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お客様の増やし方
ものづくり支援専門員の石井です。
前回、売上を上げるための方程式をご紹介しました。
売上=客数×客単価×購入頻度
売上を上げるためには、売上を構成している3つの要素それぞれを上げる事が必要。
例えば、構成要素の一つ一つを5%上げれば、売上は15%アップします。
客数(105%)×客単価(105%)×購入頻度(105%)
105%×105%×105%=115.76%
しかし、実際の現場では、なかなかこの方程式通りに事は運びません。
そこで、今回は、「客数を増やす」に焦点を当てていきたいと思います。
「お客様」は4階層
お客様は、大きく4階層に分ける事ができます。
一つ一つご説明しますね。
<潜在顧客>
この層は、まだ、貴社の事を認識していないお客様です。
そういう意味では、まだ、「お客様」とは言えないかもしれません。
<見込み顧客>
この層は、貴社の事は知っていて、貴社の商品・サービスを一度は検討した事があるお客様です。
しかし、残念ながら一度も購入にいたっていません。
<新規顧客>
1回だけ、貴社の商品・サービスを購入した事があるお客様です。
この層のお客様に、再度、ご購入頂く為のアプローチが必要となってきます。
<リピーター>
貴社の商品・サービスを複数回にわたってご購入頂いたお客様です。
この層のお客様には、ご購入の頻度を上げ、より付加価値の高い高額商品・サービスをご購入頂く為のアプローチが必要となってきます。
(注)ご購入は一回限りの商品・サービスもあります。
例えば、住宅等の高額商品です。この場合は、ご購入頂いたお客様に新たなお客様をご紹介頂くための施策が必要となります。
今回は、この4階層のお客様の中で、「潜在顧客」及び「見込み顧客」に対するアプローチについてお話ししていきます。
潜在顧客
あなたの会社のお客様は、どういう方でしょうか。
<ケース1:清酒の製造メーカー>
質問:この会社のお客様はどういう方でしょうか?
清酒は、アルコール飲料ですから、日本の法律上、少なくとも20歳以上の方がお客様ですよね。
その中で、今、清酒を飲まれる方にアプローチをしようと思ったら、高年齢層になるでしょう。
あるいは、これから自社の商品を飲んで頂くお客様を狙っていくのなら、20代から30代を狙っていく必要があるでしょう。
しかし、その「20歳以上のお客様」にあなたの商品を届ける為には、「販売店」に商品を置いてもらわなければなりませんよね。
ここでもう一度、最初の質問です。
質問:この会社のお客様はどういう方でしょうか?
この場合、「酒販店」がお客様となります。
もちろん、最終消費者(エンドユーザー)であるお客様へのアプローチも必要です。
が、商品を流通させない事には、最終消費者の手元に届きません。
なので、ここでの「潜在顧客」は、「アルコール飲料を取り扱っている小売店」となります。
<ケース2:金属加工業>
「金属加工業」と一口に言っても範囲が広いので、ここでは、「工作機械メーカー向け部品加工」の会社という前提でお話しします。
質問:この企業のお客様はどういう方でしょうか?
当然、「工作機械メーカーの購買担当者」という声がかえってくると思います。
本当にそうでしょうか?
もちろん、会社にもよりますし、同じ会社の中でも人によって違ったり、部署によって違ったりしますが・・・・・
前回のラーニング記事で、私自身が「第一線の営業マン」であった事をご説明しました。
その時の私の営業先は、「生産技術」の担当者や「設備保全」の方々でした。
担当の方に、お困り事やお悩み事等を伺い、その解決策を持っていき、それぞれの担当から購買に「導入したい!」という書類を上げてもらうのです。
もちろん、最終的には購買担当者とのネゴシエーションがありますから、購買とのパイプも太くしておかなければいけませんが、営業ターゲットとしてはより製造現場に近い方々でした。
大きな企業ほどそうなのですが、購買部署は、社内の各部署から上がってくる「買って下さい!」要求に基づいて購買計画を立てているんですね。
もう一度、最初の質問です。
質問:この会社のお客様はどういう方でしょうか?
この場合、「工作機械の設計担当もしくは製造担当」がお客様となります。
(様々なケースがありますので、他の答えもあり得ます)
購買部署は、現場から出てくる要求仕様を満たし、なおかつ「より安く」「より短納期」を重要視します。
ここで、「現場から出てくる要求仕様」にあなたの会社でしか実現しない「なにか」が入っていたらどうでしょうか?
部品単体では高単価になってしまうけど、工作機械全体でみればなんらかの付加価値があがるのであれば、設計担当は、貴社が持つ「なにか」を採用しますよね。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
わかります。
その「なにか」があれば苦労しないよ。
そうですよね。
おっしゃる通りです。
しかし。。。
他社との差別化をしていかない事には、いつまで経っても「価格競争」「短納期競争」に巻き込まれたままです。
ものづくり補助金て、本来、そういう事(他者との差別化)を実現させるためにあるのではないか、と思います。
潜在顧客。
まだ、貴社の事を知らないお客様です。
なんとなくイメージできましたでしょうか?
見込み顧客
潜在顧客を見込み顧客に変えていかなければいけません。
見込み顧客とは、貴社の事を認識し一度でも貴社の商品・サービスを購入する事を検討した方です。
<ケース1:清酒の製造メーカー>
前項で潜在顧客は、「アルコール飲料を取り扱っている小売店」とご説明しました。
しかし、この定義では超大手流通のセブン&アイやイオン等から町の酒販店まで、範囲がとても広くなってきてしまいます。
「セブンイレブン」に取り扱ってもらうのを目指すのと、「町の酒販店」に取り扱ってもらうのを目指すのでは、戦略が全く違ってきます。
なので、ここでは「町の酒販店(小規模酒販店)」をターゲットとします。
「獺祭(だっさい)」というお酒はご存知でしょうか?
