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Made in Japan 国内自社製造へのこだわりとICT(タニカ電器㈱)

今週のイチオシ事例は、1950年(昭和25年)に創業して以来、一貫して“Made in Japan”

国内自社製造へのこだわりを持ってニッチな分野の電化製品の製造/販売業を営んできた

タニカ電器株式会社です。

最近はグローバル展開する事業者さん(小林生麺株式会社湯峰ソーイング株式会社

の取材が続いていた支援専門員の矢橋がその現場を取材してきました。

 

 

 

1950年(昭和25年)に創業者がセラミック部品の製造を開始

 

した当社は、

1955年(昭和30年)に電気製品製造免許(名古屋通産局電気用品登録第一号)を取得

同年に陶器製電気ポットを開発して製造販売を開始した後、

1971年(昭和46年)に現在の主力製品であり当時は日本初であったヨーグルトメーカー

などの電気機器を次々と開発/製造/販売してきました。

 

<本社出入口付近の標札>

 

製造/販売する製品は時代の流れとともに移り変わりましたが、

 

一貫して岐阜県多治見市の本社工場での国内生産

 

を行なってきました。

多治見市内の幹線道路沿いにある、とてもコンパクトでクリーンな工場です。

 

<本社工場外観 ここですべての製品を生産しています>

 

<工場内の作業風景>

 

 

当社の現在の

 

主力製商品はヨーグルトメーカーと種菌等ならびに給茶機

 

です。

 

ヨーグルトメーカーとは、

文字通りヨーグルトを作る電気機器であり、実は他にも多種多様な発酵食品(甘酒、塩麴、

醤油、納豆、味噌)やコンフィを作ることができます。

誰でも材料を入れて温度とタイマーをセットするだけで、発酵食品を手作りする楽しさ、

自分で選んだ素材だけで作った安心感を得られる、個人向け生活家電です。

 

<ヨーグルトメーカー>

 

種菌(たねきん)等とは、

ヨーグルトメーカーで発酵食品を作るための、当社オリジナルのヨーグルト種菌や、甘酒酵素、

チーズ酵素、米麹、ドライフルーツなどの付帯商品です。

ヨーグルトメーカーのユーザーにより多く長く楽しんで使用してもらうための材料であるため、

アイテムによっては有名な専門店のブランドを出しているものもあり、新商品の展開も積極的

に行なっています。経営面では、プリンターのインクやトナーのような効果があることも見逃

せません。

<ヨーグルト種菌>

 

<ヨーグルト種菌の新商品>

 

 

給茶機とは、

会社の食堂や休憩室、会議室などにある給茶機であり、当社のものは会議室の片隅にも置ける

くらいコンパクト、飲み物は冷水、お湯、緑茶/ほうじ茶/コーヒーなど3種類の飲料(それぞれ温冷)

の8つから選べます。

 

<給茶機「Cutea」(キューティー)>

 

 

つまり、製商品戦略としては、

 

熱管理をするニッチな電化製品とその付帯商品に特化

 

しているといえます。

 

そしてその領域で継続的に、製品の機能や使い勝手やデザインを改善/充実させる一方、

製商品のラインナップの充実ならびに時代の変化に対応した新しい製品の開発をして

いく必要があります。

 

 

そのような中で当社は

 

製品開発に平成29年度/平成30年度ものづくり補助金を活用

 

しました。

 

平成29年度補正ものづくり補助金で取り組んだのは

スマホで自動調理できるIOT-IH調理システムの開発です。

IH調理器内部の温度計測と加熱温度の制御に当社の熱管理技術が発揮できる製品です。

 

試作品の製作に必要な、スマホアプリの開発、IH基盤やセンサーや通信装置の設計開発、

機器の部品製造のための金型の製造などの費用に補助金が充てられました。

このシステムは、IH調理器(内部温度センサおよび通信機能つき)、外部温度センサ、

スマホアプリからなります。

アプリに登録済みのレシピの温度や時間の通りに材料を加熱するため、材料を入れた鍋を

このIH調理器に乗せてアプリのスタートボタンを押せば、火加減のために付きっきりに

ならなくとも、このシステムが科学的にベストな火加減をしてくれて、一流の料理人の味

を出せるというものです。

 

 

平成30年度補正ものづくり補助金で取り組んだのは

デザイン性が高くコンパクトな給茶機の開発です。

給茶機内部の温度計測と加熱/冷却温度の制御に当社の熱管理技術が発揮できる製品です。

 

