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中小企業のM&A(2) M&Aは経営戦略から
支援専門員の矢橋 敬(やばし たかし)です。
月1回・全6回シリーズで、私が過去に金融機関(銀行・証券)、監査法人系コンサルティング
会社、外資系投資ファンドなどに勤務して経験してきたM&Aや事業再生に関する業務経験
に基づいて、
「中小企業のM&A」について思うところを連載しています。
第2回目の今回は、M&Aの戦略の基本についてです。
このシリーズは、積極的に事業の成長や経営資源の確保を進めている事業会社の経営者の皆様を
主な読者として想定しているため、買手側に軸足を置いて、戦略的なことを先に、技術的なことは
後に書いていきます。
M&Aの戦略の基本
M&Aは、第1回で書いた通り、
・経営権の譲渡/譲受を目的とした企業の株式や事業の売買ならびに業務提携を目的とした出資等
であり、
・売手側にとっては、経営からの引退や投資回収のための手段である一方、
・買手側にとっては、事業を行うために一体的に組織/管理されている経営資源(顧客や取引先
などの基盤、事業ノウハウ、人材、工場・店舗・機械装置などの設備、特許や商標やブランド
などの知的資産など)をそのまままるごと購入するための手段
といえます。
では、事業会社による買収はM&A市場の中でどのように行うと良いのでしょうか?
事業会社による買収、
つまり、事業の成長や経営資源の確保を目的とするM&Aは、もうかる企業/事業であれば
何でも買う、ということはなく、
自社の目的や目標を実現したり実現し続けるために必要な経営資源は何か? というところ
から出発すると思います。
わざわざこんなことを書くのは、M&Aの買手は業種/事業内容以外の部分も多様性に富んで
いて、背景、動機、価値観、行動特性などに違いがあり、そこから出発しない買手もいるから
です。
ざっとそれを整理すると次の図表の通りだと考えられます。
自社に必要な経営資源
は、M&Aでなければ、設備投資、新規雇用、人材教育、研究開発、事業企画への投資をして、
実際の事業運営の中で試行錯誤しながら事業ノウハウを築いていくことによって獲得するもの
であり、経営戦略に基づくものでしょう。
M&Aは、これらを、すでに事業を行うために一体的に組織/管理されている状態で買うこと
に過ぎない、ともいえます。
したがって、M&Aは経営戦略レベルから考える必要があります。
経営戦略
については様々な定義がありますが、
競争環境の中で持続的に生き残って成長していくために、実現したい中長期的な目的・目標
のためにどのようにして
外部環境変化への適応と内部経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の最適な調達と配分
をしていくかということ、ともいえます。
経営者の方であれば、そのようなことは日々微修正しつつ直感的に思い描いている
と思いますが、図式化/見える化するとこんな感じだと考えられます。
1.外部環境の把握
自社を取りまく、仕入先、協力業者、顧客、競合、業界構造などがどのような状況と
方向性にあるか、ということがまず気になるところです。
2.外部環境と内部環境の分析と自社の方向性
では一方で、
自社がどういう状況にあって、外部環境にどう対応していて、どうすると良いのか、
ということが次に気になってくることでしょう。
図表の<>内はそれぞれの場合のM&Aによる対応の例です。
3.顧客と製商品/サービスと自社の方向性
自社がどうすると良いのかということを、
どのような顧客に、どのような製商品/サービスを売っていくのか、という二つの軸で整理
すると、さらに自社の方向性が見えてきて、
そのためにはどのような経営資源や施策が必要なのかが分かってきます。
図表の<>内はそれぞれの場合のM&Aによる対応の例です。
M&Aはこのような過程を経て戦略的に検討されるべきものだと思いますが、今回は少し抽象的
だったかもしれません。
次回「M&A戦略 事例編」にて、具体的にどのようなM&Aがどのような戦略に基づいて展開
されているのか、事例を使ってご紹介する予定です。
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