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ISO9001のポイント~プロセスアプローチとは?~
こんにちは。支援専門員の小寺 弘剛(こでら ひろたけ)です。
ISO審査員として活動してきた経験を基に、
ISO(マネジメントシステム)についての考えを連載させて頂いております。
ISOの新規認証取得をお考えの事業者様はもちろん、
認証取得から長い期間が経ち、活動の形骸化やモチベーション低下に悩んでいる
事業者様にも振り返って頂きたい内容です。
連載第四回目の今回は、
「ISO9001のポイント」をテーマに掲載させて頂きます。
ISO9001の概要に加えて、
ISO9001において最も重要な概念の一つである
「プロセスアプローチ」について解説させて頂きます。
※過去の連載記事は、コチラからどうぞ。
第一回:ISOマネジメントシステムとは?
第二回:ISOの規格要求事項とは?
第三回:ISO14001のポイント
その他、ISOや経営管理手法に関する
掲載記事は、コチラからどうぞ。
目次
ISO9001とは?
ISO9001とは、品質マネジメントシステム
(QMS:Quality Management System)の国際規格です。
品質マネジメントシステム(以下、QMS)とは、
製品(サービス)の品質を保証するとともに、
顧客満足度向上を実現するための経営管理の仕組みのことです。
ISO9001の基本理念
ISO9001では、
「品質マネジメントの7原則」というものが掲げられています。
ISO9001の認証を取得されている企業の方々でも、
この7原則をスラスラ答えられない方は多いのではないでしょうか?
「品質マネジメントの7原則」は、
「なぜ?」「なんのために?」ISO9001やQMSを実施するのか
という基本的な理念や考え方を示したものです。
規格要求事項が、「何を?」「~すべき」
という具体的なルールを示しているとは対照的です。
ISOを嫌いになってしまう主な要因の一つに、
取り組みの目的である「なぜ?」「なんのために?」を理解する前に、
「何を?」「~すべき」というルールのみを先に叩き込まれることがあります。
「何を?」「~すべき」というルールを守る意味である
「なぜ?」「なんのために?」を
組織全体や社員の方々にしっかりと浸透・定着させることが、
ISO9001の取り組みを形骸化させないポイントの一つです。
今回は、7原則のうちでも、
最も質問を受けることの多い「プロセスアプローチ」について、
簡単に解説させて頂きます。
<品質マネジメントシステムの7原則>
※カッコ内は、関連する要求事項の箇条番号
ISO9001の規格構成
「プロセスアプローチ」の解説に入る前に、
要求事項(「何を?」「~すべき」)の部分も少し確認しておきます。
ISO9001の規格要求事項の構成は、以下の通りです。
下線部分がISO9001独自の部分で、
他の部分は、他のマネジメントシステム規格(ISO14001など)と共通です。
<ISO9001の規格要求事項>
ISO9001の特徴
ISO9001独自の要求事項が多く見られるのが、
「7.支援」と「8.運用」です。
「7.支援」と「8.運用」は、PDCAの「D(実行)」の部分にあたります。
「7.支援」では、
品質を維持・向上させるために重要な
機械設備等の管理方法(7.1.3 インフラストラクチャ)や、
品質を確認・保証するために重要な
検査機器等の管理方法(7.1.5 監視および測定のための資源)
などのルールが設定なされています。
「8.運用」では、以下の通り、
会社内の業務プロセス(部署・部門)ごとのルール設定がなされています。
・「8.2 製品及びサービスに関する要求事項」=営業業務
・「8.3 製品及びサービスの設計・開発」=企画・設計・開発業務
・「8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理」=外注・購買業務
・「8.5 製造及びサービス提供」
=工場における製造や店舗におけるサービス提供など現場における業務
・「8.6 製品及びサービスのリリース」「8.7 不適合なアウトプットの管理」
=検査や出荷業務
プロセスアプローチとは?
