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業務フローチャートのつくり方と活用法

こんにちは。支援専門員の小寺弘剛です。

今回、「業務フローチャートのつくり方と活用法」をテーマに掲載させて頂きました。

新型コロナウイルス対策や働き方改革(有給義務化や残業規制)などにより、業務を熟知したベテラン社員が常に職場に居ることは難しくなりました。

ベテラン社員不在時に、慌てないためには、業務標準化による業務の見える化が必要不可欠です。

 

業務フローチャートは、事務、営業、生産、物流など多くの業務に適用可能で、これから業務標準化を推し進めていこうという方にピッタリのツールです。

業務標準化に課題を抱えている方は、掲載記事をぜひご一読ください。

 

その他、ISOや経営管理手法に関する

掲載記事は、コチラからどうぞ。

 

 

業務フローチャートとは

業務フローチャートとは、業務プロセスの流れ(順序や方法、使用帳票やルールなど)を図式化したものである。

主に以下の3つの要素で構成される。

 

◆「誰が」

「誰が」その作業を行うかを表すにあたっては、担当者(または、担当部署)ごとにレーンをつくり、具体的な業務内容とその流れを記載する。

 

◆「何をどうする」

「何をどうする」のかを表すにあたっては、具体的な作業内容を体言止めで表現し、それを枠で囲ったボックスとして表現する。さらに、その作業内容を行うにあたって、使用する手段(「システム」や「帳票」など)も明記する。

 

◆「どのような流れで」

ひとつの業務を完結させるまでの間に、複数の担当者(担当部署)が作業する場合、その作業と作業の間を線で結ぶことで、業務全体の流れを表現できる。流れは原則、「左から右へ」「上から下へ」と表現する。

 

 

業務フローチャート作成のメリット

業務フローチャートを作成することで、業務プロセスの流れを視覚的にとらえることができる。また、部門内や担当者間で業務プロセスの流れについての認識を共有することができる。結果として、業務の標準化や改善、リスク発見につなげることができる。

 

◆仕事の流れ俯瞰できる

仕事を統括する管理者にとって、業務がどのように流れて完了するかを高い視点から見渡せることが重要である。業務フローは、業務全体の流れを俯瞰する有効なツールとなる。

また、各業務の担当者にとっても、仕事全体の流れを理解したうえで、自身の担当業務に関わることで、全体として目指すゴールに沿った仕事の進め方ができるようになる。

 

◆仕事の手順を理解できる

新人や異動してきたばかりの担当者が新しい業務を覚える際に、業務フローで仕事の「手順」が可視化されていると、業務の習得が容易になる。

また、年に一度だけしか行う機会のない業務(決算業務など)のように、習慣化されていない仕事を行う場合でも、業務フローに従うことで、間違いのない業務遂行が実現できる。

 

◆仕事の流れを共有できる

多くの担当者や部署が関係する業務においては、互いの業務の関わり合いについて共通認識を持っておくことが、円滑な業務遂行のポイントである。部署や担当者で区切って、業務の流れを表現した業務フローは、異なる立場の人たちがひとつの業務を共有するうえで、強力なツールとなる。

 

◆非効率な業務プロセスを発見できる

業務が誰によって行われ、どのように流れているのかを表現することで、重複する工程や合理性の乏しい作業分担を見つけやすくなる。

また、業務プロセスの一部をシステムに置き換えたり、アウトソーシングしたりする際にも、仕事の実態が可視化された業務フローが力を発揮する。

 

◆業務プロセス上のリスクを明らかにできる

業務フローを順に追っていくことで、ミスやトラブルが起こりやすい工程をあぶりだすことができる。

また、業務フローを作成する過程で、手続きの不備や想定していなかったリスクの可能性に気づくこともできる。

 

業務フローチャートの記号体系

業務フローチャートには、いくつかの標準化された記号体系があり、それを表記法と呼ぶ。組織ごと、目的ごとに表記法を選択、組み合わせ、カスタマイズして使用する。使用を推奨する2つの表記法(①BPMN、②JMA方式プロセスチャート)を紹介する。

 

1.BPMN(Business Process Model and Notation)

