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周りの幸せを大切に。世の中に貢献していきたい(㈱栗山熱処理)

皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。

 

今回のイチオシ事例は、
金属の熱処理加工を通じて取引先にメリットをもたらす
「株式会社栗山熱処理」さんにお伺いしてきました。

 

先代から引き継いだ想いを大切にしながら、
600社を超える取引先から選ばれ続ける企業へと成長した
栗山熱処理の取組みからは、学びがたくさんあると思います。

 

苦しい創業期を支えた姿勢と精神

 

平成2年7月 現在の所在地である岐阜市にて創業。
創業から現在に至るまで、一貫して金属の熱処理加工業を営んできました。

 

創業時はバブル期ということもあり、順風満帆な船出となることを期待していましたが、
創業してすぐにバブルは崩壊し、非常に厳しい船出となりました。

 

苦しい創業期を乗り越えるために取り組んだのは、
飛び込み営業と電話営業。

 

当時はインターネットも発達していなかったため、周辺の企業を全て回るような勢いで
飛び込み営業を繰り返しながら、家族は事務所で電話帳を持ってひたすら電話を掛ける毎日。

 

こういった活動により、徐々に認知が広がっていき、徐々に取引先が増えていったのです。

 

苦しい時期も一貫していたのは、「頼まれたものは絶対に断らない」という姿勢と、「損して得を取れ」という精神でした。
この姿勢や精神が業界内で受け入れられたことで、今では600社を超える取引先から熱処理の依頼を受けるまでに至っています。

 

直面した課題と挑戦

 

創業期の危機を乗り越え、順調に取引先を増やし続けていた当社でしたが、大きな課題に直面していました。多くのお客様がリピートしてくれるきっかけとなっていたのは、当社の強みでもあった「歪みの少ない熱処理」です。

当社は創業以前から培ってきた技術を活かし、他社と比較しても熱処理後の歪みを最小限に抑える加工を得意としていたのです。

 

とはいえ、歪みが全くないというわけではありません。製品出荷前には一つ一つ確認し、手作業で歪みの修正処理を施していました。

 

この作業は、熟練の技術と経験に基づく「勘」が求められるものであり、誰でもできるというものではありません。現社長を含め、家族総出で休日を返上して作業を行っていたのです。

 

『このままでは、新たなお客様を増やすことができなくなる。』

 

こういった状況に危機感を感じたことがきっかけとなり、歪み取りの工程を改善し、量産対応が可能な体制づくりに挑戦することを決めました。

 

量産可能な体制を実現するために

 

歪み取り工程は、これまでほぼ全てを手作業にて行ってきた工程であり、その技術は職人の勘を頼っていたため、この工程を自動化する設備や技術を保有していませんでした。そのため、歪み取り工程の改善による量産可能な体制づくりを実現するため、課題の洗い出しを行いました。

 

その結果、生産プロセスを改善し、工程の改善を実現するためには、以下の課題の解消が必要となりました。

 

【クリアすべき課題】
◆目視作業による品質バラツキの改善
◆測定器を当てられない複雑形状への対応
◆リードタイムの短縮

 

手作業による歪み取り工程では、作業者の技術に依存にしていたため、完成品の品質にバラつきが発生していただけでなく、作業時間が膨大となることによるコスト増加や納期の中長期化が発生していました。

 

当社が生産プロセスの改善を行い、既存のお客様だけでなくこれから取引を開始するお客様の要求にも応えていくためには、これらの課題をクリアしなければならないため、平成29年度補正ものづくり補助金を活用して独自仕様の自動歪取機を導入しました。

 

☛モーターシャフト自動歪取機「ASP32CD-100CA」☚

歪み取り工程の自動化を実現する自動歪取機。事前に登録した加工データを読み出して加工を行うことができるプログラムNo入力機能に加え、様々な形状の測定が可能なインダクトゲージを搭載している。測定データを出力可能なデータロガーも搭載しているため、品質の安定化に貢献する。

 

また、今回の取組みでは、誰でも作業を行うことができる体制を構築するためのプロジェクトメンバーを立上げ、作業標準マニュアルを作成すると同時に、設備使用に関する研修を実施しました。

 

取組みの成果

 

自動歪取機を導入したことにより、作業の大幅な簡素化を実現できました。作業者によってバラツキのあった製品品質の安定化を実現出来たことはもちろん、この工程の担当者として新たに障害を抱える人財やシルバー人財を登用することができ、会社として地域社会に貢献することにも繋がりました。

 

また、シャフト類に求められる歪み精度が1/10mmであるのに対して、当社の精度は最大で2/100mmまで対応可能となり、もともとの強みであった「歪みの少ない加工」に磨きをかけることができました。

 

さらに、これまでシャフト1,000本あたり4日以上を要していたリードタイムは、2日弱まで短縮することができました。これにより、短納期化の実現と量産体制の構築が達成されました。ありがたいことに、コロナウイルスの影響で需要が増加したDIY市場関連商品の大量受注を受けることに繋がり、売上は右肩上がりで増加しています。

 

設備を導入したことで、当初抱えていた各課題がすべて解消され、歪み取り工程の改善による量産体制の構築が実現しました。
この成果を生かし、より多くのお客様の要望に100%応えることで、お客様と共に成長していきます。

 

これからの栗山熱処理

 

当社は4年前に大きなターニングポイントを経験しています。現代表取締役の栗山ひとみ氏のご主人にあたる先代の栗山盛伸氏が大病を患い、事業の売却も視野に入れて検討していたのです。

 

何度も家族での会議を繰り返し、家族の危機を救うべく当社に籍を移したのが、現在の専務取締役であり現代表取締役の娘でもある栗山美穂氏でした。

 

家業とはいえ、仕事として本腰を入れて関わるのは初めての業界です。丸1年をかけて、盛伸氏から創業からの全てを引き継ぎ、必死に勉強して会社の変革に取り組んでいきました。

 

専務取締役として美穂氏が籍を移してから1年。
ようやく、業界関係者や取引先から認知され、認めてもらえるようになった頃、父の盛伸氏は他界されました。

 

「頼まれたものは絶対に断らない」
「損して得を採れ」
「現場第一主義」
「まずは自分から動く」

 

それから3年。盛伸氏から学んだこれらの言葉を胸に、3代目代表取締役である母と共に、社内の改革を推し進めてきたのです。

 

ホームページの改修、キッチンカーサービスの導入、産休・育休・介護休暇等の制度構築など、数多くの取組みを行う中でも、従業員や地域、取引先など関わる皆様の幸せを大切にするという企業文化づくりを念頭に置いてきました。

 

これらの取り組みの結果、女性従業員が増え、周辺住宅からの騒音へのクレームが0となり、従業員は大きく明るい声で笑顔で挨拶するように変わるなど、会社に変化が生まれました。

 

お客様からも、「明るくて良い会社」だというお褒めの言葉を頂けるようになっています。

 

最後に栗山ひとみ氏と栗山美穂氏よりメッセージを頂きました。

 

『良い製品づくりを通じて、世の中や社会に貢献していきたい。』

 

これからは、ますます厳しい品質基準を要求されるようになっていきます。お客様の要望に100%お答えすることはもちろん、『栗山さんのところに熱処理を頼むとウチが助かる』と言って頂けるように、データを活用した一歩先行く熱処理企業を目指して、社員一同これからも邁進していきます。

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