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コロナ渦の中、「染め屋」として生き残るために(福田屋)

ものづくりセンター支援専門員の石井です。

 

岐阜県には、「伝統工芸」と呼ばれる物が数多くあります。

その中でもあまり知られていない「印染め」を得意とする事業者が大垣にあります。

 

 

 

今回は、伝統技術に胡坐をかく事なく、新技術に果敢に挑戦している「福田屋」をご紹介します。

 

 

同社は、明治18年(1885年)創業の印染屋(しるしぞめや)です。

 

伝統工芸(染物)と最新技術の融合(福田屋)

 

 

創業以来、家族経営で染物を造り続けてきました

 

明治18年・西暦1885年創業。

 

 

 

初代 梅二郎

京都の修行先より大垣にて萬染物店「福田屋」の屋号で現在の大垣、竹島町にて開店。

 

二代目 光三
家業継承後、主要染物の種類を「藍染め」から「黒染め」着物に集約。

 

三代目 光一
第二次大戦兵役より復員後家業継承、 主要染物を着物から半纏等染の素材を木綿に拡大。

昭和25年に「有限会社 福田屋 染工場」と法人化する。

 

四代 栄一郎
先代より継承した染めに「印染」を主に、旗、幟、染め素材に ポリエステルなどを新たに加え、平成9年に社名を「有限会社 福田屋」に、 屋号を「美濃染元 福田屋」にし、現在に至る。

 

 

福田屋の歴史を見ますと、時代とともに「染物」というコア事業は変えずに、

 

藍染め → 黒染め
着物 → 染める素材を木綿に拡大
印染を中心に、旗・幟(のぼり)他染め素材にポリエステルを追加

 

と、変遷してきています。

 

 

 

伝統技法は踏襲しつつ、時代のニーズに合わせて染める商品を変え、対応する素材の巾を広げてきました。

 

伝統工芸は、単に伝統を守るだけではなく、時代とともに移り変わるニーズに対応する為に、新たなチャレンジも必要なのだと実感させられました。

 

 

伝統技法:印染め(しるしぞめ)とは?

 

お客様の印(紋やマーク)を生地に染め抜いて製品にする

 

 

印染めには、大きく2つの方法があります。

★ 引染め(ひきぞめ)

中空に張った白生地に手筒や型で防染糊をおき、刷毛で染料を染める方法

 

特徴 長尺物を染められる
対象 神社・お寺の幕、大幟旗 etc

 

 

★ 手捺染(てなっせん)

捺染台に張った白生地に柄を施した型を置いて染料を型に流し込みスキージで擦って染める方法

 

特徴 製版柄の通り量産できる
対象 風呂敷、暖簾(のれん)、旗、幟(のぼり) etc

 

 

これら印染めのニーズは、まだまだあります。

しかし、パソコンやインクジェットプリンターの普及により、自由なデザインで写真品質の印刷が可能な現在、お客様からは様々なご要望が届きますが、伝統技法では対応できない事が多々あります。

 

 

例えば、
・ グラデーション柄や写真柄の対応は不可
・ 天然繊維(木綿、麻)以外の染めができない
・ 高コストである 等々

 

残念ながら、これまでは、技術的な問題から、それらのご要望に対してお答えする事ができずにいました。

 

五代目の新たな挑戦

 

五代目の福田 晃一朗さんが感じていたのは、

 

作り手の都合でお客様のイメージの妥協に頼っている

 

このことにより、染め屋が時代に取り残されてしまうのではないか、

と危惧されていました。

そこで、思いついたのが、

 

・ デザインの自由度を高める
・ ポリエステル生地への染めを実現
・ 両面に染めることができる

 

この染めが実現することによって、染め屋として生き残ろう、と決意されました。

そして、ものづくり補助金を活用して導入した設備がこれ。

 

導入した真空昇華転写プレス機

 

導入したライトテーブル。
下から強い光を当てることで、絵柄が合わせやすくなった。

 

 

この設備を導入する事で、

 

両面でポリエステル生地を染められる

 

が、実現しました。

 

 

五代目の福田 晃一朗さんはおっしゃいます。

 

創業130年超の染め屋ですが、今の時代に沿った染め方も必要なのではとの考えから、デジタルを融合させた技法を取り入れました。
取り入れたことにより、「お客様オリジナルの風呂敷作り」というこれまで見えていなかった市場も見えてきました。

 

コロナの影響

 

2020年2月頃から広まったコロナ渦の影響で、ほとんどのお祭りやイベントが中止を余儀なくされました。

 

福田屋のお客様は、お祭りやイベント等を企画される自治体やイベント会社等です。
この事は、福田屋に大打撃でした。

 

 

しかし、ものづくり補助金を活用する事によって実現した「両面でポリエステル生地を染められる」技術は、新たな市場を開拓する事ができていました。

 

 

激減したお祭りやイベント需要に変わり、新たに、風呂敷・ブランケット・暖簾・旗(社旗等) 等の需要が増えてきました。

 

 

コロナ渦は福田屋にも大打撃を与えました。

しかし、同時に新たな需要である「マスク」が福田屋を救いました。

 

福田屋が位置する大垣には、「升」で有名な事業者が存在します。

 

この事業者とのコラボで「升マスク」という商品を開発。
販売開始以降、大好評で当初予想の10倍の売上を上げる事に成功しました。

 

 

以後、オリジナルマスクやノベルティの商談が増え、結果的に、コロナ渦の影響は軽微にとどめる事ができました。

 

 

今では、福田屋の売上の約半分を、ものづくり補助金で導入した設備が生み出しています。

 

 

これからの福田屋

 

五代目の福田 晃一朗さんは新サービスを生み出す為に、再度、ものづくり補助金に取り組んでらっしゃいます。

 

 

お邪魔した日に、新サービスについてお話しを伺いましたが、現在、事業期間中である為、詳細についてはここではお話しできません。

差しさわりのない範囲でお話ししますと、

 

 

「ワクワクするサービス」

 

これまでになかった新しいサービスで、多くの人にこのシステムの良さを認知してもらうには時間はかかるでしょうが、先々が楽しみなシステムです。

 

補助事業が終わり、新サービスが立ち上がる日が楽しみです。

 

 

福田屋は、伝統技術に胡坐をかく事なく、新技術に果敢に挑戦されています。

その取り組みは、ものづくり補助金が全てではありません。

常にアンテナを張って新しい情報を入手しつつ、自社の強みを活かしたビジネス展開を考えてらっしゃいます。

 

 

これからが、ますます楽しみな事業者さんです。

 

 

最後に。
お忙しい中、取材にご協力頂きました五代目!
本当に、ありがとうございます。

 

 

 

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