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中小企業のM&A(3) M&Aの戦略

支援専門員の矢橋 敬(やばし たかし)です。

 

 月1回・全6回シリーズで、私が過去に金融機関(銀行・証券)、監査法人系コンサルティング

会社、外資系投資ファンドなどに勤務して経験してきたM&Aや事業再生に関する業務経験

に基づいて、「中小企業のM&A」について思うところを連載しています。

 

 このシリーズは、積極的に事業の成長や経営資源の確保を進めている事業会社の経営者の皆様を

主な読者として想定しているため、買手側に軸足を置いて、戦略的なことを先に、技術的なことは

後に書きます。

 

 第3回目の今回は、M&Aの戦略について事例に即して考えます。

 

A県で創業したある会社

のグループ全体の姿を図表化するとこんな感じです。。

もともと食品スーパーとして創業したこの会社は、現在では一大流通グループに成長しています。

事業領域の拡張については、もちろん自前でゼロから立ち上げたものもありますが、M&A

積極的に活用しています。

 

 

ここで考えたいのは、どの事業をM&Aによって拡張したかということより、

どのような戦略に基づいて事業を拡張したか? です。

そのため、この図にはどの事業をM&Aによって拡張したかは表示していません。

 

もうお気づきかもしませんが、この図は、縦軸を商流、横軸を業種/業態/地域その他として、

グループの事業展開を配置してあります。

 

一般的に、

商流を軸にして考える

と、事業領域/展開や立ち位置をとても整理しやすくなります。

 

 

こうして商流を軸にして見ると、

 

①食品スーパー業態内での拡張:B県・C県への食品スーパー店舗展開

②小売業界内での拡張:ドラッグストア+ホームセンター/店舗展開/EC(*)展開

③スポーツジムへの拡張

 

により顧客基盤を拡大し、

 

④商流の川上への拡張:食品卸売/製造/加工、農産物生産

⑤物流などの後方支援業務の内製化

 

により供給能力を高めて、

 

⑥提携先に(プライベートブランド)商品を供給して、

 

さらに顧客基盤を拡大している

 

という好循環がここで起きているといえます。

(*ECとはネット通販等の電子商取引(エレクトリック・コマース)のことです)

 

 

この事例は

食品スーパーを起点とした流通業全体への事業領域の拡張

ですが、

自社について考える場合は、

お客さんを増やすのか、売り物の品揃えを増やすのか、売り物の確保にさらに万全を期す

のか、社内の業務効率等を改善するのか、あるいはそれらの複合か、

という選択だと考えて良いでしょう。

 

また、製造業の場合などは、商流よりさらに細かく工程単位で、川上・川下・横並びの

どの工程に事業領域を拡張すると良いか、と考えると良いでしょう。

 

一方で、第2回でご紹介した、

・外部環境の機会と脅威への内部環境の強みと弱みを考えた対応

・どのような顧客にどのような製商品/サービスを売っていくのか

をふまえると、この事例の事業領域の拡張は以下のような

 

経営戦略

に基づいていると考えられます。

 

①食品スーパー業態内での拡張:機会×強み 新市場開拓

②小売業界内での拡張:    機会×強み 新製商品/サービス開発

(ECへの展開:         脅威×強み 新市場開拓 新製品開発/サービス開発)

③スポーツジムへの拡張:         機会×強み 多角化

④商流の川上への拡張:            機会×弱み 

⑤物流などの後方業務の内製化:機会×弱み 

⑥提携先への商品供給:            機会×強み 新市場開拓

 

 

さて、今回でM&Aの戦略的なことは終わりです。

次回からはM&Aの技術的なことについてご紹介する予定です。

 

 

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