イチオシ事例
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80年以上続いている製粉屋さんの生存戦略(サンミール㈱)
今週のイチオシ事例は、小麦粉と冷凍ピザを製造しているサンミール株式会社
です。支援専門員の矢橋が、ピザ工場を取材してきました。
目次
1939年の創業以来、80年以上ずっと小麦粉の製粉業
を営んできた当社は、産地、品種、挽き方などにより様々な用途(パン、麺類、
菓子など)に最適化した多種多様な小麦粉を製造しています。
創業当時は、その他に精米業や製麺業も営んでいました。
しかし、精米業は創業から10年程で、製麺業は2003年に廃業しています。
製麺業の廃業は将来性がない不採算事業からの撤退だったのですが、工場の
土地建物の売却代金で、スムーズな撤退ができたとのことです。
ここで当社は、小麦粉の製粉業への
選択と集中
を行なったと言えます。
つまり、産地、品種、挽き方などにより様々な用途(パン、麺類、菓子など)
に最適化した小麦粉を顧客に提供することに集中したのです。
さらにもう一つ、顧客との関係の維持と強化にずっと注力していることも
当社の強みです。
当社は顧客との直接取引を基本にしていて、同業他社に多くある商社/問屋を
通した取引は少ないという特徴があります。
顧客数は100社程あり、東京の高級ベーカリーや遠くは沖縄のベーカリーなど、
品質にこだわる顧客をしっかりグリップしています。
創業当時は県内に200社程あった同業他社との競合を経て生き残れたのは、
この選択と集中が大きな要因だったと考えられます。
当社が次に取り組んだことは、
ものづくり補助金を活用した製品の差別化
です。
具体的には、平成26年度補正ものづくり補助金を活用して、小麦粉生産過程
で空気と小麦粉を分離する性能が高い、高圧式集塵機フィルターレシーバー
を導入して、水分が多い小麦の製粉の品質と生産効率を改善することにより、
岐阜県産の小麦「タマイズミ」の商品性を高めました。
品質と生産効率の向上という課題を解決して、地元産であることをアピール
して差別化できるようになった、ということです。
<ものづくり補助金により導入した高圧式集塵機フィルターレシーバー>
さらに当社は
ものづくり補助金を活用してビジネスモデルの変更
を実現しました。
具体的には、平成29年度補正ものづくり補助金を活用して、とても細かく
小麦を挽ける、微粉砕機ターボフィニッシャーを導入して、全粒粉の小麦粉
を使った場合の口当たりの悪さを解消して、通常の小麦粉より栄養価が高い
全粒粉の小麦粉の商品性を高めると同時に、
<全粒粉の小麦粉は胚乳以外の部分も全部挽く>
<ものづくり補助金により導入した微粉砕機ターボフィニッシャー>
この全粒粉の小麦粉も使う
冷凍ピザの製造を開始
したのです。
顧客からのリクエストによるものであるため需要は確実にあり、小麦粉のこと
を知りつくしているとはいえ、新規事業へのチャレンジです。
新設した冷凍ピザ製造工場の土地建物や製造設備を購入するための相当の投資
が必要であり、その一部をものづくり補助金により調達したということになり
ます。
4月28日掲載の「世界に一つだけのはきもの”GETALS”」は製造工程の大幅な
内製化という面でビジネスモデルの変更でしたが、
当社の場合は、商流/製造工程の下流に事業領域を拡大する、しかも、相当な
投資をして、という中小企業としては大きなビジネスモデルの変更です。
<ピザ工場の一部>
<焼きあがったピザはマイナス38℃!で急速に冷凍>
チャレンジの結果、冷凍ピザ事業への投資は順調な成果を上げています。
顧客ごとの仕様によるOEMを行なっていて、東海地方の大手食品スーパーの
PB商品になっていたりするため、読者のみなさんも知らないうちに食べたこと
があるかもしれません。
<冷凍ピザ>
今後の展開としては、
岐阜県産小麦「タマイズミ」を全粒粉小麦粉にして作ったピザの開発なども
ありえる展開です。
さて、今回は当社の経営戦略に注目しましたが、当社の
生存戦略は
・事業環境と自社の状況を常に把握し
・機会の中で強みを活かし
・脅威には強みで対抗し
・強みがなくなったら撤退する
というものであり、セオリー通りだと思います。
そして、それを実行することの重要性を、私はここでも教えられました。
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