ここ数年で急激に売上を伸ばしてきた山口県の蔵元(旭酒造)が醸すお酒のことです。
私は、前職でアルコール業界におりました関係で、この蔵元の事をよく知っております。
今のように、全国的(世界中と言った方が良いでしょうか)に有名になる前に、獺祭の蔵元にもお邪魔したことがあります。
当時は、年商1億にも満たないくらいの規模だったと思います。社員は10人もいらっしゃらなかったはずです。
それが、今では137億6,600万円(2019年9月期)従業員235名の規模に膨れ上がりました。
右肩下がりの日本酒市場の中にあって、ここまで売上を伸ばす事ができたのは奇跡としかいいようがありません。
「獺祭」は、どうやって売上を伸ばしたのか?
旭酒造の桜井会長とは、以前、一緒にお仕事をしていた事があります。
また、蔵にお邪魔した時にもいろいろなお話しを伺いました。
その中で、獺祭が成功した要因の一つとして私が確信している事があります。
それは。。。
地道な営業活動
これに尽きると思います。
獺祭は、今でこそ酒問屋を介さずに商品を流通させていますが、以前は、酒問屋経由での流通が中心でした。
その頃に、桜井さんがやられていた事は、
酒販店訪問
です。
獺祭を最終消費者に届けるには、酒販店が売りたくなる商品でないといけません。
その為に、獺祭に関する営業ツールを桜井さん自ら作成し、実際に試飲してもらためのサンプル商品を持って、一軒一軒、酒販店を回られていました。
私が桜井さんと知り合った当時は、バブルが弾け、地酒が今ほどクローズアップされた時代ではありませんでした。
しかし、酒販店にとって蔵元の当主自ら足を運び、お酒へのこだわりと商品に関する豊富な情報を得ることができ、なおかつ、流通マージンが厚く設定されている商品(ここ、重要)は、「売りたい!」と思わせる商品であったに違いありません。
この話しを伺い、実際に営業ツールも拝見したその時、私は、「これは売れる」と思っていました。(年商100億を超えるとは想像してませんでしたが)
獺祭は、足で稼ぐ営業で潜在顧客を見込顧客に変えていったのです。
<ケース2:金属加工業>
前項で潜在顧客は、「工作機械の設計担当もしくは製造担当」がお客様とご説明しました。
(様々なケースがありますので、他の答えもあり得ます)
既存の顧客であれば、設計担当や製造担当に行きつくのはそれほど大変ではありません。
問題は、「新規開拓」の場合です。
ここで出てくるのが、
・ 展示会
・ HPからの問合せ
・ ビジネスマッチング
・ 飛び込み営業(!?)
等々です。
顧客ターゲットを「設計担当」と決めた場合。
顧客の商品(この場合、工作機械)に貴社が機械加工した部品がどういった付加価値を生むのか。
どういうメリットが生まれるのか。
「製造担当」と決めた場合。
貴社が機械加工した部品が、顧客の製造工程にどういう良い影響を与えるのか。
どういうメリットが生まれるのか。
この良い影響(メリット)を明確にする必要があります。
単純に、
こういう設備があって、加工可能な素材はコレで、加工可能な大きさはコウで、計測機器がコレです。
これだけでは、貴社の業績に貢献できるような見込み顧客にする事はできないと思います。
(もちろん、難しいということはわかっております)
金属加工業の会社が、潜在顧客を見込み顧客に変えていくためには、貴社に加工を依頼する事によって、顧客が手にする良い影響(メリット)を明確にすること。
例えば、
弊社の加工技術で従来の部品よりさらに〇〇であることを実現しました。
この部品を採用頂ければ、貴社商品の〇〇を飛躍的に伸ばせるはずです。
コストは高くなりますが、是非一度テストしてみてください。
あるいは、
弊社の加工技術であれば、従来3点の部品を組み合わせて構築されていた部品を1点ものにすることができます。
この部品をご採用頂ければ、貴社の製造工数を削減することができるはずです。
是非一度、テストしてみてください。
というようなセールストークができたらどうでしょうか?
ホームページ上に、貴社の技術で実現した実績を掲載し、展示会で陳列して、一人でも多くの潜在顧客に貴社の情報が届くような施策を実行することが必要だと思います。
(顧客の秘密に関わることは公にすることはできませんので、そこらへんの工夫は必要ですが)
今回のまとめ
最初は、「集客方法」について記事にしていこうと考えていたのですが、書き進めるうちにもっと重要なことがある、と考え直し、少し違う方向に進んでしまっているかもしれません。
ケース1とケース2。
アルコール飲料と、金属加工という全く違う業界の集客方法についてご説明してきました。
両方に共通して言えることは。
顧客のメリットになる事を明確にして、
その情報が届く施策を繰り返す。
これに尽きると思います。
顧客にとっての最大のメリットは、
・ 要求する仕様を満足し
・ 可能な限り安いコストで
・ 可能な限り短納期で
納品してもらうことです。
しかし、このことだけに対応していたら、どんな会社でも疲弊していくだけです。
貴社の特徴
貴社とお取引することによって、顧客が手にすることができるメリットを明確にしてください。
「顧客のメリット」と言っても、そんなこと簡単に探せる訳ではないこともわかっています。
しかし、常にそういうことを考える必要もあるのではないでしょうか。
今、多くの企業が困難な状況下にあり、日々、ご苦労をされていると思います。
しかし、明けない夜はありません。
コロナ渦も、やがては収束します。
大変な時代である今こそ、次代に向けた戦略を立てて頂ければと思います。
営業関係で、何かお困り事等がありましたら、お気軽にお問合せ下さい。