こんにちは。支援専門員の矢橋 敬（やばし たかし）です。　

 

今週のイチオシ事例は、有限会社長屋木工所です。

和傘の要となる部品のロクロの製造現場を取材してきました。

 

 

岐阜市の和傘は日本遺産

 

もう実用品ではなくなってから久しい和傘ですが、着物とともに日本情緒を醸し出す伝統工芸品

となっていますね。

 

伝統的な製法で作られる本物の和傘は日本国内でしか生産されていませんが、岐阜は和傘の国内

生産の約60％を担う一大産地です。

 

また、岐阜の和傘は、文化庁から日本遺産に指定されていたり、岐阜県から郷土伝統工芸品に指定

されていたりするんです。

 

 

その和傘の要となる部品の「ロクロ」を製造しているのは、日本でたった一つ、

この有限会社長屋木工所だけなんです。

 

本物の和傘の部品を製造している、日本でたった一つの木工所ということは、

 

世界に一つだけの木工所

 

ということになります。

 

 

では、

 

ロクロは木製の超精密部品

 

であることを写真で解説します。

次の写真は和傘の骨格部分だけの写真です。この写真の先端と真ん中あたりを見てください。

ここに

二つのロクロ

が入っています。

 

 

先端にはまっているキャップのようなもの、これが

「頭ロクロ」

です。

傘の骨と柄を先端から束ねつつ、骨が動く支点の役割を果たしています。

 

 

　

 

もう一つの真ん中にあるのが

「手元ロクロ」

です。これが骨を束ねつつ、骨が動く支点となるとともに、

これに柄が貫通していて、柄に沿って傘を開閉できるようにしています。

 

 

つまり、２種類のロクロが１つの和傘に必要なのですが、

 

ロクロと骨は、はまっているだけでなく、糸でもつながっているため、

櫛状のスリットだけでなく、糸を通すための穴もあける必要もあり、

 

0.1ミリ単位の精度が要求される精密部品なのです。

 

ではその製造工程をご紹介します。

まず、原材料から完成品になるまで左から右に並べてみるとこんな感じです。

 

 

先述の通り、ロクロは精密部品であるため、材料の木は

柔らかくて精密加工しやすく、しかも粘りや強度もある

 

エゴノキ

 

を使います。このエゴノキは2年ほど自然乾燥させます。

 

 

工程の最初は

 

寸法切り

 

です。ここでエゴノキをロクロの大きさに合わせて切ります。

 

 

次は

 

型削り

 

です。傘ロクロ旋盤加工機を使用して、

円筒形のエゴノキを外形はほぼロクロの形にまで切削加工します。

かつお節のような木くずがシュワ―っと飛び散る、面白い工程です。

 

 

 

次は

 

目切り

 

という工程です。

デジタルシーケンサーを用いた傘ロクロスリット加工機により、

0.1ミリの精度で

・傘骨の数に応じたスリットを入れると同時に

・傘骨つなぎ糸を通す穴をあけます。

 

 

次に

目すき

 

です。傘骨がスリットに入りやすいように、スリットの間隔を広げます。

（手元ロクロはこの後に黒い塗装をします）

 

 

最後は

 

柄に組みつけ

 

て、当社製品としては完成です。

 

 

 

さて、ここでも以前は、軽量・繊細な和傘の需要の増加への対応、つまり、

ロクロの小型化および精度の向上という課題がありました。

そこで

 

ものづくり補助金の活用

 

により

1）傘ロクロ旋盤加工機の改造（上記の型削り工程）

2）デジタルシーケンサーを用いた傘ロクロスリット加工機の導入（上記の目切り工程）

が行われて、

 

・小型ロクロの製造が可能に

・スリットの誤差が0.1ミリ以内に

・技術の伝承が容易に

なりました。

 

いずれも、これからの日本の和傘業界全体に寄与することです。

 

 

しかしながら、そのような

オンリーワン技術の伝承

 

は大丈夫なの？という疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。

 

確かに、このままでは危うい、という危機意識があり、

・一般社団法人　岐阜和傘協会の設立

・職人育成資金を募るクラウドファンディング

などの活動を行って、生産地が一体となって持続性を高めています。

 

この、一般社団法人岐阜和傘協会の設立については、岐阜県中小企業団体中央会

も実は支援をしていました。