G-Club支援コーナー

イチオシ事例

HOME › イチオシ事例

『昔ながらの味わいを現代にも』(北原こうじ店)

今回のイチオシ事例は

 

創業者であり、現代表の曾祖父にあたる北原正太郎が、明治末期に、「麹製造販売商 北原正太郎」を創業し、100年以上に亘り地域の麴屋として家庭の味を支え続けてきた『北原こうじ店』さんです。

 

 

皆様、こんにちは。
支援専門員の野村昌史(のむらまさふみ)です。

 

 

今回は、創業から100年以上に亘って地域の麹屋として地域の味を支え、時代に合わせて提供方法を変えながらも、品質にこだわった独自製法の麹を提供し続けてきた昔ながらの麹屋の挑戦を紹介する事例です。

 

北原こうじ店100年の歴史

 

当店は、明治40年の1907年に曾祖父の北原正太郎が現在と同じ中津川市にて「麹製造販売商 北原正太郎」を創業したところから始まりました。当時の裏木曽地方は味噌を製造する業者がなく、隣接する信州・尾張・三河・北陸からの影響を受けた為、家庭ごとに多様な味噌文化がありました。地域内に点在する麹屋から麹を購入し、自宅で味噌や醤油、漬物などを独自に作る文化が根付いており、地域には農業との兼業を行う小規模の麹屋が点在していました。当店もそんな数多くある麹屋のひとつとして、冬期限定の副業として小規模店舗を運営していました。

 

 

時代が大正・昭和になり、2代目 寛一に事業が受け継がれてもその形態は変わらず続きました。
冬から春にかけてそれぞれの家庭で味噌や醤油を作り、そのために地域の麹屋から麹を購入するという文化が地域に深く根付いていたのです。

 

 

大きな転機となったのは、昭和20年。

太平洋戦争が終戦を迎え、3代目 寛が帰還すると、2代目 寛一が病死して、弟妹たちと家、麹を製造するための道具だけが残されていました。残された道具を使用して麹づくりを再開することになりましたが、幸いにも終戦直後の日本は砂糖の主要な産地である沖縄や台湾を失い、極度の砂糖不足となっており、砂糖の代用品として麹の需要が高まりました。そのため、戦前までは冬から春にかけてのみ求められていた麹は、年間を通して製造を求められるようになったのです。

 

 

その後、昭和後期になると、高度経済成長でモノが溢れ、砂糖の代用品としての麹の需要は徐々に減少していきます。これに加えて、この地域では当たり前であった味噌や醤油を自宅で作るという文化も廃れていったことで、かつてはたくさん存在していた麹屋は次々に数を減らすことになります。

 

 

そんな中で、当店も存続の危機に直面することになります。

それでも、3代目 寛が独自に開発した製法を守り、品質の高い麹を作り続けると同時に、その麴を使用した味噌の販売をスタートさせ、麹メーカーから製造小売店へと業態を変化させることで危機を乗り越えました。

 

(商品の一例 田舎みそ・米こうじ)

 

 

平成に入ると、同業他社が減少したことに加えて、業界的に機械化が進みつつある中でも昔ながらの製法を守り続けたことで、風味や味、品質の良さが評価され、当店のファンが増えていきました。現代表の4代目 正美が事業を承継したのはちょうどこの頃(平成10年)でした。

 

 

平成22年には、生みそがブームとなって、当店がテレビで紹介される機会に恵まれます。お客さんが増えて忙しくなり始めたことを機に、5代目 丈士が承継のために事業に加わることになります。

 

 

5代目 丈士が事業に加わってからは、丈士が主に商品や店のPRを担い、近隣だけでなく岐阜県を中心に東海エリアへ販路を拡大していくこととなります。

 

 

平成27年には自社ホームページを開設し、ECでの販売もスタートしています。

 

現在は麹造りも機械化が進み、安価な麹がスーパーなどでも数多くみられるようになりましたが、当店の製法は機械化が難しいため、そのすべてを手作業で行っています。さらに、効率化が進んだ他社の製法と比較して熟成にも時間がかかる為、価格で対抗することはできません。

 

 

それでも、本当に美味しい麹製品を味わってほしいという想いをもって、品質においてはどこにも負けないという3代目の意思を引き継ぎ、今後も品質にこだわった独自製法の麹を提供できるよう当店は努力を続けていきます。

 

増え続けるお客様の声に応えるために

 

当店の米麹は、これまで書いてきた通り独自に開発した伝統製法で作っており、この製法で作ることによって、他社製品と比較しても酵素量が多く糖度の高いものとなります。

 

 

これまで、当店の米麹を購入されたお客様は、自身でレシピを参考にしながら甘酒に加工し、飲用・調味料用として使用することが多い傾向にありました。

 

 

そんな中で、多くのお客様から『自宅で甘酒を造ることが難しいので、薄めるだけで甘酒になる濃縮甘酒を販売してほしい』という要望を頂きました。

 

 

早速、濃縮甘酒の開発に取り掛かり、すぐに製品化に成功し、注文を頂いた際に手作りで濃縮甘酒を生産・販売しましたが、温度管理や撹拌頻度が難しく、生産に時間がかかるため、品質の安定化が難しく、量産できる状態ではありませんでした。

 

 

しかし、昨今の健康食ブームによって発酵食品に注目が集まっていたため、この甘酒が口コミで拡散し、対応できないほどの注文を頂くようになりました。

 

 

