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お米を使ったグローバル展開で成長(小林生麺㈱)
今回のイチオシ事例は、幅広い麺類を製造/販売している小林生麺株式会社(本社岐阜市)
です。
当社のウェブサイトを見ると、「グルテンフリー」を全面的にアピールして、ラーメン、
うどん、パスタなどの多種多様なグルテンフリー製品をインターネット通販で販売する
ECサイトになっています。
グルテンフリーってそんなにすごいの?と素朴な疑問を持った支援専門員の矢橋が現場
を取材してきたところ、以前ご紹介した
「実は美濃和紙は おしぼりになってグローバル展開している(角田紙業株式会社)」
と同じようなことが起きていました。
目次
グルテンフリーとは
小麦などに由来するグルテンを摂取しない食生活/食品のことです。
グルテンは食物アレルギーの一因であり、独立行政法人農畜産業振興機構によると、
米国のグルテンフリー表示規則の中で「グルテン含有穀物で自然発生するタンパク質
であり、セリアック病(注)疾患者に健康上の悪影響を与える可能性のあるもの」
と定義付けられている。この定義における「グルテン含有穀物」とは、小麦、ライ麦、
大麦をはじめとする穀物を指し、グルテン含有物から発生するタンパク質の例として
はプロラミンやグルテリンが挙げられる。~中略~
(注)慢性的な小腸の炎症性疾患
というものです。
そうすると、通常の小麦粉を使う麺類はグルテンアレルギーがある人には食べれない
ということになります。
ではグルテンアレルギーを持つ人はどれくらいいるかというと、2019年の農林水産省
の「米粉の輸出拡大に向けた欧米グルテンフリー市場調査」によると、何と、
アメリカで全人口の12%~26%、ヨーロッパで全人口の4%~49%もいるということです。
特に食物アレルギーがない私はとても驚きました。
<2019年農林水産省「米粉の輸出拡大に向けた欧米グルテンフリー市場調査」p46>
<2019年農林水産省「米粉の輸出拡大に向けた欧米グルテンフリー市場調査」p47>
さて、当社が
グルテンフリー製品を開発したきっかけ
は、代表取締役の小林俊夫さんが、友人のグルテンアレルギーのお子さんにも麺類を
食べてもらいたい! と15年程前に考えたからでした。
1947年の創業から70年以上生麺にこだわって、社名も小林「生麵」と名乗ってきた
当社は、それを機に小麦粉ではなく国産米粉を使うことによりグルテンフリーにした
ラーメン、うどん、パスタなどの各種麺類を、試行錯誤しながら開発していきました。
同時に、グルテンフリー食品の市場規模の大きなアメリカ市場の開拓にも取り組み、
<アメリカでの商標登録証 2015年(平成27年)取得>
<グルテンフリー認証マーク 2015年(平成27年)取得>
2017年度(平成29年度)には、食品産業新聞社から
第47回食品産業技術功労賞 国際部門
を「アメリカでのグルテンフリーめんの普及」を理由として授与されるまでになりました。
この表彰式に出席した取締役社長の小林宏規さんは、他の受賞者は日本の食品業界を
代表する有名企業ばかりでとても緊張した、そうです。
<第47回食品産業技術功労賞 表彰状>
このように、グルテンフリー麺類の開発と販路開拓を軌道に乗せた当社でしたが、
海外向けおよび防災向けのグルテンフリーインスタント乾麵の製造過程には、包装
工程があり、
1. 質的には、最適な水分含有量(9%前後)で包装すること:
乾燥室から出てから手作業で包装している間に湿気を吸い込んでしまう環境に
あり、また、10%以下の水分含有量の計測ができない
2. 量的には、包装工程の生産性を向上させること:
手作業のままでは、増産すると人件費が増加してしまう
という課題がありました。
そこで当社は
平成29年補正ものづくり補助金を活用
して、逆ピロー包装機および赤外線水分計を導入することにより、
最適な水分含有量での包装を、従来の40倍以上の速度で行うことを可能に
しました。
<逆ピロー包装機>
<赤外線水分計>
こうして国産米粉を使ったグルテンフリー麺のパイオニアとして未開の市場を
開拓してきた当社は、今では
米粉使用グルテンフリー製品が売上の50%超に
なっています。
とりわけインスタントグルテンフリー麺は海外向けと防災向けの両面で伸長
していて、海外子会社を通じて直接的に注力できる海外向けの売上は8年間で
8倍に増加して、
グローバル展開が当社の成長ドライバー
になっています。
アメリカとオーストラリアへの留学経験と飲食店チェーンの起業を経て当社に
入社して、グルテンフリー麵事業を育ててきた取締役社長の小林宏規さんは、
代表取締役を務める父・小林俊夫さんからの事業承継の過渡期にあります。
海外向け事業については、
・父が創った世界一おいしい麺で、世界の人に喜んでもらえるようにする、
・その誇りと楽しさを、従業員と分かち合いたい、
という想いを持っています。
ところで、一歩引いて
グルテンフリー食品のグローバルな事業環境
を調べてみたところ、とてもいい資料がありました。先に引用した、
2019年の農林水産省「米粉の輸出拡大に向けた欧米グルテンフリー市場調査」
であり、調査の背景と目的は下記諸点です。
・日本の重要な農産品の一つである米の加工品である米粉については、グルテン
フリーという特長を活かした欧米諸国への輸出拡大が期待されている
・ 昨今、欧米においてはグルテンフリー市場の成長は著しく、現地で流通する
グルテンフリー製品の一部を戦略的に日本産米粉製品等で置き換えていくため
の基礎として、詳細なマーケット構造を分析する必要性が高まっている
~中略~
・ 最終的に、調査結果を日本の米粉事業者等に共有し、関係者が共通の認識に
基づいて輸出促進に取り組む基礎とする
調査の内容は、先述したアメリカとヨーロッパでのグルテンアレルギー人口の
他に
・ターゲットとなる消費者像
・アイテム別のグルテンフリー食品のニーズと日本産品の強みの分析
など、
日本の米粉事業者等が輸出促進に取り組むための豊富なデータと考察ですが、
当社のグルテンフリーのラーメンが海外向けによく売れる原因がこれを読むと
よく分かります。
<2019年農林水産省「米粉の輸出拡大に向けた欧米グルテンフリー市場調査」p166>
<2019年農林水産省「米粉の輸出拡大に向けた欧米グルテンフリー市場調査」p160>
私はここで、自分の強みを作って、有利な環境で展開することの大事さをあらためて
認識しました。
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