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手術用シミュレータの“触感”の数値化(株式会社 タナック)

今回のイチオシ事例は、

 

医療機器向け軟質系樹脂部品メーカーの「株式会社 タナック」さんです。

 

 

営業開発部 部長の棚橋一将さん、係長の岩田真弘さんに、

 

支援専門員の小寺弘剛が取材させて頂きました。

 

取材風景(左:岩田真弘さん、右:棚橋一将さん)

 

 

当社概要

タナックさんは、軟質系樹脂(シリコーン、エラストマー、ウレタンなど)を

 

素材とした製品開発及び製造販売を行っているメーカーです。

 

 

 

 

医療分野を中心に、健康・ヘルスケア分野、航空宇宙・ロボット分野などで、

 

当社の製品が活躍しています。

 

 

 

当社の強み

タナックさんの強みは、

 

軟質樹脂材料に関する豊富な材料知識および、高度な配合・加工技術です。

 

 

「クリスタルゲル®」「タフシロン®」「メディピュール®」など、

 

当社独自の配合樹脂材料を開発してきました。

 

 

商品化のノウハウも当社の強みです。

 

手術練習用のシミュレータや航空機部品など

 

専門的なBtoB製品にとどまらず、

 

BtoC(最終顧客向け)製品開発も積極的に行っています。

 

 

例えば、膝や骨盤、手首などの関節サポーター、

 

凍らせても柔らかい冷却パック「クリスタルゲルクール」などを商品化してきました。

 

 

最近では、マスクのスキマを抑える製品「マスピタ」が、

 

新型コロナ対策で好評を受けています。

 

 

大学や医療機関と共同研究を行うことで、医療機器部品メーカーとして、

 

性能・効能の確かな製品を販売しています。

 

 

 

これらの商品は、

 

テレビ番組(「フジテレビ News イット」や「日本テレビ  Newsevery」など)や

 

新聞(岐阜新聞や中日新聞など)でも、度々紹介されてきました。

 

 

 

補助事業の取り組み経緯

当社の代表的な製品の一つとして、

 

手術練習用のシミュレータがあります。

 

 

クリスタルゲル、シリコーンなどを用いて、

 

皮膚や血管、臓器などの感触を忠実に再現することで、

 

人体に近いリアルな手術練習を可能にする製品です。

 

 

しかし、これら人体の部位の触感は、

 

年齢や性別などで少しずつ異なっています。

 

 

そのため、顧客(病院や医療機器メーカーなど)からは、

 

「もう少し、血管に注射針を刺した時のプチっとした感触がほしい」

 

「臓器はもう少し、ムニュっとした感じで」

 

「前回のものより、もう少し柔らかく」

 

といったような官能評価をともなった要望が多く寄せられていました。

 

 

しかし、個人的な感覚に大きく依存するこれらの要望は、

 

非常に曖昧で、顧客の要望を確認することはもとより、

 

社内で、これらの要望を伝達するのも容易ではありませんでした。

 

 

結果として、度重なる試作および社内外での調整に、

 

かなり多くの時間を費やしていました。

 

 

補助事業の概要

官能評価の数値化という課題を解決するために、

 

平成26年度ものづくり補助金を用いて、

 

動的粘弾性測定装置を導入しました。

 

 

同装置を導入するとともに、

 

血管モデルなどの自社製品を測定し、

 

その官能評価を数値化していきました。

 

 

子供、大人、老人に分けて、

 

血管の模型データを収集するとともに、

 

専門家(大学教授など)から評価を受けて、

 

材料配合などを数値化していきました。

 

 

また、軟質樹脂製品は、素材によって温度変化による

 

物性変化が大きいため、

 

ユーザーが使用する環境や、滅菌などの後工程の処理内容を想定して、

 

様々な温度環境化でのデータ測定・分析を行いました。

 

 

補助事業の成果

補助事業の成果として、

 

当社製品の専門家による官能評価を

 

貯蔵弾性率と損失弾性率という指標で

 

数値化することが可能となりました。

 

 

ここで、貯蔵弾性率とは、

 

物体に外力とひずみにより生じたエネルギーのうち物体の内部に保存する成分、

 

損失弾性率は外部へ拡散する成分です。

 

 

つまり、柔らかい/硬いに関する数値的指標だけでなく、

 

反発力(元に戻ってこようとする力)の大きさの数値化も可能となりました。

 

 

官能評価の数値化により、

 

顧客の要望を数値的に表現することが可能となり、

 

顧客との、あるいは社内での調整が、格段に効率的になりました。

 

結果として、従来以上に要望に近い製品を、

 

スピーディーに提供することが可能となっています。

 

 

また、温度ごとの物性の変化について、

 

データを蓄積することで、

 

ユーザーが使用する環境や、滅菌などの後工程の処理内容を想定した

 

適切な材料配合の調整や提案が可能となっています。

 

結果として、製品品質の安定化および、

 

新製品開発スピードの向上を実現できています。

 

 

<温度ごとの物性(貯蔵弾性率、損失弾性率、損失係数)の変化>

 

 

補助事業終了後の展開

補助事業終了後、2016年7月には、

 

各務原市にクリーンルーム(クラス 10,000)を備えた新たな工場を設立しました。

 

 

 

 

また、従来から取得していたISO9001(品質マネジメントシステム)認証に加えて、

 

2017年10月には、ISO13485(医療機器品質マネジメントシステム)認証を取得しました。

 

 

 

現在、手術練習用の模擬骨(商品名:タナックボーン)を用いた

 

JIS規格化の働きかけも行っています。

 

 

「社内での製品品質の数値化や安定化を行うだけでなく、

 

JIS規格やISO規格などの標準制定にも、今後さらに積極的にかかわっていきたい。」

 

 

「医療用シミュレータを、国内外にさらに普及させることで、

 

医療技術の発展や動物実験の削減など、社会に貢献していきたい。」

 

 

と仰っていました。

 

 

 

 

 

 

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