イチオシ事例
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時代の先を行く歯科技工士集団(合同会社水都)
今週のイチオシ事例は、歯科医療の屋台骨を支える歯科技工士さんにクローズアップ。「合同会社水都(すいと)」さんです。
支援専門員の虫鹿真司(むしかまさし)がご紹介いたします。
口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連には密接な関連があり、厚生労働省のホームページでもその内容について紹介されています。とても大事なご自身の歯の健康について振り返りながら、記事をご覧いただければ幸いです。
生活習慣病とリスクファクターの相関図
(※クリックすると、厚生労働省の「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」という記事にジャンプします。)
会社概要
当社は、大垣市の歯科医院「カルナデンタルクリニック」と密接な関係にあり、クリニックから徒歩圏内にある歯科技工所で業務を行っています。従業員の4人全員が歯科技工士の資格を持っており、インプラント、クラウン、義歯(入れ歯)などの製作に日々取り組んでいます。
製作の様子
※歯科技工士とは、歯の詰め物や被せもの・入れ歯・インプラントの上部構造に至るまで、失った歯を補う「歯科技工物・補綴(ほてつ)物」を作製する、国家資格を持った専門家です。また歯科技工所とは、これら歯科技工物を作製する、専用の設備が整ったラボのことを言います。
患者さんにフィットする歯科技工物を製作するには高度な技術が必要であり、熟練した歯科技工士が多様で複雑な工程を全て手作業で行うのがこの業界では主流でした。しかし、近年では機械化やIT化による業務改善が進められてきています。当社では、同業他社に先駆けて先端設備及びITを導入し、クリーンな作業環境で効率的に業務を行う事に成功しました。
機械化とIT活用が進んだ当社のラボの写真です。
補助事業で取り組んだ課題・取り組み内容
現在では快適な空間で効率的に業務を行っていますが、以前は「多様で複雑な工程を全て手作業で行う」という伝統的な手法で歯科技工物を製作していました。腕の良い歯科技工士が業務を行っても劇的に生産性を上げる事は難しく、売上高をアップさせるには長時間労働をせざるを得ないというのが、歯科技工士業界が抱えている悩みです。
当社は、業務工程の抜本的な見直しによる生産性の向上を課題として補助事業に取り組みました。取り組みの内容は、「CAD/CAM」の導入によって工程数の大幅削減と機械化を達成するというものです。
取り組みの概要図
概要図にある「①凹型採取」は歯科医院が行う業務であり、「②石膏模型」についても歯科医院が行う事ができる業務です。「CAD/CAM」で一部の工程を代替しても品質の維持ができれば、歯科技工士が手作業で行う工程数は大幅に減少します。メーカーやカルナクリニックと共同で「CAD/CAM」の効果的な活用方法について意見交換し、歯科技工士が歯科技工物の試作を繰り返すことにより、「CAD/CAM」を現場に登用する事ができるようになりました。
補助事業で導入した設備
今回の補助事業では、3Dスキャナー、CAM、強度強化用熱加工機を導入しました。そして、以下のように活用しています。
写真の左側にある3Dスキャナーを導入し、歯科技工士が製作した作業模型をCADデータ化できるようになりました。必要にCADデータを修正し、CAMによる削り出しに必要なデータを作成します。
スキャニングマシーンで取り込んだデータをCADソフトで処理
CADデータを元にして、CAMで歯科技工物を削り出します。所要時間は15分程度と非常に短く、これまで手作業で行っていた時と比べて圧倒的なスピードで処理できるようになりました。
CAMによる義歯加工
削りだした歯科技工物を専用の皿に載せて、強度強化用熱加工機で10分間加熱します。あとは、歯科技工士の職人技で研磨・艶出し・調整を行って完成です。
強度強化用熱加工機で歯科技工物を焼成
多くの工程を機械化する事ができましたが、職人技を必要とする重要な工程は今も残っているので、歯科技工士の仕事はなくならないとの事でした。
補助事業の成果
手作業で行っていた工程の多くを機械化する事により、所要時間を大幅に短縮する事ができました。全体で見ると50%以上、歯科技工士が担当する業務のみで見ると何と75%以上の時間短縮になるという素晴らしい成果を上げており、生産性が飛躍的に向上しました。
補助事業後は順調に経営を続けており、今では新社屋に移転して業務を続けています。
念願の新社屋完成!
現在では、CADやCAMの導入を始めとした機械化に取り組む歯科技工士や歯科医院が増えていますが、補助事業に取り組んだ2016年の時点ではそれほど浸透していませんでした。
ビジネスはやはり先行者が有利です。効率的な生産方式の早期確立によって積み上げたアドバンテージは、今後新しい取り組みを行う上でも、技術面や資金面で大きくプラスに働きます。
近年は、外部環境の変化が著しいですが、時代の先へと一歩踏み出す事業者が躍進していく事に変化はないと思います。来年度も、ものづくり補助金などの魅力的な支援策が充実していますので、さらに先へと進むためのツールとして活用していただければ幸いです。
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