イチオシ事例
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新しい価値を“たす”独自の炭素繊維成形技術(㈱タカイコーポレーション)
今週のイチオシ事例は、1953年(昭和28年)に創業して以来、美濃市にてボルト(ネジ)
などの産業機械用部品を製造してきた株式会社タカイコーポレーションです。
モータースポーツ車両のボディ/シャーシーやシートの素材としてカーボン素材に興味が
あった支援専門員の矢橋がその現場を取材してきました。
<当社本社>
目次
当社の製品はボルトなどの産業機械用部品
です。
産業機械用部品であるためボルト(ネジ)くらいしか分かりやすいものはありませんが、
主要製品がどのようなものか説明すると以下の通りです。
スライドや旋回の位置決めをするための部品。ばねを内蔵し、先端のボール(ピン)
が荷重によって出入りし、接するものの穴や溝に入ることで位置決めできる。
装置や工程の間でのパレット・製品などの搬送や重量のある金型や治具の取りつけ・
取り出しをするための部品。表面に回転するボールが一部露出していて、接するもの
を容易に動かすことができる。
<当社主要製品>
このように、金属を加工してつくる部品の製造が創業時からの当社のベースなのですが、
当社は2011年頃から
カーボン(炭素繊維)に注目
して、カーボンフレームの自転車の開発に取り組んだりしてもいました。
<当社製カーボンフレームの自転車>
そのような中で当社は、
ものづくり補助金を生産効率などの改善に活用
していきました。
まず、
平成25年度補正ものづくり補助金をストリッパーボルトに活用
して、品質と生産効率と納期を改善しました。
ストリッパーボルトとは、金型にねじ込まれるボルトであり、金型を保持して部品を可動できる
ようにする機能を持ち、吊りボルト、段付きボルトなどと呼ばれることもあるものです。
従来は、7つの工程の内の3つの切削する工程を、一般的なCNC旋盤と研削盤を使って手作業で
行なっていたのですが、専用CNC旋盤を導入してこれらの工程を集約して自動化することにより、
不良率、加工日数、原価を大幅に改善しました。
<ストリッパーボルト>
<専用CNC旋盤>
そのかたわらで当社は、
独自の炭素繊維成形技術によるカーボン製ボルトを開発
していました。
カーボン(炭素繊維)には、軽くて強いという特性があります。
モータースポーツ車両のボディ/シャーシーやシート、ロードレース用自転車のフレームに
カーボンが使われるのはこのためです。
当社は、鉄製ボルトの1/5の重量しかなく、強度が高い種類の樹脂ボルトの約3倍の強度
(せん断力)を持つカーボン製ボルトを独自の炭素繊維成形技術により開発しました。
軽量、高強度だけでなく、耐薬品性、X線透過性、非磁性、防錆性などの優れた特性を
兼ね備えたボルトです。
<当社のカーボン製ボルト>
<当社のカーボン製ボルトの強度>
CVB:当社カーボン製ボルト
RENY製:ガラス繊維入りポリイミド製ボルト
PEEK製:ポリエーテルエーテルケトン製ボルト
当社独自の炭素繊維成形技術は「ファイバー・キープ・フロー成形(FKF成形)」という技術
であり、連続した炭素繊維を流しながら繊維の方向を制御して、ボルトに最適な成形を行なう
技術です。(国際特許出願済)
<ファイバー・キープ・フロー成形(FKF成形)図>
さて、この成形の工程には、炭素繊維と樹脂を混合する「含浸」(がんしん)という工程がある
のですが、当初はそのための機械装置が人手による微調整が必要なものであったため、大量生産
が困難でした。
そこで当社は
平成30年度補正ものづくり補助金をカーボン製ボルトに活用
して、大量生産を可能にしました。
成形工程での含浸を人手による微調整なしに行える機械を機械メーカーと共同開発した結果、
含侵の速度は5倍以上、人員は1/3に省人化することができ、大量生産が可能になったのです。
<カーボン製ボルト生産ライン(機器類は機密保持のため非公開)>
こうして大量生産ができるようになった
カーボン製ボルトは「ボルタス」と名付けられて商標登録
もされました。
ボルトに新しい価値を“たす”という当社の熱意を表した製品名です。
独自の製造技術の国際特許出願とあわせて製品名の商標登録も行っていて、自社の知的財産の保護
にも抜かりありません。
こうして大量生産が可能になった
ボルタスは新しい価値を“たす”ために進化
しています。
先述の通り、軽量、高強度だけでなく、耐薬品性、X線透過性、非磁性、防錆性などの
様々な優れた特性を持っているため、様々な用途への適性を評価されていて、
主に耐薬品性を評価されて、大手半導体メーカーの半導体製造装置に採用されている他、
主にX線透過性を評価されて、医療向け器具として産学が連携して研究中です。
また、当社側でもボルタスの特性のバリエーションと用途を増やすために、素材の種類
や配合を変えて、絶縁性を持つものや土に還るものなどを開発し続けています。
<脊椎固定システム研究 産学連携メンバー>
<素材が異なるボルタス>
私は今回、優位性につながる独自性について教えていただきました。
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