「8.運用」における業務プロセス(部署・部門)ごとのルール設定について考える前に、
理解しておいてほしいのが、「プロセスアプローチ」です。
「プロセスアプローチ」を理解すれば、「なぜ?」「なんのために?」
業務プロセス(部署・部門)ごとのルール設定が必要なのかということが理解できます。
「プロセスアプローチ」について考える前に、「(業務)プロセス」について考えます。
「(業務)プロセス」とは、
「インプットに何らかの付加価値を与えてアウトプットに変換する活動」と定義されます。
皆さんの業務も、顧客や同僚から、材料や情報(インプット)を得て、
それを加工・変換して、顧客や同僚に成果物(アウトプット)を渡していると思います。
ここで、大きな業務プロセスの中には、小さな業務プロセスがあります。
多くの業務プロセスの集合および連続が、企業活動であると言えます。
「プロセスアプローチ」では、企業活動をプロセスごとに細分化し、
それぞれのプロセスごとにルール(実施方法や評価基準)を設定して管理します。
プロセスアプローチ実践の意義 ~自工程完結~
プロセスアプローチを実施する目的の一つが、自工程完結の実現です。
皆さんの会社で、不良品が発生し、顧客からクレームなどが入れば、
当然に、不良発生の原因究明や再発防止が実施されることと思います。
一方で、工程内不良(顧客に流出していない社内不良やミスの発生)の場合、
どのように対応していますか?
原因究明や再発防止がしっかり実施されている企業は、
意外に少ないのではないでしょうか?
しかし、工程内不良の発生により、差し戻しや手直しが発生すれば、
コストが増加し、業務効率を低下させます。
また、工程内不良を放置すれば、その一部が顧客に流出することとなります。
工程内不良の削減つまり、自工程完結を実施する上で、
有効となるのがプロセスアプローチです。
業務プロセス(工程)ごとの業務手順を明確にするとともに、
各プロセスのアウトプットの評価基準(合格基準)を明確にすることで、
各プロセスにおけるチャック機能が強化されます。
結果として、工程内不良の発生と流出を抑制することができるのです。
プロセスアプローチ実践手法 ~タートルチャート~
「プロセスアプローチ」を実施する上で、
その考え方の助けとなるツールの一つが、「タートルチャート」です。
「タートルチャート」では、以下の7つの視点から、
各プロセスの業務の流れ(①プロセス、②インプット、③アウトプット)や
業務に必要な資源(④人的資源、⑤物的資源、⑥方法、⑦評価基準)を見える化して、管理します。
①プロセス
・プロセスで行う活動の「範囲」「内容」を明確にします。
②インプット
・前のプロセスから何を受け取るかを明確にします。
③アウトプット
・後のプロセス(顧客を含む)へ何を渡すかを明確にします。
④人的資源(誰が?誰と?)<Man>
・誰が行うのか、その担当者に必要な能力(力量)は何かを明確にします。
⑤物的資源(何を用いて?)<Machine>
・どんな物的資源を用いるか、あるいは必要かを明確にします。 例)機械装置、システム
⑥方法(どのように?)<Method>
・どのような方法(手法、技法、基準)を用いるかを明確にします。
⑦評価基準(どの程度?)<Measure>
・アウトプットをどの程度の品質で仕上げるのかを明確にします。
・そのプロセスの成果を測定する評価尺度や目標値を明確にします。
「タートルチャート」は例えば、次のような場面で活用できます。
タートルチャート活用場面①:マニュアルや手順書の整備
マニュアルや手順書を作成するときに、ルールのヌケモレを確認できます。
例えば、以下のように一つ一つの項目を丁寧に落とし込むことで、
作業者の迷いや作業者ごとの勝手な判断を防止します。
【インプットの視点】
・材料の受け入れ基準は決まっているか?
【物的資源の視点】
・使用する工具の条件は決まっているか?
【人的資源の視点】
・加工する作業者に必要な能力やその訓練方法は決まっているか?
【評価基準の視点】
・数値や限度見本など合格基準は決まっているか?
タートルチャート活用場面②:不良やミスが起きた際の原因分析と再発防止
目的の「アウトプット」を得られなかったのは、なぜか?を分析します。
例えば、以下のように、多角的に分析することで、
原因の見落としを防ぎ、真因(真の原因)にたどり着きやすくなります。
真因を把握することで、再発防止策の有効性を高められます。
【インプットの視点】
・材料の仕入先の変更が無かったか?
【物的資源の視点】
・加工機の日常点検が適切に実施されていたか?
【人的資源の視点】
・訓練を受けていない作業者が臨時で作業していなかったか?
【方法の視点】
・作業標準書通りの手順で作業していたか?
今回の内容は、いかがでしたでしょうか?
今回は、プロセスアプローチの実践手法として、
タートルチャートのみを紹介しました。
プロセスアプローチの実践手法には、その他にも、
以下のようなものがあります。
・プロセスマップ
・業務フローチャート
(⇒関連記事:業務フローチャートのつくり方と活用法)
・QC工程表
そのあたりについて、知りたいという方がいらっしゃいましたら、
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