イチオシ事例
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確かな技術と高度な設備でお客様のイメージを形に。(㈱水谷木工所)
今回のイチオシ事例は
昭和22年に婚礼家具専門の木工家具メーカーとして
創業して以来、『木材加工』に携わって75年になる『株式会社水谷木工』さんです。
皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。
今回は、創業から70年以上に亘って培われてきた確かな技術に
業界でも珍しい高度で特殊な設備を掛け合わせることで、
お客様のイメージを形にしている木工家具加工企業を紹介させて頂きます。
株式会社水谷木工について
昭和22年 婚礼家具専門メーカーとして創業
昭和28年 『合資会社水谷木工』として法人化
昭和46年 工場が手狭となったことをきっかけに現在の各務原市各務西町へ移転
昭和60年 業務用注文家具の製造をスタート
平成20年 『株式会社水谷木工』へ組織を変更
平成21年 代表取締役に水谷雄一氏が就任
平成30年 大型モックアップの製造をスタート
平成30年 オリジナルブランドの木工品製造販売を開始
令和3年 小型船舶向け木工製品の製造をスタート
当社は、75年前に当時木工屋としては主流であった婚礼家具の専門メーカーとして創業しました。
その後、しばらくは婚礼家具のみを扱ってきましたが、時代の変化と共に婚礼家具の需要が減少する中で、技術を活かした新たな道を模索して、業務用注文家具のOEM製造を行う会社へと転身。さらに、代表取締役の変更以降は、さらなる進化と成長を目指して様々な挑戦を続けてきました。
『木工家具のことなら当社に任せてほしい』
こんな想いをもって、木工用機械はもちろん塗装設備一式を取り揃え、お客様の期待に応える製品を1個単位から量産対応までワンストップで生産しています。
当社がこれまで事業を継続してくることが出来たのは、培ってきた技術力をどう活かすのかということを常に考え続けてきたことに加えて、多くの取引先企業の支えがあったことが大きいと感じています。
このことからも『当社はお客様の代わりに、モノを作っている』という自覚をもって、お客さんの要望に可能な限り寄り添うことが一番大切だと考えています。
また、事業を継続していく上で欠かせないのは『人材』であると考えており、人材の採用や育成には非常に力を入れています。その甲斐もあって、木工加工業という人気がない業界でありながら、近隣の高校を中心に毎年新卒社員の採用が出来ています。
岐阜県立岐阜工業高校のデザイン工学科
イメージデザインコースの生徒さん作成の会社PR動画
世界的な市場の拡大を見据えて
2018年当初。
当社の売上の9割を占めていたのは飲食店やアパレル店舗向けの『店舗用什器』でした。
一部の製品や取引先に対する依存度が高い状態であることに不安を感じ、新たな業界や製品を模索していたところ、当時新規での取引を開始したばかりであったT工業より「航空業界向け大型内装モックアップ」の増産について打診がありました。
その内容は、2028年には世界の航空旅客が2倍以上に増加するという予測に加え、LCCの台頭や機体の老朽化に伴う代替需要の増加を背景に、航空機大手メーカーは航空機の増産を計画しており、最新の機体内部を等身大サイズで模型化するモックアップ生産の依頼が増加傾向にあるので、当社に任せたいというもの。
新たな事業の柱を模索していた当社にとって、願っても無い打診ではありましたが、一つ大きな課題もありました。
それは、
大型モックアップの製造はサイズが大きく、少なくとも100種類以上の構成部品の製作が必要となるため、1基納めるまでに半年近くかかる状態であったこと。
当時の生産能力では年間2基が限界でした。しかし、T工業からの依頼は4基/年の生産であり当社の生産能力を2倍にあげる必要があったのです。
それでも、当社の技術力を認めて依頼をして頂いたT工業に応えたいと覚悟を決めて、生産能力を2倍にあげるために、社内の生産体制を見直すという挑戦をすることとなりました。
目指したのは“2倍以上の生産性”
当社はこれまで同業他社がやりたがらないような仕事にも対応し、お客様のニーズに100%応える製品を提供することでお客様から信用を獲得して成長してきました。前述のとおり、当社の技術力を見込んで航空業界向け大型モックアップの生産を依頼して頂いたT工業からの依頼に応えるためには“2倍以上の生産性”を実現する生産体制の構築が必要でした。これを実現するために以下の課題をクリアする必要がありました。
【手切り裁断脱却における課題】
◆金属製品向け図面と同等精度での加工
◆厚さ100mm以上の木材板の加工
◆最小人数での生産体制の確立