 BPMNとは、業務プロセスの関係者が共通に理解しておくべき仕事の進め方、それぞれの役割分担、各担当の仕事内容、顧客やサプライヤーとのやり取りなどを記述する国際標準(ISO19510)手法である。目的別に三つのレベル(レベル1:記述モデル、レベル2:分析モデル、レベル3:実行可能モデル)の3つのレベルが存在する。

 

 

<作成例(BPMN)の業務の流れ(人事考課プロセス)>

・評価者および被評価者は、人事課より、『人事考課要領』と人事考課開始の指示を受ける。

・被評価者は、「業績管理システム」に登録されている『目標管理シート』をもとに、自身の一年間の活動を振り返る。

・被考課者は、振り返りの結果を「人事考課システム」の『自己考課表』に記入する。

・評価者(各課課長)は、「人事考課システム」から記入済の『自己考課表』を確認する。記載事項に不備があれば、被評価者に差し戻す。

・評価者は、被評価者と面接を実施する。

・評価者は、『自己考課表』と面接結果を元に、「人事考課システム」の『上司考課表』に記入する。

 

 

 

2.日本能率協会(JMA)方式プロセスチャート

 一般社団法人 日本能率協会(JMA)が定めた方式で、帳票の流れを中心に業務を見える化するものである。帳票の発生から保管までの流れを追うことにより、帳票の中の情報項目の作成・活用状況がよく分かるという長所がある。

 

 

<作成例(JMA方式):製品出荷プロセス>

・営業部は、顧客より、『注文書』にて、製品を受注する。

・営業部は、『注文書』から、品名、数量、送付先を『注文請書』と『出荷指示書』に転記する。『注文請書』を顧客に渡し、『出荷指示書』を商品部に渡す。『注文書』は営業部にて保管する。

・商品部は、『出荷指示書』をもとに、「製品」と2枚複写の『納品書』(1枚目は『納品書』、2枚目は『受領書』)を準備し、顧客に発送する。『出荷指示書』は商品部が保管する。

・顧客は、『受領書』に押印を行い、商品部に発送する。

・商品部では、押印済の受領書を保管する。

 

 

 

業務フローチャートと業務改善

業務フローチャートを作成することで、業務の流れや使用帳票などについて、部署内外のメンバーと認識を共有できる。不具合の発生や業務の停滞が起こっている場合、業務フローチャートの作成は、業務プロセスが抱える問題の発見や改善に役立つ。

 

1.問題発見の着眼点

業務フローチャート上で、問題を発見する際には、主に以下の着眼点がある。

 

◆過剰なチェック

チェック業務が二重、三重に行われており、時間が割かれている。ミス発生時の対策として、チェック業務を増やしてきたが、削減の検討は行われていない。あるいは、形骸化したチェックプロセスが残っている。

 

◆無用なエスカレーション

現場に十分な判断スキルがあるにも関わらず決裁権限が現場に委譲されておらず無用なエスカレーションが頻発している。決済手続きが形骸化しており、実態上、書類の精査や意思決定を行っていない者の検印が必要である。

 

◆行動に繋がらない管理業務

業務指標(数値)、報告資料のとりまとめ等、意思決定に利用されるはずのデータが意思決定につながっていない。ただ会議で報告するためだけに資料を作成しているなど。

 

◆行動に繋がらない記録業務

監査やコンプライアンス上必要な精度・量・期間を超えた記録業務を行っている。

 

◆役割分担の不備

一つの部署で連続して実施可能な業務を二つの部署にまたがって実施している。不要な情報の受け渡しやミスの誘発、リードタイムの冗長化を招いている。

 

◆長い差し戻し工程

チェックの結果、修正が必要な場合に、かなり前のプロセスに差し戻しが起きる。特に、他部門にまで差し戻しが起きる場合には、自工程完結が成されていないということである。

 

◆情報システムの機能不足・連携不足

情報システムの機能不足から手作業や人によるチェック、システム間の情報再入力等の手間を生んでいる。

 

2.改善策の検討

発見した問題の改善案を検討する際には、ECRSの原則が活用できる。E(排除)→C(結合)→R(入替)→S(簡素化)の順に改善策を検討する。Eは、作業そのものを無くす改善であり効果が大きいため、先に考える。逆にSは、機械化、自動化というコストのかかる改善となりがちなため、一番後に考える。

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