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実は美濃和紙は おしぼりになってグローバル展開している(角田紙業㈱)

今週のイチオシ事例は、岐阜市にて紙おしぼりの製造業を営む、角田紙業株式会社です。

当社は日用品雑貨問屋として1936年(昭和11年)に創業し、現在では紙おしぼりを製造

しているのですが、同社の沿革には美濃和紙を取り扱っていたと書いてあります。

 

奈良時代からの伝統と歴史を誇る岐阜県産品である美濃和紙は、以前にここで紹介した

和傘の材料とか、伝統工芸品の領域にあり、身近にあるとしても障子紙とか照明器具

くらい、だと思っていた支援専門員の矢橋がその現場を取材してきました。

 

 

 

1979年(昭和54年)に紙おしぼりの生産を開始

 

当社が紙おしぼりの製造を開始したのは、障子紙などの日用品としての和紙の需要の減少

という事業環境の大きな変化が原因でした。つまり、環境変化への対応をしたのです。

 

これ以降、同社は紙おしぼりの先駆者として高品質化と増産に取り組みました。

自社開発した3枚の原紙を貼り合わせた3層構造の紙おしぼりの製法の特許と意匠登録を

取得し、新工場を建てて増産体制を築き、

1988年(昭和63年)に特許を活用した紙おしぼり「CLEAL(クリール)」を発売しました。

 

積極的な攻勢の一方で自社の知的財産を特許や意匠登録でしっかり守る堅実さを感じます。

 

 

<当社製紙おしぼり「CLEAL(クリール)」>

 

<当社製紙おしぼり「CLEAL(クリール)」(自社パッケージ)>

 

 

布よりも柔らかくふんわりとした使い心地、使い捨てだから衛生的なこの3層構造の

紙おしぼりは、比較的高級な飲食店で手にされた方も多いと思いますが、実は

 

高級ホテルや航空会社にOEM供給

 

されています。

ここで写真を掲載できないOEM製品もありますが、パッケージのOEM先のロゴを見ると、

いずれも日本を代表する高級ホテルや航空会社です。

当社への評価がとても高いことを実感できます。

 

<各種当社製紙おしぼり(上の2点はOEM製品)>

 

 

<当社製紙おしぼり(世界遺産・屋久島エッセンスを配合した製品)>

 

 

さて、

海外旅行、特に欧米に行ったことがある方は、飲食店でおしぼりが自動的に無料で出て

こない、あるいはそもそもおしぼりは用意されていないことをご存知でしょう。

 

そう、飲食店などでおしぼりが提供されるのは日本独自の習慣です。

そして、来日した外国人は、飲食店などでおしぼりが出てくると、これぞ日本の文化だと

感じます。

 

当社はここに着目して、“高品質かつ高級感のある外国人向けの紙おしぼり”の開発

に取り組みました。

・当社が特許を持つ3層構造の紙おしぼりをベースに

・西陣織の柄をあしらい

・爽やかな香りと消臭/抗菌/リラックス効果がある屋久杉エッセンスを入れた

紙おしぼりです。

 

 

<外国人向け紙おしぼり>

 

<外国人向け紙おしぼり(表面を拡大)>

 

<外国人向け紙おしぼり(3層構造の真ん中が西陣織柄)>

 

 

そこで課題になったことは、

・材料の紙の位置の調整の精緻化/効率化

・様々な寸法の製品の製造の効率化(西陣織柄の紙は種類により大きさが異なる)

・屋久杉エッセンス添加工程の付加

などの製造面での課題でしたが、当社は

 

平成29年度補正ものづくり補助金を活用

 

して、この製品専用の紙おしぼり製造機を導入することによりそれらの課題を解消しました。

 

製造面での課題であったことはこの機械が自動的に処理して量産してくれるため、

次の課題は販路を拡大/開拓していくことになりました。

 

<紙おしぼり製造機>

 

 

当社の販路拡大/開拓のための営業活動はとても積極的です。日本国内だけでなく、

 

海外での自社販路開拓

 

のために、大手総合商社での勤務経験がある当社社長がフランス、ドバイ、シンガポール

などに出張して、高級レストランのオーナーシェフや一流ホテルの総支配人と直接交渉して、

コンテナ単位の商談をまとめているのです。

 

新型コロナウィルス感染拡大以降はこの製品のターゲット顧客である外国人の来日が激減して

いますが、コロナ前に復旧することを待つのではなく、売りたい製品の市場すらない海外で、

ハイエンドな顧客層から攻める営業手法はとてもアグレッシブかつクールです。

 

<海外仕様の当社紙おしぼり>

 

ところでタイトルに

 

美濃和紙

 

とあったのはどうなったか?と思われていることでしょう。

実は、当社の紙おしぼりには美濃和紙が使われているのです。

 

つまり、美濃和紙は紙おしぼりに加工されて海外に輸出されているのです。

 

とっくの昔に伝統工芸品になったと思っていたものが実用品に形を変えて、しかも

海外で新たな市場をつくりつつある、すばらしいことだと思います。

 

<外国人向け紙おしぼり(パッケージ一部拡大)>

 

 

私は当社社長から海外での販路開拓の話を聴きながら、

 

裸足の人ばかりの島で靴を売る話

 

を思い出しました。

フィリップ・コトラーという有名な経営学者の著書「コトラーのマーケティング・コンセプト」

の一節であり、「靴」を「(紙)おしぼり」と読み替え可能です。

 

当社の今後の海外展開がとても興味深いです。

 

 

 

 

 

 

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