航空機の内装は、最終的には金属や樹脂を使用して製作されることになります。そのため、内装部品の図面はその全てが金属や樹脂で製作することを前提とした精度で作られており、木工業界で求められる精度をはるかに上回る精度で複雑な形状を加工する必要がありました。
また、売上の9割を店舗向け什器の製造で賄っていたため、当社のスタッフや設備は店舗向け什器の生産に特化している状態でした。
店舗向け什器の生産量を維持しつつ、航空業界向け大型モックアップを現状の2倍生産するためには、専用設備の導入に加えて、最小人数での生産体制の確立が必須でした。
以上の課題を解消しつつ、航空業界向けモックアップの生産に対応するため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。
→CNCマシニングセンタ EVOLUTION7405 4mat←
長さの制限なく加工が可能であり、最大長さ1,500mmまではクランプ付け替え不要。また、パネル表面だけでなく、パネル全外周の加工も可能で残加工が不要となるため、省人化・生産性向上に大いに貢献。
取組の成果
今回の取組みで、航空業界向けモックアップ製作専用機としてCNCマシニングセンタを導入したことで、もともと当社の熟練スタッフが手作業で実施していた工程を自動化し、製作時間を大幅に短縮することに成功しました。
導入した設備の加工能力に、当社独自の加工技術を組み合わせたことで、製作図面と比較して±5mm以内の精度で加工することが可能となりました。
また、航空業界向けモックアップの製作時間については、従来の製作時間から50%の短縮に成功したため、T工業より打診のあった『2倍の生産』にも対応することが出来る見通しが立ちました。
今回の取組みによって、航空業界向けモックアップの生産に本格的に参入するための各種課題が全て解消され、目的としていた2倍以上の生産性を実現することが達成できました。
これにより、T工業の要望に100%応えることで、当社としても新たな事業の柱を獲得することに成功しました。
現在、コロナウイルスの影響によって航空業界は大きな被害を受けています。この影響によって、当初想定していた年間4基という受注量を獲得することが出来ていません。
航空業界がいつ回復しても対応できるように生産体制を維持していくことはもちろんですが、待ちの姿勢ではなく新たな挑戦も継続していく必要性を感じています。
水谷木工のこれから
代表取締役 水谷 雄一氏
今回の取り組みによって、主要事業である店舗向け什器の生産量を落とすことなく、新たな製品を少数精鋭で生産する体制を構築することが出来ました。
技術力と最新設備を掛け合わせることで、木製品を金属製品や樹脂製品と同等レベルの精度で仕上げるという、他社には真似することができない強みを獲得することが出来ました。この強みを活かすことで、様々な業界のお客様の要望に応えることが出来る企業へと成長できたと実感しています。
最近では、この事業を通じて培われた技術を活用した新たな挑戦として、小型船舶向けに木製部品を供給する事業もスタートさせました。
また、継続的に行っていることとして、大型モックアップ事業と同時期にスタートした当社オリジナルブランドの情報や当社のものづくりへのこだわりをより多くのお客様に知って頂くため、専用ホームページや各種SNS、自社ブログを活用してPRを実施しています。
さらに、企業に対する若い世代の期待に応えるため、働きやすい職場づくりのために様々な取組みを行っています。
当社は、技術力でお客様の期待に応え続けてきたことで成長してきた企業であるため、特に重視しているのは、従業員の教育です。
『自分で考え、自分なりのやり方を見つけていく。』
当社は木工業界に興味を持ってくれた若手に技術とマインドを身に付け、自分で稼ぐ力を身に付けてほしいという想いを持っています。
この想いから、加工の一部を担当するだけではなく『自分で一つの製品を最後まで仕上げた』という達成感と任せてもらえるという喜びを感じられる仕事を大切にしています。
木工業界では珍しく、外部研修を会社負担で受講できる制度を導入したことや、定期的に社内勉強会を開催して希望者が学べる環境を整えています。
取組みを通じて獲得した各種認証(一例)
これらの取組みに加え、岐阜県内の高校と連携し、インターンの受け入れにも積極的に協力し、各務原市では初めてとなる『高校生が製作する企業のPR動画』の製作も行いました。
この動画製作は、学生の視点で会社を調査し、同じ目線で同世代の仲間たちに届けるというものであり、当社での取り組みが好評となって、今では高校や行政主導の下で各務原市内の様々な企業と高校の連携を生み出しています。
お客様の期待に応え、
地域と共に成長を続ける企業であり続ける。
当社はこれからもこの姿勢を貫いて、会社一丸となって挑戦を続けていきます。
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