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戦略的不可欠性の重要な担い手(㈲伊藤製作所)

今週のイチオシ事例は、1963年(昭和38年)に創業して以来、瑞浪市で金型製造業を営んでいる

有限会社伊藤製作所です。

半導体製造装置用金型や耐火物レンガ用金型など、特殊な金型に特化している当社に興味を持った

支援専門員の矢橋がその現場を取材してきました。

 

 

 

特殊な金型

 

金型とは、金属製や樹脂製の部品をプレス加工のような塑性加工や射出成型などにより製造する

ための金属製の型です。

 

世間一般的に、金属製品用や樹脂製品用の金型を製造する会社は数多くありますが、当社は

半導体製造装置や耐火物レンガをつくるための特殊な金型に特化したユニークな会社です。

 

1963年(昭和38年)に金属部品加工業で創業

1965年(昭和40年)に窯業向けの耐火物レンガ用の金型の製造を開始

1989年(平成元年)に半導体製造装置用の金型の製造を開始

 

という沿革を持ち、

陶磁器などの窯業が基幹産業である東濃地方(瑞浪市、多治見市、土岐市)に立地する地の利を

活かしつつ、ニッチな分野でオンリーワンになる経営をしてきたといえます。

 

ちなみに耐火用レンガとは、窯炉などの火が当たる部分、また、耐火構造物などに使われる、

通常のレンガよりも高温に耐えることができるレンガです。

 

<耐火物レンガ用金型の一例>

 

一方の、

 

半導体製造装置用の金型

 

は、耐火物レンガ用金型の取引があった大手セラミックメーカーからの依頼により製造を開始して

30年以上経ち、現在では当社の売上高の過半を占める、成長エンジンになっています。

 

<半導体製造装置製造用金型(素材段階)>

 

この金型は、サセプターという半導体製造装置内にあるセラミック製の機能部品のプレス成型に

使われています。

 

もう少し掘り下げると、

 

サセプターは、半導体製造装置の中で半導体材料のシリコンウエハを支持する機能を持つ部品

であり、高温の腐食性ガスやプラズマなどにさらされる製造工程での耐久性を求められます。

 

シリコンウエハはCPUやメモリなどの半導体の基板であり、その上に無数のトランジスタなどの

素子が載せられる、微細な凹凸や微粒子を限界まで排除した、平坦な円板です。

 

そのため、サセプターにも平坦さが求められ、それを上下に挟んでプレス成型する当社の金型の

精度(平行度と表面の滑らかさ)が高ければ高いほど、サセプターの製造工程での修正作業を

少なくできる、つまり、顧客への貢献度が高くなるという連鎖関係にあります。

 

 

 

当社はこの、

 

 

半導体製造装置用の金型の高精度化

 

 

を目的として

 

 

平成30年度補正ものづくり補助金を活用

 

しました。

 

具体的には、コラム移動タイプ油圧レス精密平面研削盤を導入して、

 

・平行度:寸法公差を500%改善

・表面の滑らかさ:100%以上改善

・加工時間:100%以上改善

・自動化による勘コツ依存からの脱却

 

を達成したのです。

 

<コラム移動タイプ油圧レス精密平面研削盤>

 

 

 

そんな当社の半導体製造装置用金型が属している

 

半導体市場の成長性と日本の半導体産業

 

はどのようになっているのか、調べてみました。

 

まず、2030年までの世界的な半導体市場はまだまだ高成長することが見込まれています。

PC、スマホなどの普及済みの電子デバイスに加えて、5GインフラやIoT、AI、EV、自動走行自動車

など、研究開発段階から製商品段階になってきた機器に必要であるために半導体市場が拡大すること

は容易に想像できます。

 

<経済産業省 第1回半導体・デジタル産業戦略検討会議 資料5>

 

 

その中にあって日本の半導体産業は、全般的には残念ながら1988年の50.3%をピークとして、

徐々に国際的なシェアが低下して、2019年には10.0%となっています。

 

<経済産業省 半導体・デジタル産業戦略の方向性2021年3月 5ページ>

 

 

しかしながら、

 

半導体産業も細分化すると多くの素材や工程、設備などからなり、その中で日本には

フォトレジスト(世界シェア90%)、シリコンウエハ(同58%)、ウエハ製造装置(同94.9%)

に強みがあります。

 

このシリコンウエハおよびウエハ製造装置の高シェアの一端を当社が担っているといえます。

 

<財務省広報誌「ファイナンス」2022年4月号 43ページから抜粋>

 

 

ところで、ここ数年の間に、

 

経済安全保障

 

という言葉を聞く機会が増えたと思います。

 

まずは2020年からの新型コロナウィルス感染拡大によりサプライチェーンが混乱し、

つぎに2022年からのウクライナ侵攻により原油などの資源価格高騰やインフレが起き、

 

個人レベルでも国際情勢の複雑化と不安定性を体感している方は多いと思います。

 

経済安全保障推進会議はこれに対応する方向性/目標として、

 

1.自律性の向上(基幹インフラやサプライチェーン等の脆弱性解消)

2.優位性ひいては不可欠性の確保(技術・産業競争力の向上や技術流出の防止)

3.基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化

 

を打ち出しています。

 

<経済安全保障推進会議(第1回)経済安全保障の推進に向けて 2021年11月19日 1ページ>

 

不可欠性については、

「国際社会全体の産業構造の中で、日本の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野を

戦略的に拡大し、長期的・持続的な繁栄及び国家安全保障を確保すること」

という戦略的不可欠性の概念が背景にあります。

 

そのような観点から、

国際的にとても高いシェアを持つ日本のシリコンウエハ産業やウエハ製造装置産業は、

「戦略的不可欠性」を持っている産業であり、

 

その一端を担う当社は

 

戦略的不可欠性の重要な担い手

 

であるといえます。

 

<財務省広報誌「ファイナンス」2022年4月号 42~43ページ>

 

 

 

私は今回、不可欠性について考える貴重な機会をいただきました。

 

 

 

 

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