イチオシ事例
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温故知新の精神で地域と共に発展していきたい
今回のイチオシ事例は
皆さんも一度は貼ったことがある湿布薬のルーツであり、
80年以上の歴史をもつ『下呂膏』の製造販売を行っている
「株式会社奥田又右衛門膏本舗」さんです。
皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。
今月は、古くは江戸末期に起源をもつ「下呂膏」という商品を守りつつ、その技術力を生かして時代にニーズに合わせた商品を生み出している事例を紹介させて頂きます。
全国規模の知名度を持つ主力製品を持ちながら、温故知新の精神を生かして新製品開発に取り組み続けるその姿勢から、商品開発のヒントを見つけてみて下さい。
株式会社奥田又右衛門膏本舗の歴史
昭和9年8月 五世奥田又右衛門らにより株式会社奥田又右衛門膏本舗の前身となる六合社を創業、接骨医であった五世奥田又右衛門が門外不出の秘薬を多くの患者から懇望されたことをきっかけに、「東上田膏」を膏薬として広めたのが始まりです。膏薬とは古くからある貼り薬で、湿布薬ができる以前は貼り薬といえば膏薬しかありませんでした。
昭和20年戦時統制令を受け、岐阜県製薬(現大洋薬品工業)に統合されますが、のちに分割され、昭和47年に現在の株式会社奥田又右衛門膏本舗が設立されました。
商品名の「東上田膏」は昭和25年に「下呂膏」に改称。創業時から製法を変えずに現代まで繋いできた下呂膏は非常に多くの皆様から選んで頂き、これまで累計3億枚を販売してきました。
下呂膏という強力な商品を持つ当社ですが、苦労がなかったわけではありません。当社の下呂膏が抱える“貼跡が残る”という課題を解消した「湿布薬」が世間に広まったことで、特に若い世代や女性から選ばれにくくなってしまったのです。
これを機に、時代の変化に対応した新商品を開発する必要性を感じ、下呂膏製造で培った技術を生かした医薬部外品の開発に乗り出しました。
ありがたいことに、新規で開発した商品の一つである「下呂膏物語なごみしーと」は「OMOTENASHI Selection」で2年連続金賞を受賞することができました。
医薬部外品の開発によって、危機を乗り越えることができた当社ですが、現在は、医薬部外品のみならず、地元特産品に特化した化粧品を開発・販売し、清流の国 飛騨路下呂温泉の魅力と伝統技術を国内外への発信を行っています。
危機を乗り越える「医薬部外品」への挑戦
昨今のドラッグストアの台頭によって、当社の主力商品である下呂膏の販売量は伸びた一方で、販売単価が下落し利益率が下落しました。また、以前より取引のあった小規模薬局の廃業が相次ぐなど、当社を取り巻く環境は厳しいものとなっていました。
このような状況を乗り越えるために新商品を開発・販売していく必要性を感じてはいましたが、医薬品の開発には多くの時間と資金が必要であり、必ず開発が成功するという保証もありません。
そこで、当社が選択したのは、当社の技術を生かすことができ、開発失敗というリスクも比較的抑えることができる医薬部外品の開発でした。
最初に開発に取り組んだのは「温泉水を使用した化粧水」と「温泉水が入った玉石けん」。
これらは、取引のあった土産店や観光客から寄せられていた「下呂温泉の温泉水を使用した商品が欲しい」という声から着想を得て、開発に取り組んだものでした。
医薬部外品製造を実現するために
当社はこれまで下呂膏の製造販売のみを行ってきたため、医薬部外品を製造するための機械設備を保有していませんでした。商品アイデアと商品化技術を有する当社が医薬部外品製造を実現するためには、いくつかの課題をクリアする必要がありました。
【クリアすべき課題】
- 化粧品等の社内生産体制の構築
- 化粧品原材料の真空下での混合・乳化
- 気泡を入れない透明ラベル貼付け
- ボトル状製品の開封・改ざん防止
医薬部外品は、使用して頂くお客様の肌に直接触れるものであることから、使用する原料を厳選する必要があることはもちろん、厳格な品質管理が求められます。
当社が開発に取り組んだ「温泉水を使用した化粧水」と「温泉水が入った玉石けん」の社内生産体制を構築し、商品化していくためには、これらの課題をクリアしなければならないため、平成28年度補正ものづくり補助金を活用して3つの設備を導入しました。
▶真空撹拌機「アヂホモミクサー」◀
恒温水槽と真空ポンプを本体に内蔵、設置スペースをとらないコンパクトな真空撹拌機。化粧品原料を真空状態で温度管理を徹底しながら均質乳化することが可能。
▶ラベラ- LB-140◀
手作業では難しい円柱形状ボトルの側面へ、気泡を入れずに短時間でのラベル貼付けが実施可能。ボタンを押すだけで貼付け作業ができるため、操作性が非常に高い。
▶シュリンク包装機 VS-300◀
化粧品ボトルおよび化粧品箱に、改ざん防止に適合するシュリンク包装を施すための設備。デジタル温度調節器の採用により、炉内の温度が常に安定しており、仕上がり品質が高い。
取組の成果
真空撹拌機を導入したことにより、玉石けんについてはこれまで外注してきた先と同等レベルの撹拌時間・温度管理が実現でき、既存品と同等の品質管理基準を満たすことができました。また、化粧水については原料の撹拌時間を従来の10分から5分に短縮することに成功し、品質についても社内品質基準を満たすことができました。
そして、ラベラーの導入によりこれまで気泡が問題となり、使用することができなかった透明ラベルの貼付けが可能となり、高級感の演出による商品価値の向上が実現しました。
さらに、シュリンク包装機の導入に関して、化粧品ボトルおよび化粧品箱へのシュリンク包装が可能となり、開封・改ざん防止が可能となりました。
これら3つの設備を導入したことで、当初抱えていた各課題がすべて解消され、医薬部外品を完全に内製化した小ロット生産体制が実現しました。
現在、奥田又右衛門膏本舗のオンラインショップを構築し、本事業への取組みによって生産体制を構築した「楊貴肌 玉せっけん」や「薬用化粧水 楊貴肌」を販売しており、全国のお客様から注文を頂けるようになっています。
また、生産の内製化が実現できたことで、既存の取引先であった小売店や卸売業者からの要望を直接商品パッケージ等に反映することが可能となりました。これを生かし、販売業者の名前を入れたOEM商品やノベルティ製作に事業の幅を広げています。
奥田又右衛門膏本舗のこれから
今回の取り組みによって、医薬部外品や非医薬品の社内生産体制を構築することができました。商品の企画から開発・生産までを社内で一貫して対応できる状態となったことで、事業のさらなる発展を目指すことはもちろんですが、創業時からお世話になっている下呂地域をPRする商品づくりに力を入れています。
すでに、地元特産品に特化した複数の医薬部外品や化粧品等を開発・販売し、清流の国 飛騨路下呂温泉の魅力と伝統技術を国内外への発信を行っています。
『温故知新』
日向社長から、
「これからも新たなPR商品を作り続け、地元の活性化と共に多くの皆様に当社の商品を届けていきます。」
と決意をお話し頂きました。
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