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再発防止の進め方③~対策立案・実行編~
今回のG-Clubラーニングは、
「再発防止の進め方③~対策立案・実行編~」をテーマに、
支援専門員の小寺弘剛(こでら ひろたけ)がお送りいたします。
問題(ミス、トラブル、事故、不良など)の再発は、
顧客からの信頼低下や業務効率低下の大きな原因となります。
そこで、前々回、前回から引き続き、
問題再発防止のポイントについて考えます。
(前々回記事はコチラ⇒再発防止のポイント①~再発防止のステップ~)
(前回記事はコチラ⇒再発防止のポイント②~原因分析編~)
三回目の今回は、「対策立案・実行編」と題しまして、
洗い出された原因の評価・選択ポイントや、
再発防止対策の立案・実行方法について考えます。
※過去の関連記事は、コチラからどうぞ。
その他、ISOや経営管理手法に関する
掲載記事は、コチラからどうぞ。
再発防止の必要性評価
再発防止対策を立案する前に、
再発防止(原因除去)の必要性を評価します。
再発防止の必要性は、主に以下の2点から評価します。
・再発可能性
・影響度(被害の大きさ)
再発防止対策が不要という決定は、慎重に行う必要がありますが、
・ごく稀にしか発生しない問題
・被害が極めて小さな問題
については、費用対効果の観点から、再発防止不要と判断する場合もあります。
ただし、担当者の恣意的な判断を防ぐために、
「再発可能性」「影響度」には、
以下のように、会社ごとの判断の指標・目安を設定しておくと良いでしょう。
再発可能性の判断基準としては、今後の発生見込みだけでなく、
過去に、類似の問題が発生していたかも重要な評価指標です。
経済損失の大きさについては、自社の規模などから金額を設定します。
その他、以下のようなものが、「影響度」の評価指標として考えられます。
・顧客信用への影響(信用回復の難しさ)
・法令違反の可能性、訴訟リスク
・報道(新聞やTVニュース)の可能性
・自然環境・環境汚染への影響
再発防止の要否の判断は、以下の例のように、
「再発可能性」と「影響度」を掛け合わせ、
「○点以上」で対策を実施するなど、
ルールを決めておくと、客観性を担保できます。
また、はじめは、発生可能性・影響度が高い(点数の高い)問題のみ再発防止の対象とし、
徐々に点数の低いものまで、再発防止の対象を広げていくことで、
組織を継続的に強化していくことが可能となります。
再発防止対策の立案①~除去すべき原因の決定~
再発防止対策の基本は、原因の除去です。
なぜなぜ分析や特性要因図を用いて原因分析を行うと、
一つの問題に対して、複数の原因が洗い出されます。
ここで、洗い出された全ての原因に、
等しく対策を打つのは、現実的とは言えません。
問題はいくつかの原因(条件)が重なって、
発生することがほとんどです。
対策の「容易性」や「有効性」の観点から、
除去すべき原因の優先順位を決定します。
対策の「容易性」の観点には、
対策にかかる費用や時間などがありますが、
改善チームの権限範囲にも注意しましょう。
以下は、作業ミスに関する
原因分析(なぜなぜ分析)の悪い例です。
<悪い例(作業ミスの原因分析)>
なぜ、作業ミス〇〇が発生したのか?
→急いで作業したから
→部署の人材が少ないから
→新たな人材を採用できないから
→当社立地地域の労働人口が減少しているから
→地域格差是正に関する国の政策が悪いから
このように原因分析の結果が、国や政策、経済情勢など、
非常に大きな要因に帰結することがあります。
しかし、
・国(政策)が悪いんだから仕方ない。
・経済情勢が悪いんだから仕方ない。
といっても改善は進みません。
また、改善チームに、経営層(社長や役員)が、含まれていない場合には、
「会社(経営層、マネジメント)が悪い」という原因に焦点をしぼるのも、
適切ではありません。
まずは、部なら部、課なら課、自分たちの権限や予算で、
改善が可能な原因に焦点をしぼって、対策を立案しましょう。
再発防止対策の立案②~原因除去方法の決定~
再発防止対策(原因の除去方法)は、原因の種類によって様々です。
しかし、一般的に対策が難しいと言われる
ヒューマンエラー(ヒトのミス)の改善策については、
5Eの考え方が参考になります。
5Eとは、ヒューマンエラー発生要因となる
人の不適切な行動を抑制する以下の5つの手法です。
再発防止対策の実施・効果確認
再発防止対策のアイデアが固まったら、アクションプランを設定します。
アクションプラン設定にあたっては、以下の事項を明確にしましょう。
・対策内容および期待効果
・実施責任者および実施メンバー
・対策開始日および完了予定日
・対策効果の確認方法
この中で忘れがちなのが、「対策効果の確認方法」です。
対策立案時には、改善意欲が高くとも、
効果確認方法が明確でないために、
「結局、〇〇の再発防止策ってどうなったっけ?」と
いつの間にか、対策が忘れ去られているというケースがよく見受けられます。
「3ヶ月間、X製品の不良率が、0.01%以内に抑えられていること」
「2ヶ月後、担当検査員に、意地悪テストを実施し、全員が不良を検出できること」
など確認時期や、数値など具体的な成果目標を
対策実施前に、設定するようにしましょう。
また、設定したアクションプランの良し悪しを、
確認する基準にSMARTがあります。
SMARTとは、以下の頭文字をとったものです。
・Specific(明確な):具体的で、分かりやすいこと
・Measurable(測定可能):数値など成果や進捗が測定可能であること
・Achievable(達成可能):現実的に達成可能であること
・Relevant(関連している):顧客や組織の目的と関連していること
・Timed(期限がある):達成期限が明確であること
設定したアクションプランの内容について、
SMARTの視点で見直してみましょう。
今回の内容は、いかがでしたでしょうか?
問題(ミス、トラブル、事故、不良など)の再発防止対策について、
三回にわたってお送りさせて頂きました。
問題は、どのような職場でも発生することです。
しかし、その再発は、経営管理上の工夫で防ぐことができるものです。
問題の再発にお悩みの経営者や管理職の方は、
ぜひ、一回目、二回目の配信も振り返って頂き、
問題の原因分析や再発防止対策の立案・実行
の仕組みづくりに取り組んでみてください。
このような活動を組織に根付かせ、
問題を発生させにくい強固な組織づくりの
実現に向けた手掛かりにして頂ければ幸いです。
(一回目の記事はコチラ⇒再発防止のポイント①~再発防止のステップ~)
(二回目の記事はコチラ⇒再発防止のポイント②~原因分析編~)
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