たちは導入後1ヶ月程度で操作をマスターし、今ではシミュレーションソフト導入の要望が出てくるなど、仕事に対するモチベーションも向上しています。

 

 

<未来へ向けて~渡邉社長からの言葉~>

今回の取組みによって、自社ブランド事業という当社の新たな挑戦に、ロボットを活用した生産という強力な武器を手に入れることができました。技術力×ロボットを活用した生産力を当社の強みとして活かし、さらに多くのお客様に喜んで頂ける製品づくりを継続しています。

 

現在、当社では近年の贈答品ニーズの高まりに着目し、自社ECサイトでギフト商品の展開にも力を入れています。結婚式や誕生日、新築祝い等のプレゼントとして、新たにテーマ別のギフトラッピング・のし・袋を製作し、名入れサービスをすることで付加価値を付けた商品としての展開を行っています。 

 

さらに、今後は、関市ブランドと他メーカー製品のコラボレーションを行い、自社ブランド「和 NAGOMI」を横展開していくと共に、ステーキナイフやプロ仕様の「和 NAGOMI」などをシリーズ化させていくことで飲食市場への縦展開も進めていきます。

 

将来的には海外通販へも挑戦することも考えており、自社ブランドのグローバル展開も視野に入れながらさらなる挑戦を続けていきます。

 

“本当に良いものを。ずっとつき合えるものを。”

これからも刃物の町、岐阜県関市の職人が一つひとつ丁寧に仕上げる包丁を末永くご愛用頂けますと幸いです。

 

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