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研磨の技術で世界に挑む(㈱美光技研)

今回のイチオシ事例は

 

『心と技術を磨き、世の中に驚きと感動を与える』という経営理念を掲げ、
金属板や樹脂版の表面加工を通して、商品の高付加価値化に取り組んでいる
「株式会社美光技研」さんです。

 

皆様、こんにちは。
支援専門員の野村 昌史(のむら まさふみ)です。

 

今月は、創業期からブレることなく一つの技術を磨き続け、
常に挑戦を続けてきた事例を紹介させて頂きます。

技術者としての姿勢と挑戦者としての姿勢からは、
参考になる部分がきっとあると思います。

 

 

株式会社美光技研のこれまで

昭和48岐阜県美濃加茂市(現在地)に、創業者である和田昇が㈲美光技研会社を設立。(平成20年に株式会社へ移行)

 

ネームプレートを中心とするアルミ板の表面スピン加工をスタートしました。創業から現在に至るまで、一貫して当社が提供してきたのは「素材の表面に加飾加工を施すデザイン研磨」。お客様の製品に“高級感”という付加価値をプラスする加工を提供し続けています。

創業時のアルミ板加工に加え、お客様の製品の変化や要求に対応するため、積極的に設備投資を行いながら、加飾加工を施すことができる材料を粘着シール材やブリキ材、ステンレス材へと拡大してきました。

 

さらに、平成21年からは「金属の高級感を兼ね備えた樹脂製品」というお客様ニーズに応えるため、樹脂研磨にも挑戦しています。

 

 代表者の価値観・人生観

事業を承継して、3代目となったのは和田昇悟社長。

創業時から一貫している想いを受け継ぎ、事業運営に邁進している和田氏には、

会社の代表者として、大切にしている価値観・人生観があります。

 

人生に於いて、失敗という言葉はない

成功は小さなことにチャレンジして蓄積させたものの延長線上にあります。
その時に起きた失敗を経験することで、次の成功の結果に繋がります。
これは体験を通してのみ身につく事であり、失敗を経た成功の方が強く厚みや深みが出る。

 

どんな時でも、笑顔を絶やさない

笑顔には人の心を明るく、好意的にさせてくれる素晴らしい力があります。
どんな時でも、笑顔でいられる人は本当に心が強くないと出来ない。
自分のことも周りにいる人のこともポジティブな気持ちにさせることが大切。
そして、人生の中で過去ではなく今が一番笑っていられる状態に常に更新出来るようにしたい。

 

 

新たな挑戦への経緯

平成26年11月 メッセナゴヤ2014への初出展が、当社の新たな挑戦のきっかけとなりました。
当社の展示ブースを見学に来た取引先のC社から「立体形状へのデザイン研磨」を依頼されたのです。

 

もともと、板状の素材表面にデザイン加工を施すことに特化してきた当社は、
当然ながら、立体形状へのデザイン研磨に関する技術も知識も持ち合わせていません。

 

依頼を受けてから、実に4回に亘ってお断りをさせて頂きました。

 

それでも、何度断っても当社に依頼をし続けて頂けるC社の熱意に、
覚悟を決めて挑戦を選択することになります。

 

そこからは、C社と何度も何度も試行錯誤を繰り返し、
4年の時間をかけて、ようやく納得のいく製品が完成しました。

 

この製品は、車のホイール。
最新のトヨタ自動車(クラウン)に装備して東京オートサロン2018へ出展することになります。

 

東京オートサロン2018の出展は大変好評で、来場者、トヨタ自動車から高評価を頂いたことに加え、
将来的にはEV車市場において必要性が高まるという意見を頂くことができました。

 

これを受けた当社は、喜びも束の間、
本格的に立体形状のデザイン研磨に挑戦していくことを決意しました。

 

 

立体形状デザイン研磨の量産対応を実現するために

立体形状デザイン研磨に本格参入する上では、技術面・品質面でのいくつかの課題をクリアする必要がありました。

 

