イチオシ事例
HOME › イチオシ事例
飛騨の匠の職人魂と技とアイデアで道づくりをサポート(㈱アイデア・サポート)
今週のイチオシ事例は、2009年(平成21年)に道路舗装工事会社から分社して以来、
高山市に拠点を置きつつ、道路舗装工事に必要な工具などを通じて全国の道づくりを
サポートしてきた、株式会社アイデア・サポートです。
「舗装道具」と検索すると真っ先に当社のインターネット通販サイトが出てきたため
興味を持った支援専門員の矢橋がその現場を取材してきました。
目次
2009年(平成21年)に道路舗装工事会社から分社
することにより当社は設立され、親元の会社と一体で事業展開しています。
同社の創業から当社の分社までは、このような沿革です。
1968年(昭和43年)先代社長が創業
1981年(昭和56年)法人化、本格的に舗装工事に進出
1985年(昭和60年)自社製木製レーキを開発/製造/販売開始
1993年(平成 5年)多段式レーキ(「シモダトンボ」)を開発
2000年(平成12年)株式会社シモダ道路に商号変更、現社長が就任
2009年(平成21年)株式会社アイデア・サポートを同社から分社
先代社長の時代にすでに、舗装工事業を営むかたわらで、自社の現場からの希望に沿って
工具の改良に熱心に取り組んでいるうちに工具の製造業も事業化し、30年程前から現在も
当社の看板製品である「シモダトンボ」をつくり続け、「舗装現場で働く人へのサポート」
に特化するための会社として当社を設立した、という歴史が良く分かります。
そんな当社の
代表的な製品は「シモダトンボ」
という、舗装工事の現場で砂利やアスファルトを平坦にならすレーキです。
トンボやレーキは運動場やゴルフ場で使ったことがある方も多いかと思いますが、
この製品には、30年以上にわたって全国の工事現場からの要望を取り入れて改良し続け
てきて蓄積されたノウハウが詰まっており、伸縮のためのレバー、グリップの形状や柄
の材質など、徹底的に現場での使いやすさを追求しています。
<シモダトンボ>
その他にも舗装工事に特化した、下駄、ふるい、コテ、スプレー機器、スコップ、薬剤類
など、充実した製商品ラインナップです。
ちなみに、売上の半分近くが“自社”インターネット通販サイト経由です。
このサイトは15年程前から運営しているのですが、スマホ時代になってからは、現場から
ポチっと購入されることも多いそうで、シモダトンボの知名度と相まって、検索上位に
出てきていると考えられます。
<当社製商品ラインナップ>
さて、繰り返しになりますが、
当社の事業目的は「舗装現場で働く人へのサポート」
です。
したがって、
当社の事業のコアにあるのは工事現場の困り事を解決するためのアイデアであり、
当社は解決方法として、工具などの製商品の開発/販売だけではなく、
最先端機器を駆使したサポートサービスも次々と開発
しています。
最先端機器には相応の投資が必要であり、当社はサポートサービスに必要な機器の購入
のためにものづくり補助金を活用して、サポートサービスを開発/提供しています。
まず、
平成29年度補正ものづくり補助金をデリバリーワークサポートに活用
しました。
このサポートサービスは最先端の建設機械をオペレーター付きでリースするサービスです。
顧客が必要な時だけ、必要な現場に最先端の建設機械と熟練の操縦技術をセットで呼べる
サービスとも言えます。
ものづくり補助金で購入したのは、チルトローテーターアタッチメントシステムおよび
2Dマシンガイダンスシステムです。
これらを自走式建設機械に組み合わせることにより、
・自走できるため建設機械を運搬するトラック運転手が不要になる
・アタッチメントの交換はオペレーターが運転席から降りずに一人で機械操作でできる
・アタッチメントが360度回転/45度チルトして手作業だった細かい作業を機械化できる
という効果があります。
トラック運転手や補助作業員が不要になるということはつまり、
工事現場の ①人手不足の解消 と ②労働生産性の向上 に貢献するということです。
後述しますが、この2点は日本の建設業界全般の切実な課題です。
<全体/チルトローテーターアタッチメントのクイックカプラとチルトローテーター>
<各種アタッチメント:バケット、フォーク、コンパクターなど9種類>
次に当社は
令和元年度ものづくり補助金を3D測量/施工図面製作サポートに活用
しました。
ものづくり補助金で購入したのは、
地上レーザースキャナ、コントローラー、クラウドサービス、図面作成システムです。
従来も電子化された測量システムを使った3D測量サービスを行なっていたのですが、
これらの導入により、
・作業者が一つ一つの測量点に立つ必要がなくなった
・1台のスキャナだけで広範囲の精緻な3D測量をすることが可能になった
・3D測量データに当社のスタッフの知見を合わせた施工図面の製作が可能になった
という
省力化、省人化および成果物の高品質化の面での著しい改善がありました。
これも
工事現場の ①人手不足の解消 と ②労働生産性の向上 につながります。
<測量風景>
<左:コントローラー 右:地上レーザースキャナ>
<3D図面>
ところで
工事現場の人手不足と労働生産性
は定量的にどのようになっているか調べてみました。
厚生労働省が毎月調査している職業別有効求人倍率のここ1年間の推移を見ると、
建設や土木関連の職業は他の職業より継続的にとても高い倍率となっていて、人手不足を
実感できます。
<厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) 一般職業紹介状況>
一方の労働生産性も、
国土交通省が2017年1月に公表した資料「建設生産システムにおける生産性向上」の
「建設業の就業者・時間あたりの付加価値労働生産性の推移」を見ると、
改善傾向にはあるものの1994年とほぼ同水準という状況です。
同省も建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指して、
全ての建設生産プロセスでICT等を活用するi-Constructionを推進していて、
当社のサポートサービスはまさにこれに当てはまる取り組みだと言えます。
<国土交通省 「建設生産システムにおける生産性向上」(2017年1月)4ページ>
最後に、タイトルの
飛騨の匠
という言葉ですが、これは取材の中で現社長の下田徳彦さんが当社の理念や今後の
ヴィジョンについて語ったときに出た言葉です。
それを要約すると以下の通りです。
奈良時代から平安時代にかけて飛騨には木工職人の都への出仕が義務付けられました。
彼らは「飛騨の匠」と呼ばれるようになり、年間約100人くらいのチームで宮殿や門、
寺院などを造る仕事にたずさわりました。
チームだったからその中には道具や食事を作って職人をサポートする人もいました。
都への出仕によりさらに建築技術を磨いた匠たちは、役目を終えて飛騨へ帰ると、
都の新しい文化を取り入れ、その技術を飛騨のために活かしました。
当社の経営理念の
私たちは「飛騨の職人魂と技」で人をつなぐ世界の道づくりに貢献します
には、そんな飛騨の匠のこともベースにあります。
飛騨の匠にとっての都は、現代では世界です。
実は世界的には日本の建設業の生産性は低いのですが、世界中から良い道具や施工
方法を探してきて、良いアイデアとともに提供し、舗装現場で働く人へのサポート
を続けることによって、生産性の改善に貢献したいと思います。
私は今回、広く世界に目を向けることの重要性を高山で教えていただきました。
掲載内容についてのご質問などは、
G-Club事務局までお問合せ下さい。
お問合せはコチラ
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。