イチオシ事例
HOME › イチオシ事例
木が好きすぎて (アルアート)
ものづくりセンター支援専門員の石井です。
イチオシ事例紹介の順番が回ってきました。
月に1回、登場いたします。(^^;
今回のイチオシ事例は、一枚板専門企業:(株)アルアートです。
実はロードバイク大好き!!
アルアートの長野社長は、大学生時代、自転車競技部に所属。
365日休みなく練習した結果、全国学生自転車競技大会に毎年出場。
西日本新人戦では、準優勝。
「全国チームロード」では、全国5位に入賞するなど、一時は競輪選手になる事を夢見るくらい、ロードバイクが大好きだそうです。
しかし、大学卒業前にフト思います。
「卒業したら何をしよう」
木が好きすぎて
長野社長は4代続く大工の家系で生まれ。
幼いころから木と触れ合う機会が多かったそうです。
幼いころからの体験がそうさせたのでしょうか。
もうとにかく木が大好き!!
大学を卒業する頃、その想いに気づき、まずは大工の修行。
そして、2009年4月一枚板専門店 アルアートとして起業。
2015年6月に法人化。
2016年8月にものづくり補助金を活用して、人工乾燥機を導入。
社長みずから設計しました
2016年に導入した人工乾燥機。
この設備の基本コンセプト・全体の構造から、全て長野社長ご自身が考えられました。
ダイニングテーブルほどのサイズの一枚板を、自然乾燥させる場合、約3~5年かかります。
そのため、創業後しばらくは乾燥された板を購入し製品化していました。
しかし、この調達方法では仕入れ価格が高額になってしまい、木の種類も限られてしまう為、丸太を購入して自然乾燥する方法に変更。
しかし、自然乾燥は時間がかかるので管理が難しく、今度は、カビや虫が発生し、品質が高い物には仕上がりませんでした。
自然乾燥ではなく、自社で人工乾燥機を導入する事を考え、100℃以上で木片を乾燥させる機材を使ってみました。
結果、変色や割れが出てしまい、とても商品にはならない事がわかりました。
木が好きすぎる長野社長は、あきらめる事ができません。
高品質・低価格で、たくさんの種類の一枚板テーブルをお客様に提供したい!
そんなある時、
木が生存できる地球の温度(上限45℃程度)以内に保つ環境が必要
とひらめきました。
しかし、そんな乾燥機は世の中にありません。
オリジナルの乾燥機を作ろう!
上限45℃の環境。。。。。
そうだ!
岩盤浴だっ!
たまたま、廃業した岩盤浴店の情報が入り、お願いしてお店を借り、一枚板を乾燥させてみたところ、3か月ほどで含水率10%以下(製品化の目安)にすることができました。
これだっ!
アルアートが目指す乾燥機は、岩盤浴と同じ環境を再現したもの。
一枚板約300枚が入る建物を立て、壁に遠赤外線パネルを隙間なく貼付。
遠赤外線パネルの稼働や除湿に最低でも月50万円の光熱費が必要であることが試算で分かったため、建物の屋根にソーラーパネルを取り付け、なおかつそれまで廃棄していた端材を燃やしてエネルギーにしようと薪ボイラーお湯循環システムも導入する事に。
これだけのものを整備するには、それなりの費用もかかってしまう。
そうだ!
ものづくり補助金だっ!
2016年8月に稼働を始めたアルアート独自の一枚板乾燥システムは、こうして出来上がりました。
端材を燃やしてお湯を沸かすことで乾燥室内の温度を上げる薪ボイラーお湯循環システム
丸太を使いつくす
アルアートの倉庫には、一枚板がズラリと並んでいます。
丸太を一本買いし、製材し、一枚板として商品化してきました。
一枚板として商品化できない箇所(端材)は、廃棄する事になってしまいます。
木が好きすぎる長野社長は、
端材も商品にならないか
と、考えてきました。
そして、思いついたのが。
「レジンテーブル」
それまで一枚板テーブルとしては、商品にならなかった大き目の端材に樹脂を埋め込む事によって、商品化する事に成功しました。
木が好きすぎる長野社長は、木はもちろんですが、レジンテーブルに使用する樹脂にもこだわります。
レジンテーブルを商品化するにあたり、使用する樹脂を樹脂メーカーと共同開発してしまったのです。
その名も「アルアートレジン」
他のレジンとの違いは、
- スーパークリアを実現
- 黄変しにくい
- 天然木との相性抜群
- 1~3%の収縮率を実現
- 気泡が入りにくく、抜けやすい
- アルミニウム・顔料を混ぜやすい
- 約2.5~5倍の流し込み作業を実現
今では、他の家具メーカーもアルアートレジンを使用しています。
これからのアルアート
私(石井)が、アルアートを初めて訪れたのは、2016年3月です。
当時は、平成26年度もの補助のコーディネーターとしてお邪魔しました。
人工乾燥機が設置された頃のお話しです。
初めてお会いした長野社長はとてもお若く、バイタリティーにあふれ、明るい方でした。
その次にお会いしたのが、2019年7月。支援専門員としてお邪魔した時でした。
長野社長は、3年前に一度しかお会いしていない私の事を覚えていて下さって、木に関する様々な事を教えてくださいました。
お会いしていない3年の間に、無垢の一枚板テーブルだけだった商品がさらなる発展を遂げ、ご紹介した「レジンテーブル」の他にも「無垢チェア」等、無垢材を中心とした商品ラインナップもさらに充実してきています。
これから、益々、楽しみな企業です。
最後に。
お忙しい中、取材にご協力頂きました長野社長。
本当にありがとうございます。
アルアート:長野社長
今回の記事に興味を持たれた方はコチラ