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QC工程表のつくり方と活用法~作成編~
今回のG-Clubラーニングは、「QC工程表のつくり方と活用法~作成編~」をテーマに、
支援専門員の小寺弘剛(こでら ひろたけ)がお送りいたします。
※過去の関連記事は、コチラからどうぞ。
<ISO関連>
QC工程表とは?
QC工程表とは、品質保証のプログラムです。
製品が完成するまでの各工程において、
どのような製造条件でコントロールし、
どのような品質特性をチェックするかを表しています。
QC工程表の目的は、品質管理(Quality Control)のために、
各工程での管理の“基準”を明確化することです。
基準を定め、定めた基準を守り、必要に応じて基準を見直すことで、
不良の発生と流出の未然防止を実現することができます。
QC工程表は、原材料の投入から製品の完成までの
全体を網羅する文書として作成されます。
いわば、製品の品質保証体系の“一覧表”です。
そのため、工程ごとの具体的な作業の手順やポイントについては、
下位文書である『作業手順書』などに記載されます。
QC工程表は、多くの作業標準書を取りまとめる一覧表(目次,索引)
としても活用されます。
QC工程表の記載項目
QC工程表に、一般的に記載すべき事項は、以下の通りです。
①工程
工程番号、工程記号、工程名、管理部門
②管理点
管理特性と品質特性、管理項目と管理基準
③管理方法
5M(担当者、作業方法、測定方法、設備、材料)
④その他の記載事項
記録、異常時の処置、関連文書、標準時間、改訂履歴
しかしながら、QC工程表には、
決められた様式が存在するわけではありません。
自社の状況(製品の種類、所属する業種、品質管理上のポイント等)により、
自由に様式を定めることができます。
見本の様式をそのまま使用するのでなく、
自社で使いやすいように、
記載項目自体をカスタマイズすることが重要です。
「工程」について
まず、原材料の受入から完成品となるまでの流れを、
いくつかの「工程」に分割します。
「工程」とは、原材料や部品が受ける加工やチェックのステップです。
「工程」と混同しやすいものに、「作業」があります。
「作業」は、作業者が行う動作のことです。
そのため、一般的には、「工程」の中に「作業」が含まれています。
工程のステップを整理するにあたっては、
フローチャートが役に立ちます。
フローチャートで工程を整理した後に、
工程欄を作成すると手戻りが少なく、スムーズです。
「管理点」について
「管理特性」とは、「品質特性」を左右する “要因”であり、
加工条件のように、設定、変更、調整できるものです。
「品質特性」とは、加工後の出来栄えの“結果”です。
QC工程表の“一覧表”としての役割を損なわないために、
「管理特性」や「品質特性」について詳細には記入しないことが多いです。
表に収まる範囲で簡便に記載し、詳細な加工条件や検査基準などは、
下位文書である『作業手順書』などに記載することが多いです。
例えば、検査や移動、保管等の工程においては、
加工条件のような「管理特性」は存在しない場合も多くあります。
その場合、下表のように「管理項目」と、
その合格基準である「管理基準」として記載します。
ここで、「管理基準」は、極力、管理数値などで定量的に表すことが望ましいです。
しかし、目視検査などの場合、定性的な記載になることもあります。
「管理方法」について
「管理方法」には、各工程における管理のポイントである「管理点」を、
どのように測定および管理するかを記載します。
主に、5Mと呼ばれる以下の項目について明確にし、記載します。
・誰が作業や検査を行うのかを明確にします。
・作業や検査に必要な能力、資格等があれば、明確にします。
②作業方法 <Method>
・どのような方法(手法、技法、基準)を用いるかを明確にします。
・参照すべき作業手順書などの文書があれば、文書名を記載します。
③検査<Measure>
・検査の頻度、サンプリング率、限度見本などを明確にします。
・検査機器の名称は、「④設備」に、記載する場合が多いです。
④設備<Machine>
・どんな設備・機器を用いるのかを明確にします。
・加工機について、「工程」自体に記載されている場合には、省略します。
⑤材料<Material>
・工程で使用する材料や部品を明確にします。
・通常、前工程からのインプット(受け取ったもの)が材料(部品)となるため、省略します。
その他の記載事項
その他、会社ごとに自社に必要な項目を記載します。
よく記載される項目は、以下の通りです。
(1)記録
上記の「管理点」や「管理方法」が順守されていることを
確認できる記録名を記載します。
トレーサビリティの確保、顧客に対する説明責任や
不具合発生時の原因究明等において有用な項目です。
(2)異常時の処置
上記の「管理点」における品質特性や管理基準を逸脱するなど、
異常が発生した場合の対応方法について定めます。
「〇〇異常処置規程」など文書名を記載し、
それを参照させる場合が多いです。
(3)関連文書
QC工程表では、“一覧表”としての役割を損なわないために、
簡潔に記載することが求められ、詳細に記載することは難しいです。
そのため、該当工程において、別に詳しいルールが定められている場合は、
文書名のみ記載し、それを参照させます。
(4)改訂履歴
QC工程表における基準は、定めたら終わりでなく、
随時基準を見直し、改訂し続けることが重要です。
しかし、部門や担当者によって違う版のQC工程表を
用いていることが散見されます。
そのような事態を防ぐために、版数とともに、
改訂した日付や改訂内容、改訂者などを記載し、
改訂状況を明確にすることが有効です。
QC工程表作成の注意点
その他、QC工程表の作成にあたっては、
以下の点に注意してください。
(1)枚数を増やし過ぎない。
製品を細かな仕様などで細分化すると、
数百~数千種類になるということも少なくなくありません。
しかしながら、管理上の手間を考えると、
十~数十種類程度に抑えることが理想です。
QC工程表の枚数が多すぎると、不具合発生や設計変更、
検査方式の変更などの際に、
適切な改訂がなされないなど、形骸化の原因ともなります。
QC工程表の枚数を減らすには、
同じ加工経路を通るものを中心にグループ化し、
一つのQC工程表として統合する方法があります。
(2)簡潔に記載する。
QC工程表では、“一覧表”としての役割を損なわないために、
簡潔に記載することが求められます。
QC工程表の限られたスペースに、
具体的な作業内容を記載することは不可能です。
工程ごとの具体的な作業の手順やポイントについては、
作業標準書などに記載し、QC工程表には、
その参照文書名のみを簡潔に記載するのが良いです。
(3)はじめから完成形を目指さない。
QC工程表は、修正を繰り返して、精度を上げていくものです。
生産経験を積み重ねるうちに、管理基準の間違いに気づいたり、
過剰品質に気づいたりして、修正・改善をしていく場合が多いです。
そのため、はじめから完成形をねらってタイミングを失するより、
作成してから実施の結果により、変更するという姿勢の方が望ましいです。