飲料の粉末を入れる樹脂部品、粉末と水をかき混ぜる樹脂部品、排気や配管のための樹脂部品

などのための樹脂成型金型の費用に補助金を充てて、フルモデルチェンジしました。

これにより従来型の課題であった、原料パイプ先端への飲料粉末の固着および原料ボックス等

のメンテナンス性を大幅に改善しつつ、従来型より小さく、スタイリッシュな給茶機に生まれ

変わりました。

 

<試作品  左:給茶機  右:IH調理器>

 

 

それらは製品化のためにブラッシュアップされ、こんな製品として販売されています。

 

スマホで自動調理できるIOT-IH調理システム

 

例えば、昆布と鰹の一番だしの場合、昆布を60℃で60分間、その後に鰹節を85℃で1分間

煮るのがベストな火加減ですが、このシステムを使うと、

昆布と水を鍋に入れる~アプリのスタートボタンを押す~アラームが鳴ったら昆布を出して

鰹節を入れる~最後に鰹節を出す 

だけで一流料理人の作る出汁ができます。

 

<IH調理器「Repro」(リプロ)」

 

 

<レシピは現在120品目>                             <温度等表示画面>

 

 

 

デザイン性が高くコンパクトな自動給茶機

 

写真の通り、会議室にも置けるコンパクトでスタイリッシュな給茶機です。

軽量であるため、キャスターを付ければ一人で手軽に別の場所に動かせます。

製品化のためのブラッシュアップとしては、次の衛生機能にとても力を入れました。

 

1. 世界初の深紫外線を利用したDUV殺菌システム

岐阜大学と連携して給茶機では世界初のDUV(Deep Ultra Violet 深紫外線)殺菌システムを開発。

菌やウイルスに強い殺菌力を有する深紫外線 (UV-C 275nm)を注出中にDUV-LEDで照射して、

コップと飲料を“同時”に殺菌可能(特許出願中)。内部タンクにもDUV-LEDを搭載。

2. ノータッチでボタン操作

ボタンに指を近づけるだけで飲料が注出できるため、衛生的。

 

なお、IOT機能を追加して粉末飲料の補填その他のメンテナンスをタイムリーかつ効率的に行える

新製品を開発中であり、当社の給茶機は進化し続けています。

 

 

<部屋の片隅に置けて移設も簡単な給茶機>   <給茶機内部>       

<岐阜大学と産学連携してDUV(深紫外線)殺菌機能を付加:コップ、飲料、タンクを殺菌>

 

 

 

 

このように製品戦略でユニークな進化を続ける当社は、販売戦略でもユニークです。

 

 

 

IOT-IH調理器については、株式会社プロデュース・オン・デマンド(東京都港区)という

 

CS放送事業会社と異業種連携

 

をして、両社双方の販路で販売しています。同社は

CS放送事業(Ch.529「ベターライフチャンネル」、Ch.528「セレクトショッピング」)の運営や

映像/ウェブコンテンツ制作などを行なっているため、テレビを通じたショッピングやメディア露出

を期待できます。

 

 

また、当社は

 

個人向け製品の40%を“自社”ECサイトで販売

 

しています。

 

<当社自社ECサイト「すばる屋」>

 

 

それが?と思われるかもしれませんが、

 

経済産業省の令和2年度「電子商取引に関する市場調査」によると、

個人向け物販全体に占めるECの比率が着々と上昇するとともに、大手ECプラットフォーマー

(アマゾン、楽天市場、Yahoo!ショッピング)のシェアが2020年は前年比 5%程上昇して

約 70%と推定されているため、自社ECサイトのシェアは約30%以下ということになります。

 

当社自社ECサイトは、単純計算でもこれを10%上回っていて、また、

・自社ECサイトは持たずにプラットフォーマー経由だけで販売している、あるいは

・自社ECサイトはあるものの圧倒的にプラットフォーマー経由の売上比率が高い

という事業者が多いことを考慮すると、これは特筆すべきことです。

 

さらに、同調査の以下の分析をふまえると、自社ECサイトでの販売はプラットフォーマー

経由の販売に比べて、コストの低減のみならず顧客との関係を強化しやすいといえます。

 

「大手 EC プラットフォーム上での出店・出品は、高い集客性というメリットがある反面、

応分の手数料、競合企業とのバッティング、顧客情報の入手に制約があると言われている。

他方、自社 EC ではブランドの世界観の直接的な訴求が可能であり、消費者との間で直接的

なつながりも持ちやすくなる。」(同調査 p37)

 

経済産業省 令和2年度 電子商取引に関する市場調査 p32>

 

 

 

 

私はここで、小さな市場でICTを駆使して生き抜く戦略を教えていただきました。

 

 

 

 

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