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事業すべてがSDGsに直結(ケイナンクリーン㈱)
今週のイチオシ事例は、おんな城主の「岩村城」で知られる岐阜県恵那市岩村町にて
廃棄物処理/リサイクル業を営むケイナンクリーン株式会社です。
SDGsについては以前のイチオシ事例でも触れましたが、当社の事業はすべてがSDGsに
直結していて、ものづくり補助金を活用した事業もSDGsに貢献しています。
支援専門員の矢橋がその現場を取材してきました。
<岩村城下町>
目次
SDGs
とは、Sustainable Development Goalsの略であり、
“持続可能な開発目標”と訳される国際目標です。2015年9月の国連サミットで、
2030年までに持続可能でよりよい世界をつくることを目指して決まった目標です。
17の目標が設定されていますが、
当社の事業はすべてがSDGsに直結
していることに気づきます。
・廃棄物処理/リサイクル (一般廃棄物/産業廃棄物収集運搬、処分)
▶ 11.住み続けられるまちづくりを
・廃食油、発泡スチロール、ペットボトル、フロンガス回収
▶ 12.つくる責任、つかう責任
・メンテナンス(下水道施設維持管理、浄化槽施設維持管理・清掃)
▶ 6.安全な水とトイレを世界中に
・バイオ燃料研究開発(高純度バイオディーゼル/グリセリン関連製品)
▶ 7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
・医療機器販売・貸与(高度管理医療機器、AED、介護入浴機器)
▶ 3.すべての人に健康と福祉を
その、当社の事業内容は、ごみや廃棄物のことを詳しく知らない一般個人にも分かりやすい
形でウェブサイトに書かれています。
少し俯瞰するために
日本の廃棄物処理/リサイクルの状況
を見てみましょう。
・行政の区分上、ごみ(一般廃棄物)と産業廃棄物は区分されている
・年間4,274万トン発生しているごみの15%程は資源としてリサイクルされている
・年間3億7,883万トン発生している産業廃棄物の50%程は資源としてリサイクルされている
ということが分かります。
グローバルにはどうなのかというと、完全に統一された基準はないものの、おおむね
EU平均のリサイクル率は40%程、アメリカのリサイクル率は32%程とする資料
(一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル推進センター刊
「リサイクルデータブック2021」)があることから、
日本はリサイクル先進国であると考えられ、当社はこれにしっかりと貢献しているといえます。
<令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 p186>
<令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 p187>
<令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 p196>
さて、
当社は創業時の自治体のごみ収集の受託から始まり、産業廃棄物の処理、個人向け不用品回収
と事業領域を展開してきた中で、バイオ燃料の研究開発を進めてきました。
原料は飲食店や家庭から出る廃食用油です。
これを精製すると80~90%が軽油同様に使える「バイオディーゼル燃料」にリサイクルできる、
つまり、
・捨ててしまう廃棄物からとても効率良く燃料が作れて、
・その分原油を採掘する必要がなくなる
・しかも、排気ガスは軽油よりきれいになる
・さらに、植物由来の再生可能エネルギーであることからCO2排出量はゼロとされるため、
「2050年カーボンニュートラル宣言」の実現に大きく貢献する
という非常に大きな効果があるのですが、
製造工程に、
1)人体に危険なメトキサイトを扱うリスクがあること
2)廃食用油とメトキサイトの攪拌が不十分になりがちであること
3)廃棄物の浄化処理工程が非効率であること
4)精製後の燃料の純度が不足していること
という課題がありました。
そのため当社は
平成29年度補正ものづくり補助金を活用
して、
・密閉式メトキサイト溶解装置
・エステル反応装置の循環混合ユニット
・減圧蒸留装置
を導入して、これらの課題を解消しました。
特に、純度が99.9%以上となったことにより、
高純度バイオディーゼル燃料
として
自信を持って社外に製品として販売できる水準になったことは、大きな成果でした。
<一般社団法人 高純度バイオディーゼル燃料事業者連合会 ウェブサイトより>
<エステル反応装置の循環混合ユニット(左奥) 密閉式メトキサイト溶解装置(右手前)>
<減圧蒸留装置>
こうして品質を高めたため、社外への販売は輸送用のタンクローリー車を購入すれば
いつでもできる体制が整い、
現在のところは自社のごみ/廃棄物回収車の燃料として活用しています。
また、地域によりかなり違うようですが、国内の平均的な
家庭からの廃食用油リサイクル率はまだ10%程
しかないと推定されています。
日本国内の家庭での食用油消費は11~25万トンと推定されているため、
仮に年間20万トンとして、リサイクル率が50%に向上すると、新たに
8万トン×80~90%(精製後)=6万トン=6千万キロ以上のバイオディーゼル燃料を
増産可能と試算できます。
つまり、ディーゼルエンジン車が電動化されるまでの間、
バイオディーゼル燃料はこれから何倍にも成長する可能性のある製品なのです。
<当社ウェブサイトより>
ところで、
当社の
ウェブサイトには従業員さんたちの顔写真も
出ています。
社長の顔写真をアップしている会社のウェブサイトはよくあり、当社もそうですが、
近江社長に聞くと、
誇りと自信を持ってこの仕事をしてほしいため、当社では全員に名刺を持たせている。
これで社外の人に対して、いつでもケイナンクリーンの誰だと堂々と名乗れる。
ウェブサイトへの顔写真アップはそれと同じ効果を狙っている。
ただ、希望しない社員は出さなくて良いし、名前は検索できないように工夫してある。
ということです。
さらには、
若手の社員に様々な企画をどんどん任せている、とのことで、例えば
・社内/営業イベント企画
・車両や制服のデザイン
を自由に意見を出し合ってみんなで決めているそうです。
<社員による新デザインのごみ収集車>
<当社PR動画>
当社は、止まるとみんなが生活できなくなってしまう、エッセンシャル・ワークをする会社
であることに加えて、生活環境の改善のための新しい事業に積極的に取り組んでいることを、
今回の取材を通じて体感しました。
また、社長や役員の顔写真をウェブサイトに出している会社の株価は高い傾向があるという説
もあります。
だから、もし当社が上場していたら、私は当社の株を買いたいと思います。
当社は今後より多くのステークホルダーにそう思われる会社になることでしょう。