【クリアすべき課題】

◆常に高さが変化する3D曲面に対する研磨具の制御

◆上りと下りで発生する接触角度のずれによる不均一な模様の改善

◆手計算による制御プログラムに係る時間の短縮

 

デザイン研磨による模様は、材料に対して一定の高さを維持しながら研磨具の接触強度で模様を描くものです。

立体形状の素材に模様を描き、量産化していくためには、平面の板材では発生しなかった、これらの課題をクリアしなければならないため、平成29年度補正ものづくり補助金を活用して2つの設備を導入しました。

→高性能三次元CAMソフトONECNC XR7 Mill Expert←

同時5軸加工への対応や、精度の高いシミュレーション機能を有するCAMソフト。ただし、既製品のCAMソフトは切削加工に特化しているため、表面の任意研磨に対応できるプログラムを生成できるよう、当社オリジナル仕様のソフトの開発を依頼した。

 

→内蔵型円テーブル付き同時5軸加工機MM1000R-5←

高性能三次元CAMソフトとの互換性を有し、三次元曲面に対して常に垂直で接触し続けることが可能な同時5軸加工機。IWAMA独自新開発 monolithCAST(モノリスキャスト)構造により、連続した微小線分を美しく加工するための高い剛性と減衰性を備えている。

 

 

取り組みの成果

高性能三次元CAMソフトと内蔵型円テーブル付き同時5軸加工機を導入したことにより、従来の設備では模様をかけることができなかったR3000曲面に対してデザインを施すことが可能となっただけでなく、±2.0mm以下の幅で均一な模様の加飾を実現しました。

 

また、従来はホイール1本あたり1時間以上必要であった加工時間は15分未満となり、機械へのセット時間も従来の2時間から30分未満へと大幅に短縮された。これにより、量産化の実現に大きく近づくことができました。

 

さらに、この事業に取り組むきっかけとなったC社との取り組みの中では、当社の技術力に合わせてC社側の加工を一部変更して頂いていましたが、本事業への取り組みによってお客様側の加工を一切変えることなくデザイン研磨を施すことができる技術を確立しました。

 

今回の取り組みの結果を高く評価して頂き、現在はアフターパーツメーカーのカタログに掲載を頂いているほか、トヨタ自動車のいくつかの車種で採用されるためのサンプル提供をさせて頂いています。

 

 

これからの美光技研

今回の取り組みによって、立体形状へのデザイン研磨という当社の新たな武器を手に入れることができました。これからも、さらなる挑戦を続け、お客様の製品に高級感という価値を付加する研磨技術という当社の強みを、より多くの業界で活用して頂き、当社が掲げるビジョンでもある『デザイン研磨の力で、全ての製品のもつ潜在的な美しさを引き出す』ことの実現に向けて邁進していきます。

 

少しずつではありますが、当社の提供しているデザイン研磨技術の認知が拡大してきたため、今後は、より複雑な模様や、デザイン性の高い依頼が増えていくことが予想されます。これに備えて、当社の持つ技術を少しでも知っていただきたいという想いから、2021年3月に当社の周囲を囲んでいるブロック塀の代わりにデザイン研磨を施したステンレスウォールを設置しました。

 

また、デザイン研磨技術を一般の方にも知って頂く機会を作るため、自社ブランド『MIHIKARI』を立ち上げ、デザイン研磨加工を施した名刺ケースやコーヒードリッパー、アート作品を自社ECサイトにて販売しているほか、美濃加茂市のふるさと納税返礼品として展開しています。

 

こういった活動を評価して頂き、2019年には美濃加茂市では初となる『はばたく中小企業300社』にも選定して頂くことができました。

 

心と技術を磨き、世の中に驚きと感動を与える

機能で差別化しにくくなってきた時代の中で、意匠面でのニーズは益々多様化しており、製品に高い付加価値を付けることは常に求められています。そんな中で、視覚的にも触感的にもこのデザイン研磨で驚きや感動を与えていけるよう、絶えず努力して、社員一丸となってこれからもお客様の課題を解決していきます。

 

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