今後もしばらくは健康食ブームが続き、需要が増え続ける可能性が高いことや、料理の味付けや健康補助食品としての用途など、単純な飲用以外の用途に注目が集まっていることなどを踏まえ、お客様の声に応えられる体制づくりに挑戦することとなりました。

 

独自製法の米麹を活かす甘酒量産の実現

 

 

当店はこれまで「昔ながらの熟成発酵製法」にこだわり、最高品質の麹を通じてお客様の家庭の味を支えながら成長してきました。前述のとおり、当社が今後も成長・発展を続けていくために、独自製法で作った最高品質の米麹を一人でも多くのお客様に届ける体制づくりが必要でした。これを実現するため、乗り越える必要があった課題が以下の4点です。

 

 

【課題】

◆酵素とデンプンを均一に結合させる常時撹拌の実現

◆熟練度に左右されない製造工程の確立

◆需要増加に対応できる量産体制の構築

◆量産に伴う異物混入リスクの解消

 

 

手作業による撹拌では、糖化過程において酵素とデンプンの結合にムラが生じてしまうため、糖度が安定しません。特に生産量が多くなると撹拌不足が発生しやすくなるため、これを解消して糖度を安定化させる必要があります。

 

 

また、麹は生き物であり、製造工程における温度管理や撹拌回数管理に高度な技能を必要とします。増え続ける需要に応えるためには、熟練者でなくとも製造を行うことが出来る製造工程を確立し、量産体制を構築する必要があります。

 

 

さらに、より多くのお客様に商品を届けるためには、生産一回当たりの取扱量が増えることになります。手作業での製造では、お玉を使用して容器に充填していましたが、これでは空気に触れる時間が長く、異物混入リスクが高いため、衛生管理を見直すことでこのリスクを抑える必要があります。

 

 

これらの課題を解消し、一人でも多くのお客様に当店の甘酒を届けるため、平成30年度補正ものづくり補助金を活用して以下の設備を導入しました。

 

▶ピストン式定量充填機 KT-BL250X◀

 

オールステンレス製のピストン式定量充填機。衛生面に優れ、単純な操作で定量充填を行うことが出来るだけでなく、温水を循環させることで温度を一定に保ちながら、連続撹拌を行うことが可能な仕様にカスタマイズしている。

 

取組の成果

 

 

今回の取組みで、ピストン式定量充填機 KT-BL250Xを導入したことで、昔ながらの製法にこだわった最高品質の米麹を使用した甘酒の生産時間を大幅に短縮することが出来ました。

 

 

具体的には、100%手作業で生産していた当初は、1回の製造に7時間を要していましたが、この時間が半分の3.5時間に短縮されました。これは、酵素とデンプンを均一に結合させるための撹拌工程が自動化されたことが大きく寄与しており、手作業で5時間必要であった撹拌工程を自動化(半無人化)して3時間に短縮することが出来ました。

 

 

また、導入した設備を使用して生産を行うことで、一日に生産できる最大生産量を従来の5kgから20㎏に増やすことが出来ました。

 

 

さらに、温度を一定に保ちながら撹拌し続けることが出来るため、従来はバラつきが生じていた糖度を40%(ブリックス)以上で安定化させることが出来ました。

 

 

今回の取組みによって、当社が抱えていた問題を解決するための各種課題が全て解消され、目的としていた独自製法で作った最高品質の米麹を活かした甘酒の量産体制を構築することが出来ました。

 

 

これにより、これまで以上にたくさんのお客様に本当に美味しい甘酒を味わって頂くことが出来ると考えています。

 

北原こうじ店のこれから

5代目 北原 丈士 氏

 

今回の取り組みによって、健康食ブームによって発酵食品に対する注目が集まり、増え続けているお客様からの注文に応えることが出来る生産体制を構築することが出来ました。

 

 

生産性が向上したことで新たに生まれた時間を活用して、岐阜県内の企業と連携した『甘酒を使用した新商品』の開発にも取り組むことが出来ています。この新商品は、すでに完成しており、発売を目前に控えている状態です。

 

 

今後は、『人手が不足していること』と『生産スペースが手狭になっていること』という課題を解消するため、工場を増設して、味噌と甘酒を同時に生産できる環境を構築することで、甘酒を毎日生産できる体制を作っていくことを計画しています。

 

 

現在、商品の製造から販売のほぼ全てを5代目の丈士氏が担っていますが、工場の増築によるさらなる量産計画を進めていくためには、1人では限界があると感じています。本当に美味しい麹を使った商品を通じて、お客様の健康と幸せに貢献していきたいという考えに賛同してくれる仲間を募り、組織化も進めていきます。

 

『これ、本当に砂糖不使用なんですか!?』

 

当店が生産している麹を使用した甘酒は、独自開発の製法で作ることで、砂糖不使用ながら糖度40%を超えており、これはいちごジャムと同じレベルです。この麹を飲用・調味料など様々な用途で食に取り入れて頂くことで、しっかり甘くて美味しい料理を健康的に楽しむことが出来ます。

 

 

当店はこれからも、麹の可能性を追求し、様々な商品を通してお客様の健康と幸せに貢献していきます。

 

(各種SNS)

 

+ – + – + – + – + – + – + – + – +

掲載内容についてのご質問などは、

G-Club事務局までお問合せ下さい。

 

お問合せはコチラ

G-Clubイメージ
Copyright ©岐阜県中小企業団体中央会
All Rights Reserved.